2009年は 松本清張生誕100周年 でした。さまざまな企画が立てられましたが、その最大のものが本作です。テレビドラマ化された 「霧の旗」 や 「書道教授」 と見較べてみるのも一興かもしれません。
制作=2009年 日本映画 東宝映画配給 131分。原作=松本清張。監督=犬童一心。脚本=犬童一心、中園健司。出演=広末涼子、中谷美紀、木村多江、西島秀俊、加賀丈史、杉本哲太ほか
結婚7日後に失踪した夫( 西島秀俊 )を探すため、禎子( 広末涼子 )は以前の勤務地である金沢へ向かいます。見合い結婚の彼女は、夫の過去をほとんど知りませんでした。夫の行方を追う禎子の先々で、次々と殺人事件が......。
時代は昭和32年。舞台は金沢。原作は社会派ミステリーですから、 占領下の立川 が事件の動機になっています。野村芳太郎監督、久我美子、有馬稲子、南原宏治の前作から50年近く、いまなぜ「ゼロの焦点」なのか、
膨大な清張作品の中から本作が選ばれたのは、 女性が主役 だったからだろう、と推測しています。女優3人の共演といえば華やかで話題性は充分。特にこの監督は女優を綺麗に撮るのが得意、ということですから、その点でも賢明な選択だったでしょう。
最良の選択が常に正しい、いや成功するとは限らないのが映画製作の難しいところ。本編は残念ながらその典型でした。まず時代を原作通りにしたのが疑問。 動機がいまの人にピンとこない でしょう。思い切って現代に置き換えたら、もっとリアリティが増したはずです。
次の問題はヒロスエの役作り。というより 演技力 でしょうか。女優としては演技の幅が狭いことを本作で露呈してしまいました。 中谷美紀や木村多江 が薄幸の女性を好演しているのと比較して、ヒロスエは可愛いままで終わっているのです。
昭和32年代の 金沢や銀座の大がかりなセット 、助け合いながら底辺を生きてきた2人の女性等々、見どころはあるのですが、こちらの胸に響きません。演出にも問題があるのかもしれません。
そしてポアロ顔負けのヒロスエの推理。プロセスがなく、いきなり 真相に迫って 夜汽車に乗ります。実に都合のいい展開でした。これでは感動できないでしょう。清張先生生誕100周年記念企画としては、 完全に失敗 でした。残念です。
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