2011年1月12日(水)CS301チャンネル 日本映画 09,00~11,10 放送
制作=1955年 日本映画。東宝配給 モノクロ 130分。監督=久松静児。原作=永井荷風「にぎりめし」「春情鳩の街」「渡鳥いつかへる」。脚本=八住利雄。出演=久慈あさみ、桂木洋子、淡路恵子、高峰秀子、水戸光子、織田政雄、森繁久彌、田中絹代、浦辺粂子、二木てるみ、太刀川洋一、岡田茉莉子、藤原釜足、左卜全、中村是好・月野道代ほか
昭和27年頃の赤線地帯、鳩の街を舞台にした作品。赤線には一夜の快楽を求めて、さまざまな男がやってきます。客もいろいろなら娼婦もいろいろ。それぞれの人間模様がわりと丁寧に描かれていました。
女優のビックネームが並び、各人に見せ場が用意されています。これがバライティに富んでいて面白いのです。不幸なエピソードが多い中で、娼婦から足を洗って健気に生きていこうとする岡田茉莉子の姿には癒されました。
彼女は流しの二人組と一緒に盛り場を歩くのですが、覚えようとする新曲が本作のテーマ曲になっています。初代コロンビアローズの「渡り鳥いつ帰る」がそれです。男に捨てられる悲しい女心を歌った哀切なメロディが、きっとあなたの胸に響くことでしょう。
反対に悪女に扮しているのが、この映画の制作時点ですでに大女優だった高峰秀子。デコちゃんは盗癖がある娼婦で、客の選り好みが激しく、何かと理屈をつけて仕事をしません。食い意地が張り、人のものまで黙って食べてしまう性悪女。しかし、高峰秀子だと何となく微笑ましくなるのが不思議でした。
男の中心人物は森繁久弥。空襲で妻子と離ればなれになり、今は娼家「藤村」の女将・田中絹代のところに居候をしています。娼婦たちに「お父さん」と呼ばれていますが、まあヒモでしょう。
この映画、時代は終戦から7年くらい経っているのですが、いまだに戦争の傷跡があちこちに残っています。空襲の傷を引きずったまま生きている人が、森繁以外にもいるのでした。あの戦争が庶民に与えた傷痕は意外に深いのです。
荷風原作なので、単なる風俗映画で終わっていません。根底にシニカルな目があるようです。ホームドラマ風作品を得意としている監督の視線も、案外覚めています。底辺に生きる男女の哀感を冷静に描ききった佳作、といっていいでしょう。
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