ドえすの株日記 (感謝してます)

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第4話 本物の無頼

第4話 本物の無頼

いずれにしろ、この勝負、額を減らさない方が良い。
そんな真似したら、それこそ自殺行為だぜ。
奴らが恐れているのは、俺たちの狂気。
あの夜もブレーキを踏まないから助かった。

あのゲームは、明らかに相手に有利に仕組まれていた。
第一に、ブレーキポイントを奴らは熟知していた。
そして第二に、奴らは右側の車を選択していた。
右側であれば、いざとなったら右側のドアから転がり出ることも可能だ。
左側は右側が邪魔をしてそれが出来ない。
あらゆる条件が奴らに有利なように仕組まれていた。
俺が勝つためには、この勝負が成立している前提を覆すしかなかった。
成立している前提?
死にたくないという意識。
俺はあの時、死んでも良いと思っていた。
ブレーキを踏む気はハナから無く、
当然車は勢い良く飛び出した。
実はあの断崖はある距離を飛ぶと急激に海が深くなっていて、なまじブレーキを踏むよりもずっと助かる公算が高い。
だが、相手は俺に気を取られ、飛び降りる時期を失い、しかもブレーキを踏んだ。
当然岩場にぶつかりながら海へ。
典型的自滅。

このガキがこの場所で犬死する運命か?そんな流れじゃねぇ。
運命は出ないと言っておる。

聴力はあんたにとって生命線。そんなあんたが聞き間違えたりするかよ。
あんたは運も運命も信じてねぇ。あんたが信じているのは耳。
卓越した自分の能力だけ。違うかい?
実は俺もそうなんだ。

同類の男。
いや、俺の同類など存在しない。
奴か俺、どちらかが偽。偽りの無頼。

お前ら如きと刺し違えてたまるか。


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