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2010.05.28
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カテゴリ: box
後ろで扉の閉まる音がする。お父さんが部屋から出て行った音。
そして、この部屋には、俺と、美莉だけ。
俺と、ベッドで眠っている美莉、だけ。

俺は、ゆっくりゆっくり、美莉のベッドに近づく。
一週間ぶりのミリ。
その寝顔に、その愛しさに、思わず、息が漏れる。

・・・美莉。

眠りながらも何かを悩んでいるように眉間に軽くしわを寄せた表情、時折、震える唇。

・・・一体どんな夢、見てるんだ?



・・・バカだよ、っとに、美莉。なにやってんだよ、美莉。
・・・そこまでして、必死で、嘘までついて、俺と別れて、なのに、そんなに、悪くなって。
・・・どこに、なんの意味があったんだよっ。
・・・このまま行ってたらどうなってたんだよっ。

揺さぶって起こしてやりたい衝動に駆られる。
あの日 、死んだヒロトを初めて見たときのように。

だけど、その衝動も一瞬で収まる。
そして、その代わりに、思いがけず涙がこぼれそうになる。

俺は、布団の上に、そっと置かれた美莉の片手を、
しっかりと掴みあげて、両手でやさしくくるんだ。
そしてその手を頬につけて思う。


少なくとも、美莉は、ちゃんと生きている。
生きてくれている。

眠りから覚めれば、また、ちゃんと、話ができる。
文句だっておもっきり言える。
そしてまた、抱きしめてやることも出来る。

クスリなんかに頼らずに、ゆっくりと眠らせてやるコトだって。

一瞬の衝動がおさまれば、今はただ、

・・・間に合ってよかったよ、美莉。

その思いが圧倒的で。
手の中にあるミリの小さな手。何度も何度も握ってみる。
心なしか、ミリの表情が穏やかになっていくような気がする。

「愛してるよ、美莉・・・」

囁くように声に出していってみる。

・・・今日の分。

毎日言い続けると誓ってから 、初めて途切れた1週間。また、きっと埋められるよな。ごめんな、美莉。約束守れなくて。また、同じ約束させてくれるよな?

・・・ごめんな。

そう、その言葉を思ってしまうと、さっきまでの怒りは完全にそのなりを潜め、もうとめどなく、わびる言葉があふれ出す。

あの時の「 うん。生きてたい。ずっと 」、なんて。どんだけの思いを込めて・・・。

どうして何も気づかずに、、気づけずにいたのか、自分で自分が嫌になる。

そして1週間前のあの日のこと。
あの日、 最初に感じたように 、きっと美莉は俺の腕に戻ってくるつもりだったはずなのに。
子供のことで、、、俺がした 不用意な発言 が、美莉の心をばらばらにしてしまったんだよな。

・・・ゴメンな。

何も気づかずにいた俺の言葉のひとつひとつが、どれだけ、美莉を傷つけてきたことか。

症状が揃っていたなんて。

俺が問いかけ、 完璧に否定したあの日の美莉が 嘘をついていたなんて。。。

『・・・一体、なんなんだ?』

何度も思ってきた疑問のパズル。
その最後の1ピースが嵌めこまれた瞬間。
ずっと目の前にあったはずの、その最後の1ピースである嘘が見抜けなかったのは、
俺が心の底で、まさかそんな嘘つくはずも、つく必要もないって、
思い込んでいたから。
だけど、美莉は渾身の力をつかって嘘をついていた。
そしてそれは、きっとお父さんの言うように、
美莉なりに、一生懸命俺の事を考えた上で出した結論のはずで。

『なんでそんな大事なこと俺に、隠してたんだって、・・・哀しくなったからかも。いや、違うな、そんなに頼りない俺、なのかって、自分に腹が立ったのかな。・・そんな頼んない俺のせいで、ミリが、、俺に必死で隠そうとして、、、美莉に、辛い思いさせてたんだって思ったから、かな』

あの日 、自分が口にした言葉を思い出す。
そうだよ、おい、頼りない俺。
お前が頼りないおかげで、美莉にこんなにつらい、苦しい思いさせて。

・・・ごめんな、ごめんな、美莉。

だけど、これで、全部分かったよ。
もう、無理しなくていいからな。もう、隠さなくていいからな。
もう、あきらめようとしなくていいからな。

もう、無理なんて、隠すなんて、あきらめるなんて、、させないからな。

ほんとにあきれるくらい鈍かった俺。

だけど、その割には、、俺、なんでか、美莉、元気かなってそればっかり思ってたんだよ。
でも、、遅いってんだよな?

自分で自分に苦笑する。

そして、そのまま飽きることなく眺め続ける美莉の顔。
やはり、最初に見たときよりも、表情が安らかになっている。

・・・悪い夢から、解放されたのか?

段々と白くなっていくカーテンの向こう側。そして鳴き出す小鳥の声。

静かに明けていく部屋の中、眠り続ける美莉を前に俺はこれからのことを考えていた。
美莉を、、腕の中に取り戻す方法を。
どんな言葉で美莉を引き戻せばいい?
今度こそ失敗するわけにはいかない。
美莉の心、頑なになっているはずのミリのココロ。
どうすれば、どんな風に話せば、ミリに。
考えろ。
絶対にあるはずだ。ミリのココロに届く道筋が。
これまでだって、何度も危機を乗り越えてきたんだから。
予想される美莉の反応、態度、そして、カチカチの心。
どうやって、、、。

そして、ゆっくりとまとまっていく考え。

俺は、もう一度、眠ったままの美莉に、
「ごめんな、美莉」
謝る。一度だけ、声に出して。

・・でも、謝るのは、とりあえずは、これで終わりだよ。

美莉、目覚めた美莉が、何を言ったとしても、俺は、謝らない。
俺は、譲らない。
譲れない。
譲らずに、俺は、美莉への怒りの気持ちを先行させるつもりだ。
美莉を、腕の中に、取り戻すまでは。
それが俺の考える方法。

なあ、美莉、俺、取り戻すからな、お前のこと。

絶対に。



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最終更新日  2010.05.29 01:21:59
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