『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』100万部?日記

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』100万部?日記

2013.01.31
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(今日の話は、ある程度会計がわかっていないとチンプンカンプンな話です。あらかじめご了承くださいませ)




『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』

の126ページにある「貸借」について、複数の方から「逆じゃないか」と

ご指摘、ご質問を頂いているので、改めてこちらで説明させていただきます。



まず、簿記を教える際に誰もが悩むのは

『なぜ借方が資産(左側)で、貸方が負債・純資産(右側)なのか?』

という問題です。

貸付金は資産で貸す方なのに「借方」、借入金は負債で借りる方のに「貸方」です。

貸付金・借入金をうろ覚えの段階だと、貸付金を貸方に、借入金を借方にしてしまう、

という間違いはとても犯しがちです。

また、個人事業主にとっては欠かせない事業主勘定ですが、



「貸」と「借」が入り組んでおり、会計入門者にとって

とても高いハードルとなっております。


  ―――――――――――――――――
  【借方】     【貸方】

  貸付金     借入金

  事業主貸    事業主借
  ―――――――――――――――――



根性主義がまかり通っていた時代では

『借方が左、貸方が右だ! 借入金・事業主借は右、貸付金・事業主貸は左、丸暗記しろ!』

と言えました。

拙著『世界一感動する会計の本です 簿記・経理入門』でも「借方」「貸方」を

『「かり」「かし」とひらがなにして、字を払う方向で「り」なら左、「し」なら右』



これも代表的な丸暗記法の一つです。




世界一感動する会計の本です新装版 [ 山田真哉 ]



そもそも「借方」「貸方」と訳された由来も、よくわかりませんし、

ほとんど多くの会計人は記号として覚えていると思います。



まあ、私の世代は丸暗記で覚えさせられたのですが、

今の人たちにはある程度 論理的に教える必要



そこで借方・貸方をどう教えるのか、いろんな方がいろんな工夫を凝らしたのですが、

そんな中で生み出されたのが

『「貸借」と「借方・貸方」の意味を分離してしまおう』

という教え方です(仮に分離主義と呼びます)。



まずは、 貸付金・事業主貸=左側、借入金・事業主借=右側 を先に覚えてもらいます。

覚え方としては、 「貸借」ということで文字の並びと同じ になります。

理屈としては、 「貸」は「貸す」という動詞で、左側の「資産」

「借」は「借りる」という動詞で、右側の「負債」 になる、という説明です。

「貸」は 自分の財産 、「借」は 他人の財産 です。


決算書を読みたい人にとっては、 ここまで教えれば十分 です。

会計を勉強したいという大多数の一般の方には、ここまでしか教えません。


~~~~~~~~


そして、簿記を勉強したい人には、「貸」「借」に

「借方」「貸方」は左右が逆になる
、と教えます。


「貸」に「貸方」というふうに「方」が付くと、

「貸してくれた方、貸した人」を記すからという理由で

他人の財産である右側の「負債・純資産」になる、

「借」に「借方」というふうに「方」が付くと、

「借りた方、借りた人」を記すからという理由で

自分の財産である左側の「資産」になる、という教え方です。



「貸」「借」の段階では 決算書の一人称 だったのが

(事業主貸・事業主借勘定はこの考え方)、

「借方」「貸方」と「方」が付くことで 客観的な三人称 になるので逆になる、

というストーリーです。


また、複式簿記の成立当初は「借方」「貸方」に人名をほぼ必ず書いていることからしても、

そんなに突飛な話ではないでしょう(『会計研究史』濱田弘作著(多賀出版)など参照)。



分離主義のメリットは、貸借を理屈として説明できる点だけでなく、

決算書を読む人と作る人とで教え方を分離できる、というメリットもあります。



決算書を読むだけの人にも「借方」「貸方」を教えようとするから、

会計が敬遠されてしまうんじゃないか、とちょっと思うのです。

まあ、この理屈でわかりやすいかどうかは、人それぞれだとは思いますが。




さて、今回の本は、簿記を学びたい人向けではなく、あくまで会計の入り口を紹介する本。

会計本ではなく、ビジネスや商売の本 、として作っていますので

分離主義的な「貸」「借」を使っている次第です。



本文中に「貸」「借」と書いてあっても、「借方」「貸方」と一切書いていないのは、

そういう理由です。



ただ、簿記を知っている方からすれば、大変おかしな記述に見えてしまいますので、

その点は無配慮だったと非常に反省しております。


そのため、増刷分から「貸」「借」について、すべて削除する、

という選択肢もあったのですが、すべて消すのも逆に初心者に不親切ですので、

残した上でP128の最終行に

―――――
なお、本格的に簿記を学ぶ場合、「貸」「借」は逆になります。それは、簿記はもともと人名を記すもので、「自分の財産を借りた人」を左に、「財産を貸してくれた人」を右に書いたからです。そのため、複式簿記では貸付金(=借りた人)を左の「借方」に、借入金(=貸してくれた人)を右の「貸方」に書くことになっています。
―――――

という加筆をしております。


もちろん、これまで書いたように詳しく解説する、という手もあったのですが、

あくまでも一般向けの本なので、そこはかなりややこしくなると思い、自重いたしました。



上記のような、経緯があった上での「貸」「借」でございました。

気になった方には、大変ご迷惑をお掛けいたしました。








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最終更新日  2013.02.08 13:05:19
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