かめおかゆみこの≪表現するからだとことば≫塾

かめおかゆみこの≪表現するからだとことば≫塾

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

かめおか ゆみこ

かめおか ゆみこ

Calendar

Favorite Blog

歯をくいしばってい… New! さそい水さん

「表現能力を育てる… New! 森の声さん

第145回目広報勉強会… ビューティラボさん

【臨界値に達しまし… riri.leiさん

入間の航空祭 さか・せい.comさん

Comments

かめおか ゆみこ @ Re[1]:見えない、美しい世界が(11/30) MoonLeoさんへ わあ、見てくださっていて…
MoonLeo @ Re:見えない、美しい世界が(11/30) いつも動画を楽しく見ています。本当に地…
かめおか ゆみこ @ Re:誕生日おめでとうございます!(10/22) つきなびさんへ コメントありがとうござい…
つきなび@ 誕生日おめでとうございます! ちょっとだけ奇遇に感じました。 いや、僕…
かめおかゆみこ@ Re[1]:あなたが気づくだけで(09/20) つきなびさんへ ありがとうございます。S…

Freepage List

2009.08.26
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

メッセージではありませんが、
ふとその気になったので、
特別公開しちゃいます♪(^^ゞ


2009年8月24日のブログ
この世で、一番かなしいもの
のなかにも書きましたが、

「私はこの世で一番
 かなしいものになるわ。
 そうしたら、あなたに、
 私がわかるでしょう」

このことばは、私が
物語を生み出すときの
みなもととなっていたのです。


以前、「3分間ひとり芝居」
という脚本募集企画があって、
応募したときも、

このことばから連想して、
みじかい作品を書きました。

その、ミニひとり芝居脚本を、
ここに特別公開しちゃいます♪



待っていたもの

             かめおかゆみこ


   激しい吹雪の音。
   薄明かりの中に駅の待合室のベンチに
   うずくまる女の姿が浮かび上がる。

   以下は、すべて、女のせりふ。

(はっと目覚める)

誰?…いいえ、そんなはず…。

(相手に気づいて)

驚かないで。大丈夫。

ええ、そう。駅よ、ここ。
まるで廃屋みたいに見えたでしょ。

そう、この町に
住んでた方ならご存じよね。
この線路が10年前に
廃止になったことは。

でも 駅だけはこうして。


どうぞ、ここに来て座って。
火のそばに。

…ずいぶん久しぶりっていう感じ。
そう、17年ぶり。

中学から高校まで列車通学してた? 

その頃なら私、
知ってるかもしれないわ。
けっこう記憶力いいんだから。

(じっと見て)

思い出したわ。
確かいつも男の子3人くらいで
あの角を曲がって来てた。

列車が発車しそうになる頃
駆けこむものだから、
よく駅長さんに怒られてた。

でしょ!


…もう一つ思い出した。

あなたが高3の頃だったかしら。

三つ編みの小柄な女の子と
手をつないで乗り降りしてたの。
小指の爪を噛むくせのある
女の子だっけ。

そうよ、言ったでしょ。
私、記憶力がいいんだから。

でもそのあとはふっつり
見かけなくなってしまったわね。

そう、大学に入って、
おうちも引っ越してしまったの。
なら仕方ないわね。


今日はこの町に何か用事でも? 

たまたま近くを通りかかって、
あんまり雪がひどいから…。  

それでも思い出して
寄ってくれたのは嬉しいわ。

私? 私はずっとここ。
一度もこの町を離れたことはないの。


いいえ、私の話はいいから、
あなたの思い出を聞かせてよ。 

あなたが
この駅を利用してた頃のこと。

どうしてって? 
懐かしい思い出は心の中を
あたたかくしてくれるんだもの。

ずっとずっとここにいて、
どんどんさびれていく町を
見ているとね、

もう思い出だけが
生きていく力のすべてなの。


でも疲れてしまうのよ。

自分の記憶が
だんだんあいまいになって、
今がいつなのか、
自分が誰なのかさえ
わからなくなってしまう。

そんな時、誰かが
訪ねてきてくれるのは嬉しいわ。

活気にあふれていた昔の話を聞くと、
私も自分が生きているんだっていう
気持ちになるの。


町を出る? 
そんなことできやしない。

私はここにいて、待っているの。
いつまでも。  

(外を気にする)

夜が更けてきたわね。
どうぞこのままいて話の続きを。

(吹雪の音) 

駄目よ。
ほら、風が強くなってきたわ。
今夜はひどい吹雪になりそう。

今出かけるとかえって危険。
行っては駄目よ。ね、座って。

どうしてそんな顔するの? 

お願い、話をして。
さっきみたいに懐かしい目をして
笑ってみせて。


…ストーブの火が、消えてしまう。

話をしてちょうだい。

思い出してくれれば火は燃え続けるわ。
明かりだって…。


そう、あなたの思いが
明かりをつけたの。

10年眠ってた私を呼び覚ましたの。
だから…。


…そう、あなたもなの。
あなたも私を置いていってしまうの。

みんなみんな行ってしまった。

私だけいつも取り残されて
忘れられてゆく…。


駄目。帰さない。

戸は開かないわ。

10年前のあの日、
釘づけにされたまま。

私は待っていたの。 

待っていたの。

待っていたの…!

   女、立ちふさがるしぐさ。
   もみあう。間。
   だが相手は女を振り切って去っていく。

   窓ガラスの割れる音。
   廃屋を揺るがす風の音。
   立ち尽くす女の姿が闇の中に溶けてゆく。

                   -了-


さて。

「この世で一番かなしいもの」
ということばに
インスパイアされて
生み出されたこの物語。

ここに登場する「女」って、
誰だったと思いますか?


まあ、いろいろ想像して
もらってかまわないのですが、

私のイメージとしては、

「駅」でした。

人間の都合で廃止になり、
忘れられた駅舎が、
たずねてくるものを
待っていたのだと…。


私の故郷、オホーツクでも、
線路は次々に廃止になりました。

そんな情景を思い浮かべながら、
書いた作品です。

拙作を、お読みいただき、
ありがとうございます♪m(__)m


●今日の記事、心にひびいたよ~というかたは、
 よかったら、 クリック していただけると、うれしいで~す♪

≫≫≫≫≫ 人気ブログランキングバナー ≪≪≪≪≪
(クリックするだけで、ポイントが加算されます)


星 世界の医療団 ひとことメッセージが添えられます。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.08.26 12:27:43
コメント(1) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: