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2021.04.17
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カテゴリ: 作家
あらすじ
悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。高校の後輩である小平由樹枝と恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。M大学に進学し、1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、飲み過ぎて記憶喪失し矢代美恵子と関係してしまった。何とか別れたい悠介であったが、美恵子は別れてくれない。数か月後、アパート代を出すとの約束でようやく別れてくれた。そして由樹枝との仲を戻すべく努力したが、完全に振られた、



写真はネットより借用
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宛先の住所が書いてなかった。と言う事は美恵子がここまで来たと言う事である。ここまで来て郵便受けに手紙を入れたのである。悠介は慌てて自分の部屋まで急ぎ、封を開けてみた。
「今週、金曜日、18時頃私の部屋に来て下さい。料理を作って待っています。」
と書いてあった。金曜日の予定はない。いや金曜日以外でも何の予定もない。学校とバイト以外は何の予定もなかった。それで寂しいとは思わないが、由樹枝の件では寂し過ぎる。その寂しさを美恵子の手紙が少し癒してくれる。部屋に来て欲しいと言う事は、抱いても良いと言う事か? とそこがどうなのか、と気になった。そして酔っ払って美恵子の部屋に行こうとした事を思い出した。今の救いは美恵子だけである。だが恋人になろうとは思わない。由樹枝のいない寂しさを美恵子で補おうとしているだけなのである。悠介にとって、美恵子は都合の良い女のようである。

金曜日はすぐにやって来た。悠介は帰宅すると風呂で汗を流して綺麗な身体になり出発した。途中、ウィスキーを1本買った。何も持たないでは訪ねられない。美恵子が部屋を出て行ってから初めて会う。どんな顔して訪ねたら良いのか、悠介は分からなかった。歩きながら思ったのであるが、手紙を貰ってから、断ろうと1度も思わなかった事に気が付いた。別れてくれと言って別れたのであり、普通ならば断るはずである。美恵子は悠介が由樹枝に振られた事を知らない。美恵子と別れたので、元の鞘に収まっていると思っているかも知れない。なのに誘いをかけて来た。美恵子の心が分からない。そして悠介も由樹枝との仲が元に戻っていたら、美恵子の誘いを断ったはずである。2度と同じ過ちを犯すまいと硬く誓ったのである。しかし由樹枝との仲に関して一縷の望みを捨てていないので悠介の言動にも矛盾がある。その矛盾に悠介は気が付いていない。

そんな事を考えながら歩いていたら、美恵子のアパートに着いた。

美恵子は機嫌よく悠介を迎えてくれた。
「図々しくお邪魔しに来ました。」
「何言ってんの?私が誘ったのだから図々しいもないでしょう? でも来ないかも知れないと思っていたのよ。でもね来ないと言う連絡がなかったから、今日は必ず来ると思って準備したの。」
「すまんな。」
悠介はテーブルの上に並べられた料理を見ながら言った。
「さぁ、座って、飲みましょう。」
美恵子が悠介のグラスにビールを注いでくれた。悠介も美恵子のグラスにビールを注いだ。美恵子が言った。
「乾杯!」
「何に乾杯?」
「う~ん、新しい部屋かな? で良いでしょう?」
「うん、乾杯!」

悠介の心は晴れ上がっていないものの、ビールは美味しかった。あれ以来、毎日飲んでいるが無理やり飲んでいるような状況であったからである。

「あのね、寺ちゃん、私、お礼を言いたくて誘ったの。」
「お礼?」
「そうアパート代を出してくれた事、それも1年分も。」
同棲していた時には何も話さなかったが、美恵子は母子家庭で育ったようである。それでお金にはいつも不自由していた。大学に行く費用もなかったが、美恵子は優秀な部類に入る頭脳を持っていたので、何とか学費は自力で稼ぐからと入学金のみを母親から出して貰ったとの事だった。しかしながら、彼女にとって仕送りがゼロで、学業とバイトを行って生活費を稼ぐのは困難を極めたのである。アパート代も払えなくなり、男の部屋に転がり込んで何とか生活をして来たと言う。身体を売って生活をしているようなものであったと言うのである。周りからも良い噂が聞こえて来ない、そんな生活に心苦しさを覚えながら我慢してやって来たのだと言う。それが、身体の要求もなく、アパート代を1年間も支払ってくれて初めて何の心配もなく生活が出来て、そして勉強が出来る。これほど有難い事はないと言うのであった。


「うん、人には言えない事だから。何とか卒業して良い仕事に着かないと。」
「これから何とかなるの?」
「私もバイトしているから、食べる位は大丈夫、でも来年のアパート代は難しいかなー。何とかしないとね。」
悠介は考えた。自分はバイト代が全部貯金になっている。仕送りで生活しているからだ。バイト代も値上げしてくれたから貯金も増えるはずだ。特にお金が欲しいと言う理由もない。ならば、来年分のアパート代も悠介が支払ってあげても問題はない、美恵子がそんな大変な家庭で育ったとは思っていなかった。

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最終更新日  2021.04.17 11:01:46
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