迷える子羊*ひとやすみ

迷える子羊*ひとやすみ

春~旅立


生まれてからずっと
住み 育ってきたこの街を

あの日から
この街を出ることを考えて
願ってきた 僕なのに
いざ その時を迎えても
ちっとも実感がなくて
ともに育ってきた仲間達と同じように
今まで別れてきた人達と同じように
僕もいろんなものと別れて
また新たな道を
進んでいくんだなぁなんて
思ってみたりして

これから行く街には
僕等が舞い落ちる花弁<はなびら>に
はしゃいだ桜の木はなくて
毎年決まったように咲いてた
見慣れた花たちもなくて
当然のように見かけた景色もないけど
必ず桜は咲いてるし
何処かに見慣れたあの花たちも咲いてるんだ
そして新しい景色を当然のように見つめるようになる


この春 ここを出たら
もうこの街に住むことなんて
ないかもしれない
不思議だけど

今度この街へ帰ってくるときは
もう少し大人になってるだろうか?
今まで生きてきて
ここを出ていく歳になってさえも
ちっとも実感はないけど
思い出せないほどの日々を経て
思い出せないほどの経験をして
これからも
そうやって成長するのかなぁなんて
考えてみたりして

これから住む街では
舞い落ちる桜の花に
思いを馳せたり
道端の見慣れた花に
目をやったりする時間もなくて
ただ毎日忙しくて
生きるだけで精一杯かもしれないけど
時がたてば
必ず桜は咲いて 散って
何もしなくても
あの花たちも咲いているから

ふとしたとき
きっと目に留まる
知らない街角に
僕の生まれたこの街を
仲間と過ごしたこの街を見る


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