Nostalgie

Nostalgie

第八章 「手掛かり」


少女歌劇団のトップスター、天才少女バイオリニスト、
美貌が自慢の姉妹モデルが、次々と白昼堂々誘拐され、
衆人観客の前で発見された。
ある者は、いかがわしい水中レヴューショウの水槽に、
全裸で両の足に錘りをつけられ、ゆらゆらと卑猥なダンスを踊っていた。
また、ある者は、クラシックホールのピアノの上で、
深紅のバラをしとねに敷いて、白い肌を朱に染めて眠っていた。
ある者は、公園の池の噴水ステージで、死体同士のレズビアン。
まことにもって、悪魔の所業。許すべからざる大犯罪者である。

小生は、ちっとも気が安まらない。
あのエナメルの美貌の人妻Yさんのことが気掛かりでたまらぬのだ、
いつ破廉恥な発見のされ方をしやしないかと。
この胸の高鳴りはなんであろうか。
彼女のことを考えると、胸が苦しいような、面映いような、
変な気分にさいなまれる。
しかし、小生は、ついに彼女を発見するための手掛かりを見つけたのだ。
いや、最初から足下にあったのだ。
手風琴を押す道化師。支那服に黒眼鏡。そして、あの置き手紙・・。
こんな芝居がかったことをする連中・・・。
最初に逢ったディープサウスのダウンタウン。
どうして、こんなことに気がつかなったのだろう。
きっと、あのてんのじ村の中に彼等は潜んでいるに違いないのだ。
明日、小生はてんのじ村の見せ物小屋を、かたっぱしから、
しらみつぶしに巡ってみるつもりだ。
手妻のような誘拐の手口も、あいつらなら、いとも簡単にできるのだ。
この冒険が終わったら、読者諸君にも、
きっと面白いご報告ができることだろう。


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: