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2007年01月06日
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カテゴリ: 戦争映画
1965 東宝 監督:松山善三  
出演:加山雄三、久保明、児玉清、森繁久彌、小林桂樹、佐藤允、加東大介、張美瑤、藤山陽子、藤木悠、名古屋章、青島幸男、大村崑、桂小金治、二瓶正也、大村千吉、真理アンヌほか 
98分 モノクロ


 団伊玖磨(作曲家)の随想「陸軍軍楽隊始末記」をもとに脚色した、太平洋戦争の日本陸軍戸山学校軍楽隊を描いたもの。団伊玖磨といえば、「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」を作曲したことでも有名だが、終戦間際に陸軍戸山軍楽隊に入隊していた経験を持つ(パーカッション担当)。戦後は東宝映画の専属音楽監督になったこともあり、戦争映画では「潜水艦イー57降伏せず」や「ハワイ・ミッドウェイ大海戦 太平洋の嵐」「太平洋奇跡の作戦キスカ」の音楽監督を担当している。また、「馬鹿が戦車でやってくる」の原案制作者でもある。
 原作を読んだ事もないので、原作がどの程度本当の話なのか、また本作が原作に忠実なのかは全くわからない。しかし、団伊玖磨の軍歴を考えるに、中国大陸の前線からフィリピンへそして捕虜収容所という映画の内容は、かなりの脚色を加えられているのだろうと思われる。

 本作は戸山学校軍楽隊を題材にしたという点で興味深く、かつコメディタッチで合いの手に音符の画像を入れて感情をあらわすといった独特の手法を用いている。さらに、出演者は加山雄三をはじめ当時の映画役者を出せるだけ出したかのように、蒼々たるメンバーが顔を揃える。
 序盤の訓練時代はテンポも良く、随所に陸軍の厳しい体罰や上下関係を描きながらも、登場人物の性格付けやエピソードに笑いたっぷりで、名作の予感がする。ところが、中盤以降に中国戦線に出征するあたりから雲行きがあやしくなり、日本兵の描き方が妙に偏向した自虐的なものに変わってくる。日本軍内部の腐敗や日本兵の悪行を描き並べる事で、軍楽隊兵の悲壮感を際だたせようという意図もあるのだろうが、出てくる日本兵は皆悪者で、中国人は良い人という極端な構図は、当時の左翼的な史観を彷彿とさせるものがある。背後から忍び寄って日本兵を刺し殺した中国人ゲリラが日本兵に銃撃され、「何故こんなことに・・・」と泣き叫んだり、田舎の中国人が「あなた方は南京で罪もない2万人の人を殺した。日本の兵隊は鬼です」と言わせてみたり、やたらめったら中国人を殺害する日本兵を描いてみたり。序盤のコメディタッチ路線は全く消え去り、ただただ日本兵の悪行ばかりが目に付くのだが、それだけでなく映像的にも物語設定的にも、チープさと杜撰さが目立つ。これが序盤のコメディ路線のままならば許されるのだろうが、シリアス路線としてはあり得ない。
 フィリピン戦線や捕虜収容所にいたっては、ロケ地背景がどうみても国内のゴミ集積場や採石場でチープ感は否めないし、エピソードや兵士の言動にしても無理矢理ラストの感動シーンに向けて悲壮感を高めようと言う恣意的な構成が見え見えだ。
 中国戦線、フィリピン戦線ともに内容の薄くチープなシーンは果たして必要だったのか。多くの役者を登場させすぎたうえ、原作に沿ったのか多くのエピソードを無理矢理に盛り込んだ、急ぎすぎともいえる中盤以降の内容は、映画としてのストーリーバランスは最悪だと言ってもいいだろう。序盤だけを評価すれば★4つはいったのに、中盤以降は何が起こったというのだろうか。序盤と中盤以降で脚本と監督が替わったかのようだ。

 楽器類はトランペットを初めオーバス、フルート、トロンボーン、打楽器と盛りだくさん。しかし、役者が実際に演奏しているわけでもなく、映画用に新しい曲が演奏されるわけでもない。軍楽隊兵の目を通した厭戦感だけが作品の目的だったのかもしれないが、せっかく個性的な多くの役者を使ったのだから、それを活かしたヒューマニズムや音楽映画の方向性の方がずっと良かったのではないだろうか。 
 そう言う意味では、序盤の各楽器の練習風景と、それぞれの教官役の個性付けは大変面白かったし、作曲家出身の兵が上官のいじめで恋人の名をリズムに合わせて連呼させられる「みつこさーん、みつこさーん、タタタタン、タタタタン」は傑作だ。このあたりの個性付けのまま中盤以降につなげていればなあ、とつくづく思う。
蛇足だが、終盤の日本兵の死体は妙にリアルなのが気になった。

 興奮度★
 沈痛度★★
 爽快度★★
 感涙度★





 新兵には相撲取り出身の青田宏(真塩洋一)、ちんどん屋出身の鷲尾秀明(二瓶正也)、ピアノ弾きの西崎洋之介(久保田良男)、ハーモニカ弾きの乃木和彦(森下慶一)、作曲家の三条孝(児玉清)、体育学校と間違えた野本虎男(鈴木和夫)、死の危険が少ないだろうと志願した中平一郎(久保明)、田湖光男(当銀長太郎)、芦原道男(権藤幸彦)らがいる。教官では軍曹(名古屋章)をはじめ、オーバス担当助教の西山伍長(青島幸夫)、浦島班長(軍曹)(大村崑)、北班長(伍長)(桂小金治)、村田助教(山本廉)、梅谷助教(大村千吉)らが指導にあたる。
 軍楽隊であろうと陸軍は厳しい上下関係と体罰がある。雨の中での演奏行進、厳寒下での裸練習、恋人の名を連呼させてのリズム感指導など、肉体的にも精神的にも痛めつけられる。それでも彼らは軍楽隊は危険な死に至る事はないだろう、と安穏としているのだった。ところが、ある日前線から先輩軍楽隊の戦死白木箱が戻ってくる。彼らは軍楽隊も安全ではないのだと悟る。その矢先、ちんどん屋の腰フリの癖が抜けない鷲尾と野本がもめて大喧嘩となる。
 いよいよ彼らも卒業が間近となり宮城前行進を披露する。そして、ついに三条らは上等兵となり、中国天津の甲一八二〇部隊に配属となる。その小隊長は荒井准尉(庄司一郎)といい、人の良い人物だった。だが、彼らには2,000kmの慰問活動が待っていた。行く先々で慰問演奏を行うが、決して中国人からは歓迎されていない。中には便衣兵が潜んでおり、日本兵が殺害されることもある。また、村によっては日本兵が全滅しており山賊に襲われる事もあった。あれほど死ぬのを嫌がった中平は戦友をかばって戦死する。
 冬となり、荒井准尉らの乗った軍楽隊トラックのシャフトが折れてしまう。しかたなく近所の民家に立ち寄るが、老人と若い娘愛蘭(張美瑤)がいるだけだった。愛蘭は日本兵を警戒するが、そこに婚約者がやってくる。気を許すなと進言する野本だったが、荒井准尉は愛蘭を人質に恋人の男にシャフトの買い出しを頼む。男は約束を守ってシャフトを買ってくる。しかし「日本に協力したのではない。自分たちの幸せのためだ」と言い、老人も「あなた方は南京で罪もない二万人の人を殺した。日本の兵隊は鬼です」と吐き捨てる。荒井准尉らは複雑な思いで民家を後にする。彼らの心はすさみ始めていた。
 荒井准尉らはフィリピンに転進を命じられる。その集結地で日本兵が中国人を殺すのを目撃し、やるせない気持ちになる。フィリピンでは小沼隊に配属となる。隊長はあの小沼中尉だった。小沼中尉は爆撃で目をやられており、身の回りの世話を現地の孤児娘(真理アンヌ)がしていた。娘と乃木は恋仲になっていくが、それを引き裂くように軍楽隊は歩兵第106部隊配下の迫撃砲小隊となる。兵長に昇進した皆は最後の演奏会を開き、楽器を砂浜に埋める。
 アメリカ軍の砲撃で乃木が戦死。日本兵の死体が累々と続く。そしてアメリカ軍の艦艇から「戦争は終わりました」の放送が。捕虜となった彼らは強制労働に駆り出される。乏しい食事と厳しい労働に日本兵達の心はすさみ、盗みや喧嘩が横行する。あきらめと絶望感が漂うなか、突然アメリカ軍軍楽隊の音色が聞こえてくる。小沼中尉以下軍楽隊のメンバーは音の方へ駆け寄っていく。そして、砂浜に埋めた楽器を掘り起こし、壊れたが楽器で「ほたるのひかり」を演奏し始める。すると、アメリカ軍軍楽隊もこれに呼応し、合奏となる。この風景をすさんだ日本兵が涙を流して聞き入るのだった。人の心を清々しくするのに音楽に勝るものはないのだ。 


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最終更新日  2007年01月06日 09時56分16秒
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