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2007年07月15日
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カテゴリ: 戦争映画
1959 ソヴィエト  監督:セルゲイ・ボンダルチュク
出演者:セルゲイ・ボンダルチュク、ジナイダ・キリエンコ、パベル・ボリスキンほか
97分 モノクロ SUDBA CHELOVEK /A MAN'S DESTINY


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 ノーベル文学賞受賞作家ミハイル・ショーホロフの短編小説を題材に、ソビエト芸術映画界の草分け的存在のセルゲイ・ボンダルチュクが監督主演した、ソビエト映画の名作。第二次世界大戦に巻き込まれたロシア人の男が家族を失い、捕虜として肉体的、精神的な打撃を受けながらも、たくましく生きていく様を描いた、感動的ヒューマンドラマ。ボンダルチュク独特の自然風景や音楽を駆使した前衛的とも芸術的とも言える映像美に、決して美しくはないが、泥臭く忍耐強い生への執着が切々と描かれている。いわゆる、共産主義体制下での労働者階級闘争的な臭いが強く、多分にプロパガンダ的要素もあり、日本人から見るといささか臭い芝居とも受け取れるのだが、そこは時代と体制を考慮して見るといいだろう。
 やはり、注目すべきはボンダルチュクの映像美に尽きるだろう。象徴的で暗示的な自然物の映像は、深遠な人間の心を描いているようであり、アップや回転するアングルなどカメラの用い方は、今となっては古くさく感じるものの、逆にインパクトを強く受ける。また、ボンダルチュク自ら演じる主人公ソコロフや子役バベル・ボリスキンの演技は心に染みいる名演技。ソコロフがドイツ兵に勧められる酒を次々と飲み干すシーン、子役が感極まってソコロフに飛びつくシーンは特に秀逸。ソビエト映画はどちらかというと会話が少なく、あっても単語の羅列が多いのだが、本作も、言葉ではなく顔の表情で演技することが多く、それだけ役者の演技力が生きてくるのがわかる。

 ストーリー的には比較的凡庸な内容で、どうしても思想的統制がかけられるソヴィエト映画としてはやむを得ないところなのだろう。一般的には反戦映画として評価される事が多いが、バリバリのスターリン体制下で堂々と反戦など描けるはずもない。本作は悪玉(ドイツ)の屈辱に耐え、しぶとく立ち上がる農民魂を描いたものであり、本来なら「さあ、武器を持って立ち上がれ」となるところなのである。決して赤軍が戦うことに対しては反戦ではないのであって、単に戦禍に巻き込まれた哀れなロシア人を描いただけではないのだ。ラスト近くで子供がソコロフに飛びつく感動的なシーンなどは、日本人から見れば人道的な感動と捉えるところなのだろうが、単にそれだけでは反戦的な被害者面になってしまう。だが、ボンダルチュクはそこに不屈の精神もからめた表現を施すことによって、ソヴィエト体制への順応を図っていると見受けられる。ボンダルチュクが当時のソヴィエト国体についてどのように考えていたかはわからないが、後の「戦争と平和(1965)」「祖国のために(1975)」の作品を見る限り、なかなか狡猾な人物と見受けられる。

 さて、本作はいわゆる感動的ヒューマンドラマの範疇なのだが、全編見終わった後にどうも息苦しさを感じる。これはボンダルチュク作品に限らず、ソヴィエト映画全般に通じるものだが、ソビエトという国家体制に原因がある様な気がする。ソヴィエト映画の場合、自らの成長を含めて、行動する上での契機付けに必ず悪玉を必要しており、それに対抗する忍耐と義務が強調されている傾向が強い。我々自由主義社会の人間にとっては、自由や権利の方が強調されることが多いので、この点で違和感を感じているのだろう。このあたりの違和感を念頭に視聴してみると、本作の背景にある必然性や歴史性というものが見えてくるのが興味深い。

 登場する兵器類としては、台数こそ多くないがT34/85戦車が登場している。ドイツ軍側の戦車にはT34戦車の砲塔を四角く覆ったと思われる、ヤクートパンター似のものが数台見える。このほか、ソヴィエト軍の対戦車砲や野砲が出てくる。航空機は双発のIl-4爆撃機様のものが多数編隊を組んで飛行する映像が出てくる。合成とも思えないので、実機を飛ばしているのだろうか。

 戦後、たくさんの国で多くの戦争映画が制作されており、今となっては内容的にはさほど突出したものとは言えないが、歴史的名作として映画史に残るものであることは間違いない。また、ラストシーンに登場する子役バベル・ボリスキンの可愛らしさは万国共通のものであろう。それだけでも十分見る価値はある。

興奮度★★
沈痛度★★★★
爽快度★★★
感涙度★★★



第二次世界大戦後最初の春。運転手のソコロフ・アンドリューシャは息子を連れ、仲間と休息で一服する。その会話の中で、ソコロフは暗黒で酷い目にあった過去に思いを馳せる。
 1900年ヴォロネジ生まれのソコロフは、キキウィッゼ師団に入隊後、大工として働き、妻イリーナと知り合い、1男2女をもうけた。長男のトーリカは 17歳になり、新進数学者として選ばれるなど幸せの絶頂だった。しかし、突然のドイツ軍侵攻により、ソコロフは徴兵され、前線に駆り出される。妻と泣き別れ、前線でトラック運転手の任についていたソコロフは、敵弾で負傷し気を失い、ドイツ軍の捕虜となってしまう。劣悪な環境下で仲間が次々に死んでいくが、ソコロフは軍医に治療をして貰う。そんな中、小隊長を密告しようとした男を道義心から殺す。翌日、共産党員、政治局員、ユダヤ人が銃殺となり、小隊長も軍医も殺されてしまう。
 ソコロフは妻と子供に再会するべく、一度は脱走を図るも捕まってしまう。その後、ザクセン、ルール、バイエルン、チューリンゲンとドイツ国内の収容所を転々とし、その場所場所でユダヤ人の女子供のガス室送りを目撃する。最後に送られたのは第14収容所で、所長のミュラーは残酷な男だった。過酷な労働の中、グチを言ったソコロフは内通者の密告でミュラー所長に呼び出され、射殺を言い渡される。最後の酒だと言って勧められたウォッカを一気飲みし、「つまみは食わないのか」と問われ、「2杯目を飲み干すまでは食べない主義だ」と言ってソコロフは次々と酒をせしめる。その姿を見たミュラー所長は勇敢な兵士だと気に入り、処刑を中止する。
 その後、ソコロフはドイツ軍陸軍少佐の運転手を命じられ、隙を見て少佐を拘束して前線を突破。ついにソヴィエト軍に戻ることが出来る。だが、休暇を貰いヴォロネジに戻ったソコロフは、無惨に消え去った自宅を目の当たりにする。妻も娘2人も即死し、長男は軍に志願したと聞かされる。生きる目的を失ったソコロフは再び前線に戻るが、そこで砲兵隊大隊長(大尉)になった息子の消息を知る。だが、喜びもつかの間、息子ソコロフ大尉は戦死してしまう。再び失意のままベルリンが占領され、ついに戦争が終わる。
 戦後、車の運転手になったソコロフだったが、生きる気力を失い、ヴォロネジに戻る気もしなかった。そこで孤児のワニューシカと出会い、ソコロフはワニューシカをトラックに乗せて連れ回す。父も母も失ったワニューシカの哀れな姿に、思わず父親だと名乗ったソコロフに、ワニューシカは喜んで飛びついてくる。ソコロフはワニューシカとともに生きていく決意をするのだった。


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最終更新日  2007年07月15日 08時38分05秒
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