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November 16, 2024
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カテゴリ: 社会

どこまで人間と認める?

科学文明研究者  橳島 次郎

人格の複製・不死の技術

前回・デジタルツインの技術を使って、現実の心臓や脳とそっくり同じものを仮想空間に再現し、病気の予防や治療などに役立てる試みが始まっていることを紹介した。

脳のデジタルツインで再現されるのは、現段階では、脳波や MRI (磁気共鳴画像法)のデータからわかる神経細胞の活動と血流といった生理現象である。だからこの技術をさらに進めていけば、精神現象も再現するデジタル脳が作れるかもしれない。もしそれが実現すれば、人間存在そのものをデジタルで再現できるようになるといえるのではないか。

その方向ですでに実現している技術としては、亡くなった人の姿形と同じ声と仮想空間に再現し、遺族が会話を交わせる追悼サービスがある。残された SNS の投稿や生い立ち・仕事・人生への考え方などを生前にインタビューした内容を。生成 AI (人工知能)に学習させ、その人ならまさにそう言いそうな会話を作ることができるというものだ。こんなことがあったけどどう思うとか、相談事があるのだけれど、といった話を交わすことができれば、遺族には慰めになるだろう。ただ、そうした形で故人に執着しすぎると、死による別離をきちんと受け止められなくなる恐れもある。

それはあくまで生成 AI による作り物だが、本物の人間を生かし続けるために、脳の活動すべて電子回路にアップロードする技術が可能になるとみる専門家がいる。まだ遠い将来のことだが、それが実現する未来に、自分の意識を復活させたいという人のために、死後、脳を冷凍保存してくれる団体が米国で活動している。

脳が生み出す意識を丸ごと保存できれば、肉体が滅んでも消えてなくなることはない、不老不死の存在になれるだろうか。精神は身体を離れて生きることができるだろうか。

電子回路上に保存されているだけでは、人間的な存在であることはいえないだろう。連載の第4回で、脳のインターネット化技術について触れた。保存された意識をインターネットにつなぎ、社会の動きを知り、ほかの保存された意識やリアルの人たちと交流できる回路を作れば、電脳化した人間精神として、不死の存在になるといえるかもしれない。

問題は、そうした存在をどう保護するかだ。電脳精神にも、リアルの人間と同等の法的権利を与えるべきだろうか。電脳精神を故意に破壊したら、殺人罪とすべきだろうか。デジタルな存在をどこまで人間として認められるかが問われる。

【先端技術は何をもたらすか— 8 —】聖教新聞 2023.10.24






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Last updated  November 16, 2024 07:20:00 AMコメント(0) | コメントを書く
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