ボクシング映画はみんな実話
『 シンデレラ・マン 』
2005米
監督 ロン・ハワード
出演 ラッセル・クロウ レネー・ゼルウィガー
“ シンデレラ・マン ” と呼ばれた世界ヘビー級チャンピオン、 ジム・ブラドック
の半生。
次期チャンピオンと目されていた若手ボクサー、ジミーは右手を故障、ライセンスを剥奪される。折りしも大恐慌時代。ジミーは失業者のひとりとなる。
日雇い港湾肉体労働に就くことも難しく、無料の無料配給の列に並び、かつてのプロモーター達に施しを乞うほどの困窮生活に陥る。
やがて1試合限定のチャンスが訪れ、まさかの勝利。
困窮生活を経てきたことが観衆の共感を呼び、圧倒的な支持の中、1935年、再試合に臨み奇跡的な勝利。
ついには世界ヘビー級チャンピオンとなる。
汗と血飛沫が画面から飛んでくるかと思うほど迫力のある、かつ分かり易い試合シーン。これだけでも観る価値があります。
女である私としては妻が、生きていて欲しい、怪我をしてでも試合を放棄して欲しい、ライセンス剥奪も本当は嬉しかったという気持ちはよく
分かります。
が、ボクシングを捨てて生きたとしても、こういう人は本当には生きていないのだと思います。
死ぬかもしれない試合に敢えて臨むのが、単にお金のためではないとしたら、何のために生きるのか、闘うのか考えてしまいます。
ラッセル・クロウはいい感じで、穏やかで愛情深く、強い父親を演じています。
レネーは、どん底の困窮生活に疲れているにしては綺麗でふっくらしすぎの感もありますが、マネージャーが彼女を避けている、といったような癖のある女性の雰囲気はよく出ています。
『 レイジング・ブル 』
1980米
監督 マーティン・スコセッシ
出演 ロバート・デニーロ
不屈の闘魂から“ 怒れる雄牛 ” と呼ばれた、1949~51年世界ミドル級チャンピオン、 ジェイク・ラモッタ
の半生。自伝をベースに描かれる。
理不尽な判定負けや八百長トラブルの中でもがきながら、ついに世界チャンピオンになるまでと、異常なほどの嫉妬が彼の心を蝕み、人生が破滅してくさまが描かれる。
言わずもがなの傑作です。白黒画面が美しく、凄まじい試合シーンもどこか悲しみを帯びて見えます。
無教養で粗野な男が、これだけは、と必死で掴む栄光と、転落と、最後に残ったプライドの虚しさ。
馬鹿だなあ、と思うのは簡単ですが、人間の業の悲しさが、心に残る映画のひとつです。
自由が丘の、今は無き名画座 『 武蔵野推理劇場 』 で、『 告白 』 との2本立てで観ました。懐かしい~。
『 アリ 』
2001米
監督 マイケル・マン
出演 ウィル・スミス ジョン・ヴォイト
1964年2月26日、弱冠22歳で世界ヘビー級チャンピオンとなった カシアス・クレイ
の半生。
クレイはタイトルを獲得した翌日、黒人イスラム教団体ネイション・オブ・イスラムに入信、 モハメド・アリ
と改名。
圧倒的強さで9回の防衛に成功、やがて結婚。
その後の離婚、兵役拒否からの投獄、最高裁の無罪判決、復帰と判定負けを経て、奇跡的なタイトル奪還までのストーリー。
カシアス・クレイ=モハメド・アリのことは勿論知っていましたが、( あの猪木との試合やなんかでね )、どういう人だったのか、何故名前が
ふた通りなのかを知りました。
心に残るってほどでもなかったけれど、背景となる当時のアメリカ社会など、興味深く観ました。
『 チャンピオン 』
2002韓国
監督 クァク・キョンテク
出演 ユ・オソン チェ・ミンソ
韓国の伝説のボクサー、 キム・ドゥク
の半生。
貧しい漁村から都会へ家出し、その日暮らしの生活を送っていたキムは、ひょんなことからボクシング・ジムに入会。
才能が開花して韓国チャンピオンとなり、愛する人を得て幸福な生活を送る。
が、夢を諦めることはなく、1982年ラスベガスでWBAライト級世界タイトルマッチに挑む。
真っ直ぐにしか生きられない、純真で不器用な男キムの人柄、その彼が好きになった女性へ示す朴訥な愛情表現が泣かせます。
だからこそまた、愛する人を悲しませ、命を賭してまで何故闘うのか、という疑問が頭をかすめます。
映画としては、本当にいいです。泣かせます。本日紹介の中で、一番好きです。
『 クライング・フィスト 』
2005韓国
監督 リュ・スンワン
出演 チェ・ミンスク リュ・スンボム
これ未見なので、ここに書くのは違うのですが、韓国のボクシング映画ということで思い出しました。
とてもいいらしいです。機会があったら観たい映画のひとつです。
『 ザ・ハリケーン 』
1999米
原作 ルービン・カーター 『 第16ラウンド 』
監督 ノーマン・ジェイソン
出演 デンゼル・ワシントン
ライトウェルター級ボクサー、 ルービン・“ ハリケーン ”・カーター
の半生。
1966年、ボクサーとしての絶頂期に無実の罪に問われて投獄され、30年間の獄中生活。
そこから疑いを晴らすまでの波乱に満ちた半生を、自伝 『 第16ラウンド 』 を元に事件経過を織り交ぜながら描く。
獄中で執筆した自伝を読んだ黒人少年レズラが、釈放運動に立ち上がり、ついに無罪を勝ち取るまでの物語。
教育を受ける機会もなく暴力の中で生き、“ 人を倒す ” ためにボクシングを始めた黒人青年。
そんな彼を凄まじい人種差別の理不尽が冤罪で投獄するといった、どうしようもないアメリカ社会の悪循環を見せてくれます。
映画自体はハッピーエンドですが、喜んで、はいお終い、では済まされない虚しさが残ります。
映画の最初で少年エズラがふと、黒人の顔写真が表紙になった本を手に取るシーンが印象的です。
詳細は忘れてしまいましたが、野外古書市にエズラを連れてきた人 ( 親 ? 神父さん ? ) が、本を読むことの大切さを諭します。( 確か )
ストーリーの中の未来と同時に、現実社会の未来を暗示しているように感じます。
『 ボクサー 』
1970米
監督 マーティン・リット
原作 ハワード・サックラー 『 偉大なる白人の希望 』
出演 ジェームズ・R・ジョーンズ ジェーン・アレキサンダー
黒人初の世界ヘビー級チャンピオン、 ジャック・ジョンソン
の半生。舞台劇 『 偉大なる白人の希望 』 の映画化。
1908年、白人チャンピオンを倒して黒人初の世界チャンピオンとなり、1915年までタイトル保持。
白人女性と結婚したことで白人に敵視され、黒人には 「 白人との同化 」 と非難される。
ふたりはアメリカに居場所を無くし、ヨーロッパへ。が、そこでもアメリカ政府によって試合を阻まれ、メキシコへ逃亡。
妻が自殺し、アメリカに戻った彼は八百長試合に身を投じる。
人種差別の不条理にやり場のない憤りと悲しさを感じます。
映画の前半では、単純に勝利を喜び、能天気に明るいジャックが、次第に怒り、焦り、疲れていく様子が切ないです。
観て感じる虚しさは 『 ザ・ハリケーン 』 以上です。
デンゼルはハンサムすぎて、無学な青年を演じていてもどこかに清潔さやクールさを感じてしまうのに対して、J・R・ジョーンズには生来の泥臭さや無邪気さがあることが原因のひとつかな。
ジョンソンから、1937年の ジョー・ルイス
まで、黒人の世界ヘビー級チャンピオンはいないそうです。
ルイスはジョンソンを反面教師とし、白人女性といっしょに写真に写らないなど、白人の怒りを買わないよう細心の注意を払ったそうです。
この ジョー・ルイス
が1937年に倒した相手が、『 シンデレラ・マン 』 こと ジム・ブラドック
ということになります。
以上お勧めボクシング映画でした。
私的には 『 ロッキー 』 は論外で、 『 チャンプ 』 も語り尽くされている感があるので外しました。
書いていて気付いたのですが、これらボクシング映画は、みんな実話です。
心に残るスポーツ映画は、ひょっとするとほとんどそうかも知れません。
私にとっての最高のスポーツ映画は 『 炎のランナー 』 ですが、やっぱり実話です。