いつかどこかで

いつかどこかで

『ローズ・イン・タイドランド』


ダーク・ファンタジー な世界



『 ローズ・イン・タイドランド 』 2005 英・カナダ

        原作  ミッチ・カリン  『 タイドランド 』
        監督  テリー・ギリアム
        出演  ジョデル・フェルランド  ジェフ・ブリッジス  ジェニファー・ティリー  ブレンダン・フレッチャー

アメリカの作家ミッチ・カリンのカルト小説 『タイドランド』 を元に描かれたブラック・ファンタジー。
麻薬中毒の父母の世話をする10歳の少女、ジェライザ=ローズ。
麻薬で母親が死に、元ロックスターの父親と共にバスで、ローズが産まれる前に死んだ祖母のテキサスの田舎の家へ。

金色の草原の中に建つ朽ちた家に着くと、父親はすぐに麻薬でトリップ。
ローズはトランクに、母親の形見のドレス1枚と、バービーなど人形の “ 頭 ” 4人、ミスティーク、サテン・リップス、ベイビー・ブロンド 、グリッター・ガール
( 目がくりぬかれ、裂かれた顔を黒糸で雑に縫い合わされている )を連れてきている。
ローズは、中でも一番の親友、バービー人形の “ 頭 ” ミスティークを連れて探検に。
金色の草原を歩き、線路脇にひっくり返ったバスの残骸に潜り込み、家では、リスを追って屋根裏部屋を見つけ、祖母の残したドレスや
ウィッグや帽子、オーストリッチショール、化粧品を持ち出す。
夜が更けても、明けても父親は目を覚まさず、食べ物もない。
ローズは再びミスティークとともに草原に彷徨い出て、奇怪な隣人に出会う ・・・・・


どう解釈していいか分からないほど、醜悪なファンタジー。
悲惨な境遇にある少女の幻想と現実の綯交ぜになった情景をそのまま映像にした、といったところですが、それが、シュールとか
ブラックとはちょっと違う、「 それってルール違反じゃない ?」的 “ タブー ” の匂いがするんですね。
匂わせるだけで、映像的に醜悪なところはないのですが、とにかくぷんぷん匂っています。
主人公の少女と脳手術痕の残る隣人ディケンズ、ディケンズと死んだローズの祖母の性的関係 ( つまり大人と子供のということです )
とか、剥製師であるディケンズの姉の行為とか、その他諸々。

それでいて、金色の草原や枯木の根元のうさぎの穴、草原が海底になる幻想世界、どこまでも続く屋根裏部屋など、恐ろしくも
美しい、覗かずにはいられないファンタジーワールドなのです。
そして天才の呼び声高い、主演のジョデル・フェルランドの可愛さと演技力。これはもの凄いです。


んで結局のところ、なかなかに気に入りました。
これを気に入る私ってどうよ ? と自らの人間性を聊か疑いつつも。
特に4人の人形の “ 頭 ”、ローズが祖母の衣装を身につけた姿、とてもシュールです。
非常に好みです。

何しろ私の映画歴におけるバイブル 、『 未来世紀ブラジル 』 のテリー・ギリアム。
実を言うと前作 『 ブラザー・グリム 』 は期待したほど面白くなかったし、この 『 タイドランド 』 も 『 未来世紀ブラジル 』 に比べれば足元
にも ・・・ なのですが、 ギリアム・ワールドであることは確か。
もしかするとギリアムという人、意図して観客を彼の世界へ誘いながら後を向いて舌を出しているのではなく、あの映像のまんま、
心底変人なのかもと思ったりもしてしまいました。


とにかくざっと見たところ、ネットでの評価は非常に低いです。
前述したようにそれは無理もないです。だから、お勧めとは言えません、要注意映画です。





『 パンズ・ラビリンス 』   2006  スペイン・メキシコ・米

        監督  ギレルモ・デル・トロ
        出演  イナバ・バケロ  セルジ・ロペス  マリベル・ベルドゥ

1940年代スペイン。
内戦は一応の終結をみたものの山ではまだ人民解放軍によるゲリラ戦が続いており、軍は状況を掌握するべく山中に駐屯している。
少女オフェリアは、身重の母と共に母の再婚相手、仏軍のビダル大尉が駐屯する山へ赴く。
母親は体調が思わしくなく、父親は冷酷非道な人物で、オフェリアは過酷な生活を強いられる。
そこに妖精が現れ、導かれた森の中の迷宮ではパン( 牧神 ) が王女の帰還を待っていた。
オフェリアは地中の王国に戻るために3つの試練を与えられる。


予告編から、摩訶不思議なダーク・ファンタジーという印象を受け楽しみに観に行きましたが、正直なところ、気分が悪くなりました。
際限なく血と涙が流れ、ダークを通り越してグロテスクな映像に絶句しました。

妖精や、パンやグールは容姿もグロテスク。
グールが妖精を喰らうシーンや、人間になりたい植物マンドラゴラ (?赤ん坊の形をした木の根っこ ) が悲鳴を上げながら焼かれるシーンなど
では思わず目を覆いました。

しかし気分が悪くなるほど残酷だったのは、幻想世界ではなく現実の世界です。
残虐で知られるフランコ政権下のスペインを舞台にしたこの物語、映画の中でもオフェリアの継父ビダル大尉は、人民戦線の残党や疑わしい
者を拷問し、次々と殺します。
幼いオフェリアにとっての現実は、空想の世界に逃げ込むしかないほど過酷であったことが描かれます。
だからこの物語は、他の多くのファンタジーのように必ずしも 「 こんな世界が本当にあるのよ 」 を前提としておらず、もしかしたら全ては
オフェリアの空想かも知れない、と見ることもできそうです。


世界中で多くの映画賞を獲ったようです。
確かに人間の醜さを際立たせた映像は美しいといえなくもないです。
私には、あの暴力的残忍さ ・・・・・ 駄目でした。

もうひとつ駄目だったことの理由に、主人公への感情移入ができなかった、というのがあります。
どうも、オフェリアのキャラクターが一貫していないように感じられて。
勇敢で健気と描かれていながら、パンに何度も厳しく禁止されている食べ物を妖精の制止を振り切ってまで食べるのは変。
冒険好きのいたずらっ子に描かれているならそれも面白いけど。
子供っていろんな面を持ってるとか何とかどうとでも言えるでしょうけど、映画としては何となく最後まで違和感がありました。
ま、これは私の性分だから仕方ありません。


『 ローズ・イン・タイドランド 』 と比較すると。
同じく過酷な現実にある少女が迷い込む不思議世界が描かれていますが、『 ローズ~ 』 は精神とか思想の歪みというか、その
非日常性がグロテスクなのですね。
肉体的な苦痛はなし。化け物もなし。主人公の少女はあくまであっけらかんとしています。

『 パンズ~ 』 は、人間の普遍的な残虐さみたいなものがベースになっていて、肉体的な苦痛がこれでもかこれでもかと描かれ、少女は
勇敢さを試されます。
言葉にすると、ダークでグロテスクは同じでも、” シュール ” がないのね。

どちらのファンタジーを好むか。純粋に嗜好の別れるところでしょうね。
( 『 ハリー・ポッター 』『 ライラ 』『 ナルニア 』『 指輪物語 』 ・・・・・ そういうのはまあ、わたし的には論外なわけです。あ、原作じゃなく映画と
してですが。スミマセン )




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