いつかどこかで

仏ﾌﾞﾙﾎﾞﾝ王朝映画

仏、ﾌﾞﾙﾎﾞﾝ王家映画

ﾌﾗﾝｽ、ﾌﾞﾙﾎﾞﾝ王家を題材とした映画を紹介します。

『ﾏﾘｰ･ｱﾝﾄﾜﾈｯﾄ』 　2006米

        監督　ｿﾌｨｱ･ｺｯﾎﾟﾗ
        出演　ｷﾙｽﾃｨﾝ･ﾀﾞﾝｽﾄ　ｼﾞｪｲｿﾝ･ｼｭﾜﾙﾂ　ｼﾞｭﾃﾞｨ･ﾃﾞｲﾋﾞｽ

ｵｰｽﾄﾘｱ皇女ﾏﾘｰは14歳でﾌﾗﾝｽ皇太子ﾙｲ16世の元へ嫁ぐ。
待ち受けていたのは、因習にがんじがらめの生活と排他的なﾍﾞﾘｻｲﾕ宮殿の人々、愛情のない夫。
ﾙｲとはほとんど会話もなく、ﾍﾞｯﾄﾞでも彼女に指一本触れない。
ﾏﾘｰは、子を成さないことへの悪意溢れる噂に傷付き、やがて贅沢なﾄﾞﾚｽやｷﾞｬﾝﾌﾞﾙで孤独を紛らわすように。
ようやく王子を授かり、夫の心も徐々に開かた頃、世では次第に王家批判、ﾏﾘｰの贅沢への批判が高まり、時代は一気に革命へと
動き出す。
身の危険を感じた貴族たちは国外へ逃亡するが、ﾙｲとﾏﾘｰはﾍﾞﾙｻｲﾕに留まることを選ぶ。

ここで描かれるﾏﾘｰは、愛されて育った人懐こい普通の少女です。
有名な「ﾊﾟﾝがなければお菓子を食べればいい」という言葉も真実ではなく、様々な愚行の噂も寵愛を受けなかった貴族たちの
嫉妬や、革命を煽るﾃﾞﾏだったようです。
愛情のないﾍﾞﾙｻｲﾕでの生活に傷付き、それでも必死に自分の “ 務め ” を果たそうとする健気な女性として描かれます。

“ 務め ” とは、王位継承者を産むこと。

もともとｵｰｽﾄﾘｱとﾌﾗﾝｽの仲を堅固にするための結婚ですから、子を成すことは絶対条件。婚家からも実家からもせっつかれ、
ﾙｲの弟夫婦に先を越されてはならないとか、子を産むまでは立場が危ういから国王の愛人を冷遇してはならないとか。
まさに、“ 産む機会 ” なわけで、ほら、現代のどこかの王家と同じではありませんか。

映画にはｽﾄｰﾘｰらしきものはあまりなく、見どころは、とにかく豪華なﾍﾞﾙｻｲﾕの調度、婦人たちのﾍｱｽﾀｲﾙやﾄﾞﾚｽ、お菓子の数々。
そしてばかばかしい因習。これだけでも十分観る価値はあります。
ただ、これは全て本当なのかしら。私には創作と事実との区別がつかないので分かりません。

で、ある種の効果を狙ったのは分かりますが、何ともかんとも音楽が私には最悪。
ﾉﾘのいい現代ﾎﾟｯﾌﾟｽがｶﾞﾝｶﾞﾝ流れるのですが、時代のﾐｽﾏｯﾁ云々ではなく、うるさい。
ﾏﾘｰの孤独も、仮面舞踏会の退廃的な雰囲気もわざと喧騒に埋めた感じ。これは好き嫌いの分かれるところでしょう。

ｼﾞｪｲｿﾝ･ｼｭﾜﾙﾂのﾙｲ16世が気持ち悪く適役で、ｷﾙｽﾃｨﾝはとても可愛らしかったです。

『王は踊る』 2000ﾍﾞﾙｷﾞｰ･仏･独

        監督　ｼﾞｪﾗｰﾙ･ｺﾙﾋﾞｵ
        出演　ﾌﾞﾉｱ･ﾏｼﾞﾒﾙ　ﾎﾞﾘｽ･ﾃﾗﾙ

ﾙｲ14世は5歳にして国王となるが、実権は母と宰相ﾏｻﾞﾗﾝにあり、ﾙｲは音楽とﾀﾞﾝｽに没頭する。
ｲﾀﾘｱの音楽家にして舞踏家のﾘｭﾘと出会ったﾙｲは、彼の振付けたﾀﾞﾝｽによって、“ 太陽王 ” のｲﾒｰｼﾞを確立する。
宰相が死んで実権を握ったﾙｲは、王立舞踏ｱｶﾃﾞﾐｰ設立、作家ﾓﾘｴｰﾙ支援など芸術活動に力を入れるが、ｽﾍﾟｲﾝ王女ﾏﾘ･ﾃﾚｰｽﾞと
結婚した頃から次第に芸術に対する興味を失ってゆく。
男色家であるﾘｭﾘは密かにﾘを愛しており、怪我がもとで足を切断する必要に迫られるが、王と踊った足は切れない、と手術を拒否、
そのまま息を引き取る。

ﾍﾞﾙｻｲﾕ宮殿建設前の、いかにも中世らしい泥臭さと退廃の匂う美しい作品です。
ﾘｭﾘの愛はある種滑稽でもあり、それが哀れで悲しいのです。それにしても、王のﾊﾞﾚｴ姿････不思議な世界です。

『宮廷料理人ｳﾞｧﾃｰﾙ』 2000仏･英

        監督　ﾛｰﾗﾝﾄﾞ･ｼﾞｮﾌｨ
        出演　ｼﾞｪﾗｰﾙ･ﾄﾞﾊﾟﾙﾃﾞｭｰ　ﾕﾏ･ｻｰﾏﾝ　ﾃｨﾑ･ﾛｽ

ﾙｲ14世統治下のﾌﾗﾝｽ。重職から外されている老英雄ｺﾝﾃﾞ公の居城ｼｬﾝﾃｨに、太陽王ﾙｲ14世が3日間滞在することに。
このﾁｬﾝｽに国王の信頼を回復したいと願うｺﾝﾃﾞ公は、ﾍﾞﾙｻｲﾕを上回る贅沢な宴の企画を料理長ｳﾞｧﾃｰﾙに託す。
歴史に残る3日間の盛大な饗宴と、それを取り仕切った実在の天才料理人ｳﾞｧﾃｰﾙをめぐる騒動の物語。

ﾌﾗﾝｽの田舎の風景が美しく、宴の豪華さと奇抜さが実にﾕﾆｰｸ。
料理自体は『ﾏﾘｰ･ｱﾝﾄﾜﾈｯﾄ』で見られるような繊細な豪華さではなく、もっと野趣に富んだ素朴な感じですが、それを取り巻く
趣向の数々、ﾃｰﾌﾞﾙの装飾や野外ｽﾃｰｼﾞの仕掛けやらなにやらが豪華というかなんというか、ｱﾅﾛｸﾞで大仰でなんともｼｭｰﾙです。
音楽や歌も中世の退廃の雰囲気を盛り上げます。

そしてここでも、“ 務め ” を果たそうとする人間の必死の姿が、どことなく滑稽、どことなく哀しいのです。
ﾃｰﾌﾞﾙの氷の彫刻が溶けてゆく映像が、必死でやっているのにどんどん事態が手に負えなくなっていく時の、悪夢を見ているような
奇妙な感覚を呼び起こします。

ｼﾞｪﾗｰﾙ･ﾄﾞﾊﾟﾙﾃﾞｭｰはこういった、滑稽かつ哀しい、ゆえに切ない役がとても上手。
最初に彼を見たのが1981年『隣の女』で、ｼﾘｱｽでｾｸｼｬﾙな役だったので、なんて不細工なんだあ、とびっくりしましたが、今では
好きな俳優さんです。
この映画、ﾌﾗﾝｽ映画史上最高の40億円を投じて作られたそうです。

『ﾓﾘｴｰﾙ』 1978仏･伊

        監督　ｱﾘｱｰﾇ･ﾑﾇｰｼｭｷﾝ
        出演　ﾌｨﾘｯﾍﾟ･ｺｰﾍﾞｰﾙ　ｼﾞｮｾﾞﾌｨｰﾇ･ﾄﾞﾚﾝﾇ

反ｷﾘｽﾄ的反骨の作家ｼﾞｬﾝ･ﾊﾞﾁｽﾄ（芸名ﾓﾘｴｰﾙ）の生涯。ﾙｲ13世統治下、王弟殿下ﾙｲ14世の庇護を受ける。

時代背景としてはﾌﾞﾙﾎﾞﾝ王朝下ですが、時代背景自体は映画ではあまり重要ではないので、今回は外します。
こんな映画もあるということで、名前だけ紹介。

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