日々のあぶく?

日々のあぶく?

December 7, 2006
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カテゴリ:
夜市
…コレはミステリではない…かな。

相変わらず浮かび上がるような情景、日常に近いところに潜む異世界を描くのがうまい。

外との交流がなく、ひっそり存在する海辺の漁村を中心とした土地(町)"穏"。
そこは春夏秋冬の他にもう一つの神の季節があった。
冬と春の間に位置する、短いその季節は二週間ほど雷雲がとどまり、無数の雷が降り、"神季"とも"雷季"とも言われていた。

広大な世界には無数の国があり、異なる文化風習があるが、穏は地図に乗らず、隠れた地であった。
外の世界は戦争ばかりと教え、一部の訓練を積んだ者以外は外に出ると帰り道を見失い、穏に戻れなくなるらしい。


雷の季節に姉が消えた後、近隣の家に身を寄せた賢也は穏での家柄がよく、少年のように振舞う穂高と遼雲とともに過ごす。
風化した墓町に足を踏み入れた賢也は死者や外の世界から穏に向かってくる人々を見張る闇番(門番)・大渡と知り合い、彼が対処する死者、穏の外から来る商人などの存在を知る。
また、彼に取り付いた風わいわいとも意思疎通が出来るようになり、自分が外からきた存在であることを知る。

好青年の穂高の兄・ナギヒサ、彼の親友・キミオとも知り合うが、ナギヒサの友人・ヒナが殺された。
その犯人を知ってしまった賢也は穏にいられなくなり、風わいわいの力を借り、やむなく外の世界に出ることになる。


外の世界では継母との関係がうまくいかない茜は家出した日、見知らぬ男に知らない土地に連れて行かれる。
男は母と同郷で、母親からの依頼を受け、茜の命を狙っていたのだった。

穏で雲から降りてきて見つけた人間に取り付く"風わいわい"にとりつかれた少年・賢也と
(穏の外の)普通の世界に暮らし、継母との関係がうまくいかない茜の二つの視点で物語りは展開する。

存在するとされるが蜃気楼のように実体のない天上家、穏の警察のような存在・獅子野、
雷の季節に墓町で遂行される鬼衆による処刑(雷鬼講)、


風わいわい(知的空棲野生動物?)という異質な存在は登場するが、結局、鬼となるのは人である。
理想郷のように語られる「穏」も決して穏やかではなく、ドロドロしているのである。
ラストも安易な救いでなく、解放と空虚、孤独といろいろな思いが重なりながら"新しい季節"を迎える姿が描かれる。





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Last updated  December 9, 2006 02:18:54 PM


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