日々のあぶく?

日々のあぶく?

September 29, 2009
XML
カテゴリ:
これもある意味地域医療の現実を訴える小説。

もっとほんわかしていて、なおかつじんわりさせてくれる・・・かも。

・第一話 満天の星
連日の診察、宿直、救急医療の対応に追われ、ふと気付くと結婚記念日も過ぎようとしていた―
信濃大学医学部卒業後、松本城近くにある本庄病院に勤務する5年目の内科医・栗原一止(いちと)は
敬愛する夏目漱石先生の影響で話し振りがいささか古風で、変わっているといわれている。
本庄病院は地方都市の一般病院としては大きく、しかも24時間、365日対応を掲げているため、
宿直ともなると内科医であっても救急医として専門外でも奮闘しなければならない。

大学病院の外科医局に入局し、本庄病院の外科に派遣されている砂山次郎は学生時代からの腐れ縁。
初めて担当患者の死と接する新人看護師・水無に時に誤解されるが、後に理解され、
ベテラン看護師・東西のフォローもぱっちりである。
カメラマンの妻は撮影のため旅立ち、旅館を下宿に回想した風変わりな「御嶽荘」の住人
男爵(自称・画家)、学士殿(哲学学生)と共に酒を酌み交わす。
大学病院の医局に所属していない私(ドクトル)には医局からの誘いが来ている。
最新医療に触れる大切さを次郎も説くが・・・
患者の死に妻子、出来ることはもっとなかったか自己嫌悪に陥る私の前に、愛すべき細君・ハルが。

中小病院は医局のお陰で保っている現実。大学病院の医局制度は崩壊しつつもどうなるか・・・。
一見のどかな地の、戦場の様な地方病院の現実。
かすかに漱石風?の文体も、硬くなく、ほんわか読める。


大学病院で処置が出来ないといわれ戻ってきた末期癌患者の安曇さんを担当する私。
彼女を見舞う老紳士は、昔安曇さんの旦那様に救われたことがあると告白。
学士殿が自殺未遂。実は大学受験し失敗。事実を知る姉から、母の死を知らされたのだった。
姉と一緒に故郷に帰ることを学士は決意する。
一止、ハル、男爵はこれは門出だと送り出す。


大学医局見学を勧める上司の大狸先生と古狐先生。
向き不向き、大学病院から漏れてしまう安曇さんのような助からぬ患者、
死に行く人に、可能な医療行為をすべて行うことが可能な現代医療においては
「できることは全てやる」ということが必ずしも美徳ではなくなっている。
最期まで周囲に気遣い、一止に感謝してなくなった安曇さん。
迷いの末、一止が選んだのはとりあえず今は、
手の施しようのない患者がひとりぼっちで死んでいる中、高度医療を学ぶ必要性がわかるまで
この(医療の底辺のようなby古狐先生))病院にとどまることだった。

安曇さんの最期は、人の生き様・死に様というもの、潔さ、心遣いを感じ、
心を打ち、考えさせられる。

一止の名前は正しいを崩したもの。「一に止まると書いて正しい。本当に正しいということは一番は初めの場所にあるのかもしれない」






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  September 29, 2009 10:09:27 PM


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: