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◎河竹豊蔵 同人雑誌「果樹園」
果樹園13号「説吉の悩み」
果樹園第13号 豊川稲荷に狐たち2から
四、説吉の悩み
説吉は最近、小説を書いてみたいと思っていた。そこに、仙吉じいさんが訪ねて来た。
「こんにちは。説(せつ)ちゃん、久し振り」
「いらっしゃい。本当に久し振りだね。お互い見る限り元気そうで、なにより」
「説ちゃん、コンコン新聞の文吉さんから聞いたよ。最近小説を書き始めたんだって。どういう風の吹き回し。理由はなんだい」
「来る早々、それか。まあ、お茶でも飲みながら話そう。ほら、この座布団を使ってよ」
仙吉じいさんは勧められたとおり、四畳半の部屋にある布団のない堀炬燵の座布団に座った。説吉じいさんは、自分の後ろにある茶箪笥から湯呑を取出し、土色をした常滑焼きの急須に新しい茶葉をいれて、魔法瓶からお湯を注いだ。
「今日はウチのが、御油の娘の所に行って帰ってこない。無作法で悪いけど、その分、ゆっくりしていけよ」
二人は同じ歳であり、旧来からの友人である。久し振りの再会で、お互いの近況や旧友たちの消息などを確かめあった。
「さて、説ちゃんは何故、小説を書く気になった」
「仙ちゃんだから話そう。その理由は、自分の思考や心の拠所がどこに在るか知りたくなった」
「ふーん」
「なのに、意気込みとは違い、実際には何もない」
「なんだ、もう降参したのか」
「心にチクリ・チクリと針を刺すのだが、思いが端的で文章にならない。ちっとも書けない。知りたい事が、抽象的で概念的で、楽しくないんだ。暗い部屋に閉じこもって、悶々とした。何も考えたくない、何もしたくない。どこかで動き始めなければと思っても、身体がだるい。ぎりぎり追い詰められて、壊れそうになる瞬間まで、何もしないでいたかった。自分に都合の良い夢を見、空想していた」
「……」
「気が向いたら動けばいい。それまで、生活のすべてを放棄して、ボーッとしていたかった。何か、きっかけが欲しかった。ふと、最近貰った詩集を見た。仙ちゃんも知ってるだろう。平尾の財賀寺近くに住む、フランス人のションボ・リータさん。詩の中に、こんなのがあった。読んで見るから、聞いてくれ」
説吉は、ゆっくり、ゆっくり、詩を読んだ。
題『隠れた願望』
ただ ただ 毎日が破滅への道に続く
なにか 自分で やらなくては ならないのに
私は なにもせず ただ 佇んでいるだけだ
明日という日が 無意味に 訪れて 過ぎ去ってゆく
いいのか それで
私は ただ 自分を破滅に導いている
私は 何もせず ただ 破滅を待っている
私は 神に ばか者 といわれた
隠れた願望は砕かれて 正気に戻った
(ションボ・リータ)
説吉は、もう一度、声を出して読んだ。
「ワシも、自分を破壊したい願望を持つことがある」
「僕も、一緒の心境だと思った。『ばか者』という言葉で目が覚めた気がした。分かっているよ、じっとしていても誰も助けてくれないぐらい」
「……」
「この詩は動くきっかけを与えてくれた。現実の生活…、僕は、繰り返す日々に戻った。頭がすっきりした気がした」
「自虐的破壊から正気に戻ったということか」
「いや、残虐の狂った現実に戻ったかも知れん」
「はは…、大きくでたね」
「とにかく、私(わたくし)自身に対して思いつく事を、書き出した。自分の外見から、理想、夢など」
「いよいよ、動き出したわけか。それで」
「さらに、私(わたくし)、私、私と私を連発することによって、私は私の言葉で、私自身を語り、私を意識させる文章を書いた。誰の意見であろうと、私は聴く耳を持たないと決心した」
「なんでだ」
「私でなくなるからだ」
「それにしても、私、私とくどいなー」
「いいじゃあないか。自分の思考や心の拠所を知る為なんだから」
「じゃあ、それでどうなる」
「仙ちゃんだから判ると思うが、結論として、僕は頑固で他人の意見を聴かない、かつ直感的に物事を判断するタイプと判明した」
「そんなことは、前から分かってるよ」
「つまり、直感は素早く答えを出す作業には向いているが、小説を書くのには向いていないのさ」
「はは…、うまいことを言って、逃げるじゃないか」
「これを、起承転結から逃げるという」
「笑わかすな。なんだい、それは」
「要は順を追って説明することが出来ない、ということ。はは…、我ながら笑える。思いつくまでの過程をまともに説明できないのだ。自分の意識しない所から、こう思うと勝手に結論している。自分を説明できないそれは、何だと思う」
「ワシだってわからん。結論は、経験からくる善悪基準で判定しているのではないか」
「わからない何かが、自分は『こうあるべき』だとか、『こうしなければならない』と、勝手に囁く。それさえ実践できない弱さは何だと思う」
「平八郎様が以前、『弱いという事は悪い事だと思わない』と言っていた。わからん」
「僕は、弱いのは嫌だ。そりゃあ、『こうあるべき』『こうしなければならない』なんてものは、棄ててしまえと言う人もいる。楽器屋の徳吉さんは、『そんなつまらない自尊心なんか、棄てればいい。あるがままに生きればいい』と言った」
「自然体でいれば、いいと言うこと」
「仙ちゃん、それが傲慢というものだよ。理由がないじゃあないか。何処から、自然体という素直さを導き出すんだ。根拠は何」
「心からだろう」
「じゃあ、心をつくったものは何」
「良心じゃあないのか」
「ますます、わからない」
「神や仏が良心をつくるのだ」
「じゃあ、神や仏をつくったものは何」
「信心」
「じゃあ、信心をつくったものは」
「良心」
「はは、返答がどうどう巡りだ」
「ワシだってわからん。しかし、心が良い人は天国へ。心が悪い人は地獄へ。死んだあとまで、神は用意している」
「それこそ、神が言う教えという名の法律なのだ。脅迫ともいえる。神と言えば、良くも悪くも説明に利用しやすく、結論を出しやすい便利なものだ。天国、地獄で理解されないなら、大天国、大地獄を用意することも簡単なのだ」
「それは、説ちゃんの考えだろう」
「そうだ。だけど、私の神に対する考え方は、明日に変わるかも知れない」
「それじゃあ、詭弁じゃあないか」
「その通り。自分の思考や心の拠所がどこに在るか分からない。では、なぜ私は動くのか。やっと、私は独りでなく、様々な人と生きていると感じたが、結論まで行っていない。神は便利だから、利用できる」
「次の段階に進め」
「私を棄てることは出来ない。その代わり、私と動くという行為の間に、何があるのだろう。この『動くべき決断』の決定過程を説明できるだろうか」
「欲求があるから、動くのだよ。それ以外になにが有ると云うんだ。希望が湧いたから、動き出すのだ」
「そう簡単な事ではない。したいと思っても、現在の自分の置かれた位置を認識しなければ、動けない。そこで、均衡を取りながら動き始める。その考えが大切なのだ」
「説ちゃんは、面倒臭いことを言う。いいじゃあないか、動きたいんだから。やりたいんだから」
「そうなら、ぎゅうばだぞ」
「なんだ、それは」
「牛と馬みたいに、ドウドウの、どうどう巡りを繰り返すということだ。面倒でも、自分に問わなくてはならない」
「疲れるな」
「その誤魔化しが、私達から思考を奪っている。神などいないのだ。神がいないという前提で考え直すべきではないのか」
「……」
「大体、みんな簡単に神様を都合よく利用する。神様とは、一体何者なのだ」
「ワシは、思う。神は、我々に秩序をうみ出すものと思う。世の中の秩序を守る根源だと思う」
「わからない事を納得させる為の神の存在。できない理由や苦しみから逃げ出す為の存在。幸せや喜びを感謝する存在。色々あるが、心の支えというものなのか」
「そう思いたい。心も一つでは生きて行けない。もう一つの心が神であり、そこから秩序がうまれて来たのではないか」
「……」
「……」
「……」
「説ちゃん、小説を書く話からだいぶ逸れてしまったね」
「うん、でも秩序から仲間が集まり、組織ができ、国まで出来てしまった。しかし、秩序は一握りの者に支配されてしまった」
「真の秩序は、支配されていない。利用されているだけだ。真の秩序を取り戻すには、どうしたらいいのだろう」
「神に祈る。やっぱり、わからない存在だ」
「また、次のときに話し合おう」
「そうだね、疲れたよ。休憩に宝珠まんじゅうを食べよう。はい」
「おっ、遠慮なく頂くよ」
「僕は、頭が疲れると不思議に甘いものが食べたくなる。こりゃあ、こしあんだ。うまいね」
「うん。すまないが、お茶をもう一杯もらえるかな」
「あっ、悪い悪い。今、すぐ入れるよ」
説吉は、急須に新しい茶葉を足して、魔法瓶からお湯を注いだ。それから、二人でゆっくりお茶を飲んだ。
「仙ちゃんも一緒に小説を書いてみないか」
「ワシは書けない。口から話すだけだ。これを、起承転結から逃げるでなく、出任せと言う」
「出任せでも、仙ちゃんが考えている事だろう」
「そりゃあ、そうさ」
二人は、声を合わせて笑った。
「ワッハハー・ワッハハー・ワッハハー」
しばらく、駄目同士の笑いは止まらなかった。
「説ちゃん、どんな小説を書こうとしているんだ」
「正直、まだ決まっていない。さっき、『私(わたくし)、私がくどい』と感じた訳だが、今閃いたよ。私、私を連発して、さも他人を批判しないようにしながら、自身が他人から批判されることを恐れている」
「まあ、いじめのように自分の弱さを隠すため、集団になって他人を傷つけるより上等だけどな」
「活字になってしまうと、何度も読み返される。そうすると、自分の考えが透けて見える。会話のように、笑顔や笑い声で誤魔化す事ができない」
「説ちゃん、大作家みたいだね」
「先輩の兼吉さんが、『殆んど全部、文学の中で様々な手法は終わっている。新しい形態はないという。文章には、起承転結が必要という』」
「それはそれで、いいんじゃあない。大体において、物書きは、表現過剰なんだよ。ワシは、日本昔話のようなものが好きだ。『昔々、あるところで……、なったとさ。メデタシ、メデタシ』で終わる。桃太郎の話しでも、どんぶらこ、どんぶらこと、流れてきた。この『どんぶらこ』という音だけで、夢の世界に引き込まれてしまう。ワシは語る事が好きだ。それは、聴く人の反応を見ながら、話を展開できるからだ。難しい言葉は要らない。説ちゃんは、書くという行動を取った以上、誰に読まれると想像するのか」
「……」
「君の好きなシェイクスピアやドストエフスキーだって、徹底的な人間と生き方の探求だ。説ちゃんは、独りよがりの悟だ。それが、読む人に勇気や感動や笑いを提供できるのか。新しい発想や夢を人に与えることができるのか」
「……」
「干からびた話をする。感傷的な話をする。病気になって、余命がない人のようだ。ワシ達だって、目を爛々と輝かせたって悪くない。まだ書く事で、自分と闘っていないのではないか」
「そう…思う。大作家にはなれない」
「書きたいと思う人は多勢いるが、書く事を投げ出す。自分は、大作家だと自惚れて書けばいい」
「そう簡単には乗らない。分かった振りもできない。自分に対して、納得もできない。もし許されるなら、今の社会に対する不満を書きたい。
今の社会は、『不当な他殺時代』だと思っている。
誰もが誰かを殺している事に鈍感になっている。力で抑えつけられ、心が解き放されていない。従順で隷属的な生き方になっていると思う」
「それを書けばいいじゃないか」
「僕に書けると思うか」
「わからんが、面白いと思う。説ちゃんは、直感で出鱈目に楽しんで書いていけば、小説になるよ」
「仙ちゃんは、言う事がうまいからな。後で『アイツは俺の出任せに乗ったよ』なんて、笑わないだろうな」
「疑い深いヤツだ」
「舞台の上に乗るのは、僕だもんな。まあ今日は、元気が出たから許してやるか」
「その意見に賛成」
「ハハハ・・・・」
「ハハハ・・・」
「ただいまー。あれ、仙吉さん珍しいじゃない。元気そうだわね。あなた、仙吉さんが来ると分かっていたなら、言ってくれれば良かったのに。すいませんねー、なんのお構いもできなくて」
「いやいや、お構いなく」
「なんだ、お前、今日は娘の所に泊まるんじゃあなかったのか」
「それが、孫のお守りは疲れるのよ。やっぱり、ウチが一番いい」
「ふーん。やっぱり、僕が一番いい」
「んーん。なに」
「呼んでみただけさ」
「なんだ、もっと、いいこと、いいん」
「説ちゃん、仲の良いことで…」
「それが最近、『下手糞な小説なんか書かないで、早く寝りん』と、うるさいんだよ」
「そう、仙吉さん、この人は夜中から朝まで書いてて、昼間に寝てるんだから。それなら、昼間に書けばいいのにね」
「お前が話しかけてきて、邪魔するからだよ」
「ね、すぐ他人のせいにする。仙吉さんも気をつけた方がいいわよ。ウチの人、書けないのを直ぐに他人のせいにするんだから。逃げるんじゃあないよ」
「………」
〈付録〉
題『ストレスと不満』
不満は 多弁に話すアナタを 不幸にするだけ
俺に その不幸を 撒き散らしたいのか
俺より アナタに ストレスが溜まるだけ
どうせ 完璧なヤツなど いないのだから
そんなに 怖い顔を しないでおくれ
えらそうに あなただって、そうじゃない
(恐妻家の説吉)
果樹園第13号 2009年9月15日発刊
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