今日も他人事

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2025年07月13日
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カテゴリ: アニメ
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地上波放送された記念に再掲。これでネタバレ云々とか言われる筋合いないやろ……



***以下は2023-12-29に公開した内容の再掲です。ネタバレを含みます***



実家へのお土産買いに、川崎に寄ったついでにチネチッタで見てきました。

いやぁ、人たくさん居ましたねえ~前評判通り、女性多いなと思う反面、ちらほら子供連れがいて「あれ、これ、子供見ていい奴だっけ……」って別の意味で不安になったり。まぁ、いいか。

ま、そんなわけで、見てきました。『ゲゲゲ』。



全体的には、非常に良かったです。

私の知っている原作の出自シーンからは改変されちゃってますけども、鬼太郎の前日譚として見ると、これはこれで違和感なく受け入れられますし、アニメ映画としてもクオリティが高くて、非常に出来が良かったです。前半はサスペンスホラー、中盤以降はスーパーアクション、後半はモンスターパニックから現代に時間軸が結びついて〆って言う構成も素晴らしい。私の大好きな『妖魔夜行TRPG』とか『クロウリングケイオス』のシナリオのお手本のような作品だと思います。

個人的に、一番良かったのは演出面ですね。



特に前半のホラー感が絶妙で、さっきまで居た筈の人が次のカットでは急にいなくなってたり、その癖、誰かに物陰から見られているような不吉な感じがあったり。水木の動きを、周囲の人間達が目だけでじーっと無表情に追うシーンとかも、ゾクゾク来ました。全体的に懐かしの昭和角川ホラー風といいますか、そこはかとなく『金田一耕助』シリーズっぽいんですよね。哭倉村は『八つ墓村』を、龍賀一族は『犬神家の一族』のオマージュなのかな、という気も。後、 権力者の狒々爺が自分の娘を孕ませた挙句、さらに孫娘にまで手を付ける





その上で、それを鬼太郎の世界観でどう表現するか、鬼太郎の出自とどう絡めるか、とても練られたお話だったのかな、という印象です。勿論、それ以外の部分も良くて、昭和の闇といいますか、戦争のトラウマと、戦後のモーレツ社員と、田舎の古い因習と、色んなものが混ざり合って、どろどろした中で翻弄された人々の欲望や苦悩が積りに積もった結果、悲劇を生んで、ついに全てを巻き込んで大事件に発展してしまう、というお話。その中で、兵隊上がりの水木と、生き別れの妻を探して流浪中のゲゲ郎(目玉のおやじ)が出会って、友情を結びつつ、事件に立ち向かっていくというのが大筋の流れです。




特に人の闇の部分に焦点をしっかり向けてるのは好印象で、勿論、戦争による被害も語られてるんですけど、それだけじゃなくて、本作では「 戦争があろうとなかろうと、そもそも、人間って残酷だよね。悪いこと一杯してるよね」 って突き付けてるよなって。「戦争は悪いけど、なんでもかんでも戦争のせいにばっかりしてんじゃないよ」と。

「いや、あれは、龍賀一族が悪いから。普通の人間が悪い訳じゃないから」って言い逃れは出来るんですけど、それって無意味なんですよ。だって、私達の生きている社会も同じようなものだから。家畜を繁殖させて、育ったら絞めてばらして出荷して、私達はそれを買って、手を穢すことも汚いものに目を向ける必要もなく、美味しいご飯を食べて過ごしてるわけです。それって、龍賀一族が化け物(幽霊族)に対してやってたことと何か違いますか、って話。

何も違わないんですよ。強いて言うなら、幽霊族は人間に容姿が近いし、人間の言葉を喋れるという違いがあるだけでね。今回、たまたま幽霊族が人間社会の犠牲にされてたって話なんですけども、でも、家畜全般に言えることだよね、それって。『ミノタウロスの皿』みたいなもん。

じゃあ、それを辞めるべきかと言われたら、私は『NO』と言います。

だって、美味しいもの食べたいじゃん?
健康でいたいじゃん?
幸せになりたいじゃん?

結局、それで人間社会って成り立っちゃってる訳ですよ。自分達の中で「人間」を定めて、「人間の幸福」の為に、「人間以外」に犠牲になってもらいましょうって。

でも、それって平等じゃないよね。悪いことだよね。決して、褒められたことじゃないよね。人間以外からしたら、何勝手なこと言ってんだ、ふざけんじゃねえやって話。

『国が助けてくれないから、戦争の犠牲者である善良な市民である私達が力を合わせて困難に立ち向かおう』 みたいな綺麗事、言ってんじゃねえよ。目を覚ませよ。まず、そこを自覚して、善良でも無辜でもないことを認めて、その上で、ごめんなさい、しながら、それでも汚らしく生きていくしかないんだ、と開き直って見せろやって話。いつまでもガキみたいに善い子ぶってんじゃねえ。

ゲゲ郎だってね、人間達の馬鹿さ加減に付き合ってやる義理なんて本来無い訳ですよ。自分達が受けてきた仕打ちを考えたら。実際、人間である水木の方が、そういう考えでしたし。



でも、あそこでゲゲ郎が犠牲になってくれた。それは、人間(私達)のためじゃないんです。これから生まれて来る息子(鬼太郎)のため、ひいては愛する奥さんのためなんですよね。それがなかったら、ゲゲ郎だって付き合ってくれてなかったと思いますよ。そして、あの世界の日本は滅びていたでしょうね。自分達の撒いた種で。皮肉な話ですが。



……私、ラストで水木が 生まれたばかりの鬼太郎を殺そうと思った のって、割と理解できるんですよ。あの時、水木は直観的に、「この子は、人間に害を為す存在になるんじゃないか」って恐怖を覚えたんじゃないかって。幽霊族って結局、全員、人間のせいで絶滅寸前にされちゃったわけで、末裔である鬼太郎が人間に対する復讐を考えたっておかしくない訳ですよ。「それなら、いっそ……」って。

でも、 殺せなかった。なんで殺せなかったかといえば、ゲゲ郎の子供だからってのもあると思うんですけど、あそこで将来を考えて殺しちゃったら、 それって「大義の為」って嘯いて水木達に特攻を命じたクソ参謀とか、大勢の人間や幽霊族を食い物にしてきた龍賀時貞や乙米と同じ畜生に堕ちちゃうから、だと思うんです。だから、 殺せなかった。

で、それを 目玉のおやじとなったゲゲ郎が草場の影から、じっと見つめるっ ていうね。いや、演出、上手いなと思います、本当。


改めて見直したら、事件後の水木、記憶失ってたわ! 上の考察は全部、見当違い(苦笑)

……でも、失われた記憶の隅に残っていたゲゲ郎の姿がちらついて、鬼太郎殺害を踏み留まる展開はエモイぞ。 ユウジョウ!  d(--




べた褒めしてしまったので、個人的に、ちょっと引っかかった点も。

1つは、後半のグロ描写がちょっと過剰気味かな、と。



でも、後半は既に相手の思惑とか、明確なエネミー(凶骨)とか、色々種明かし済みでアクションシーンに入っちゃってて、寧ろ、そこでグロまでやっちゃうと過剰だなって。落下してきたパイプに貫かれて、目玉がパイプから飛び出てきて、血がブシュー!とか、なんかB級映画臭が凄くて、ちょっと苦笑しちゃいました。もうええって。

もう1つは、時貞翁ですね。終盤で、 孫の体を奪って復活してから の言動が三下過ぎて、ちょっとゲンナリ。

いやね、あの爺、人間側だと、劇中最高クラスの天才っぽいんですよ。本人も自慢してましたけど、 「一代で裏陰陽師達と手を結び、幽霊族を捕まえて、孤島に縛り付けて、そこから血を吸い出して、拉致してきた人達に注入して、そこから薬物化する技術を確立し、それを政府と軍部に売り込み、日清および日露戦争の勝利の立役者になった上で、しかも、敗戦後も莫大な富とシステムを維持し続けている上に、幽霊族を縛る結界の維持も担当」 っていうやってることが無茶苦茶過ぎるわ、この人って言うレベル。そりゃ、 「全く、最近の若いもんは!わしが、まだまだ、しっかりせんと!」 って言いたくもなるよ(苦笑

なのにねー、なんかもー、言動が痛々しくてねー……そりゃね、人格的には擁護する余地もなく最悪だと思いますけど、あそこまで低俗な言動させる必要はないでしょうよ、と。 「見て―!わしカスっぷすりを見てー!」 と言わんばかりで、ヘイト役をやらせるにしても、ちょっと露骨過ぎたかなぁ、と。

あれかな? 若くて瑞々しい体 をゲットした影響で、ちょっとハイって奴になっちゃってたのかな?(^^;

近親姦 もね、「優秀な血統を保持するため。ひいては大義のため」とかそういう キチガイ 理屈でやってるんだろうなと思うし、自分達の行いが正しいと信じてやってる分だけよりおぞましいよな、と思うんですけど、終盤の時貞翁の言動がアレ過ぎて、「……これ、単にジジイがエロボケなだけでは?」って思えちゃうんですよね。それだと、大義とかなんだって言ってたのも「所詮、自分の欲望を隠すための飾りか」って話に落ちちゃう。それでええんかなぁって。

まぁ、勿論、時貞翁の行為、言動は間違いなく悪なんですが、ただ、彼が作り上げた『M』のおかげで死なずに済んだ人、病から救われた人とかは間違いなくいた筈なんですよ。でなきゃ、あそこまで流通して、莫大な富を築けてた訳がないので。

でも、劇中ではその「功」の部分には一切触れてなくて、「罪」の部分ばっかり触れてるんですよね。それはお話の都合上、仕方ないとは思うんですが、ちょっとフェアじゃなくね?とは思いました。

何かを叩くなら、それの両面を見た(見せた)上でじゃないと、アンフェアだと思うんですよね。私。まぁ、それ言い出すと、何も書けなくなっちゃうんですが……




……これは、if の話ですが、戦中、特攻した水木が生き延びれた理由が、実は「M」を投与されたからだとしたら?

自分が、ゲゲ郎の奥さんから吸い出された血のおかげで、今ここに存在していられるとしたら?

それでも、彼は、時貞翁の行いを否定することができたのでしょうか?どうなんでしょうねぇ……。



さて、明日は実家です。今年も一年、お疲れさまでした(--










※2024年10月13日追記 『真正版』見てきました



10ヵ月振りぐらいの再試聴だけど、むっちゃ、楽しかったー。

二回目になると細かい気づきが色々あるね。冒頭に記者が落下した場所がラスダン跡地で、なんか喋ってた蹴鞠みたいなのが時貞翁の生れの果て、とか。

あと、沙代ちゃんの 「私を選んで! 助けて!! 解放して!!!」 の全力投球っぷりが印象的でしたね。でも、あの娘には、それを言う資格あるよ。それだけの目にあってきたんだから……。




……というか、沙代自身はやれることやったよね。水木に助けを求めて、ちゃんと協力もして、最後まで自分が救われる為の努力を欠かさなかった。

終盤、「あなたも私を~」のところで、水木の目逸らしさえなければ、ギリ踏み留まれたかもしれない。 でも、そうはならなかった、ならなかったんだよ。だから───この話はここでお終いなんだ。

出来れば、彼女が生き続けたルートも見てみたかったなぁ……さよなら、沙代ちゃん。安らかに。






これは常々思うことだけど、作劇において重要な点として、 制作側がキャラに対して、どこまで残酷になれるか、 というのは大きいと思う。

自分達が一生懸命、考えてこしらえたキャラを、どこまで窮地に追い込めるか。
どこまで酷い目に遭わせられるか。どこまで苦しめられるか。
どこまで辱められるか、奪い取れるか、貶められるか……。

その辺、ある種の割り切りというか思い切りが悪いと、結局、話自体のインパクトというか、盛り上がりに欠けてしまう気がするんですよね。

でも、それは暴力の賛美でもなければ、ましてや、悪意の発露でもない。悲劇とは、作劇において、単純ながらも確実かつ速効性のある強力なスパイスなのだから。

少なくとも、誰一人不幸にならないで始まって終わる物語に、私は金を払いたいとは思わないね。 無料なら見るけど。

そういう観点で行くと、本作は実に不幸に満ち満ちていて、本当、容赦がない。

その上で構成、演出、作画、台詞運び全てが素晴らしい作品。本当、大好き。90点あげちゃう。特典次第ですがブルーレイも買っちゃいたいぐらい。

……でも、やっぱりね、時貞翁の言動は過剰気味だと思うの、私(苦笑)









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最終更新日  2025年07月22日 22時40分43秒
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