日本戦略研究所

2005年05月31日
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いよー、小泉純一郎。なかなかやるじゃないですか。



「動く歴史実感させた2本の記事」  学習院大学名誉教授 藤竹 暁  【産経新聞 2005/05/29】

 新聞ニュースは出来事を知らせるだけでは足りない。出来事を通して、ぼんやりとした未来を照らす一筋の光を読者に提供しなければならない。

 五月十八日の『湯浅博の世界読解 「現代を鑑(かがみ)」に歴史を裁くのか』は、動いている歴史を実感させた。九日にモスクワで開かれた対独戦勝60周年の記念式典は、第二次大戦の勝ち組であるブッシュ、プーチン米露両大統領を中心に、英仏中が中央を占め、日本、ドイツ、イタリアの首脳は旧敵国として中央から外れた席次が与えられた。この事実は、すでにニュースで私も知っていた。

 ■小泉パフォーマンスの意味
 湯浅記者は、戦勝国と敗戦国の区分けがあまりに露骨で、どこが「和解」なのかと書いた後で、次のような重要な指摘をしている。「この区分けを崩した政治家がいた。首脳たちが横一線で歩き出したとたんに、隅っこからスーッと真ん中に寄ってきて、ブッシュ大統領と仲良さそうに肩を抱き合った。むかし敵国、いま同盟国の小泉純一郎首相である」

 小泉首相のパフォーマンスはとかく中身のない軽薄な演技として報道されがちである。だがこのときの小泉首相は違っていた。「小泉首相にすれば、現在の盟友、ブッシュ氏と親交を示す最高の見せ場だったに違いない。しかし、目の前を素通りされた中国の胡錦濤主席からみると、戦勝国クラブの晴れの舞台を崩された思いが強かろう」

 小泉-ブッシュの抱擁シーンは、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙などいくつかの米欧紙の一面を飾った、と湯浅記者は書いた。「この一枚の写真によって、戦勝国・中国の敗戦国・日本に対する優越が覆されてしまったのだ」

 この場面は、日本のメディアが対独戦勝60周年記念式典を報道するとしたら、目玉になるものだ。反日デモなど中国の一連の対日強硬姿勢の裏側を読む材料として重要である。二十三日、中国の呉儀副首相が小泉首相との会談を突然取りやめ、帰国した事件で、中国が外交ルールを無視してまで日本に強い態度を見せたくなるのも、それだけ中国の国際的立場が弱くなってきているからではないか。


 ■日韓外交の裏側に潜む事実

 中国だけではない。韓国もいらいらしている。二十一日の『緯度経度 日韓外交の落としどころ』でソウルから黒田勝弘記者が報じている。自民の武部勤、公明の冬柴鉄三両幹事長が訪韓した際、盧武鉉大統領表敬の日程が直前まで決まらなかった。消息筋によると、「すぐにOKを出すのもしゃくだから日本側をじらした」のだそうだ。黒田記者は「事実とすると面白い。日本に対し、ことさら胸を張ってどこか“オッホーン”という感じがする。まるで李朝時代の外交風景である」。そして会見で小泉首相の親書を手渡した際、大統領は記者団が見ているなかで「親書の内容は?」と質問した。韓国のマスコミも、「外交的に失礼ではないか」と批判していたという。

 湯浅、黒田両記者の記事はともにニュースの裏側に潜む事実を一週間以上の時間が過ぎた後で報告している。一見すると事件の裏話を思い出しているように見えるが、実はそのとき現場で動いていた歴史を報告しているのである。しかし、読者はその日その日のニュースを追いかけるのに精いっぱいで、事件の現場でどんなドラマが進行し歴史がわずかばかりでも動いた様子をフォローできないでいる。

 高度情報社会における新聞の役割は、着実に歴史を動かすに違いない事実を読者に提供するところにある。それは報道されなかったり、あまり注目されなかった事実を掘り起こし、出来事の進行を追いかけながら、ストーリーにする記事である。日本の将来は、こうした事実を積み重ねることから見えてくるに違いない。湯浅、黒田両記者の記事が光る理由である。


【湯浅博の世界読解】「現代を鑑」に歴史を裁くのか 【産経新聞 2005/05/21】

 「追悼と和解」を掲げながら、「優劣と誤解」を振りまくバカげた席順であったと思う。モスクワで開かれた今月九日の対独戦勝60周年の記念式典の風景である。

 第二次大戦の勝ち組であるブッシュ、プーチン米露両大統領を中心に、英仏中が脇を固める形で「追悼」が演出された。これら5カ国は、国連安保理常任理事国(P5)の戦勝国クラブとしていまにつながる。

 日本は戦勝P5の横にドイツ、イタリアの首脳とともに、旧敵国として中央から外れた席次が与えられた。戦勝国と敗戦国の区分けがあまりに露骨で、はて、どこが「和解」だったのか。

 ところが、この区分けを崩した政治家がいた。首脳たちが横一線で歩き出したとたんに、隅っこからスーッと真ん中に寄ってきて、ブッシュ大統領と仲良さそうに肩を抱き合った。むかし敵国、いま同盟国の小泉純一郎首相である。

 小泉首相にすれば、現在の盟友、ブッシュ氏と親交を示す最高の見せ場だったに違いない。しかし、目の前を素通りされた中国の胡錦濤主席からみると、戦勝国クラブの晴れの舞台を崩された思いが強かろう。

 先ごろは「反日デモ」の利用で、日本の常任理事国入り阻止という腹黒い意図を見抜かれたばかりだ。胡氏には、再度「歴史カード」が使えるこの式典にかける期待が大きかったと推察する。

 ところが、小泉-ブッシュの抱擁シーンが、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙などいくつかの米欧紙の一面を飾った。この一枚の写真によって、戦勝国・中国の敗戦国・日本に対する優越が覆されてしまったのだ。

 もともと、ロシアの近隣国にとって戦勝記念日は、ナチの暴虐からソ連の圧政に入れかわった日に過ぎない。チェコのハベル前大統領ら欧米の知識人が批判の公開書簡を出し、バルト3カ国のうち2カ国の首脳がモスクワの「祝賀」をボイコットした。

 だから、ブッシュ大統領はラトビアの首都リガの演説で、「中東欧の多くにとって、勝利は別の帝国による鉄の支配をもたらした」と痛烈に戦後ヤルタ体制を批判していた。クレムリンの反発は百も承知で、遠雷のように「歴史の真実」をとどろかした。

 大国主義復活を夢見るプーチン氏にも痛手だが、現役の共産主義の指導者、胡錦濤主席にはもっとこたえた。

 胡氏はプーチン氏と会談したさい、大戦末期にソ連軍が日ソ中立条約を破って、旧満州に侵攻したことを「ソ連の貢献」と賛美した。

 中国はかつて、ソ連の対日参戦や北方領土の占領に批判的な立場をとったことがあったはず。現実の政治の流れしだいで、変幻自在に主張を変えるということだろう。

 そうしてみると、中国のいう「歴史を鑑(かがみ)」にするとの外交原則の実相は、「現代を鑑」に歴史を裁こうとする危うい立場なのではないか。

 小泉首相には、ブッシュ流の「遠雷」演説の芸当ができない。北方四島はソ連が中立条約を一方的に破棄して不法占拠をしたままなのだ。60年前の日本に対する暴虐ぶりを国際的にあぶりだす格好の機会だったはずである。

 いまはただ、小泉首相のパフォーマンスが、このマイナス面をけ散らす効果があったことを期待せずにはいられない。 (東京特派員)





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最終更新日  2005年05月31日 20時25分27秒


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