おさるの日記

おさるの日記

解説



フランスの詩人,小説家ユゴーの長編小説。 1862 年出版。貧しさと飢えに苦しむ甥たちを救おうとしてパンを盗んだために, 19 年間も獄中生活を送ったジャン・バルジャンは,社会に対する激しい憎しみを抱いて出獄する。だが,やがて神のようなミリエル司教の慈愛に触れて愛の精神にめざめ,それ以後不幸な人々を救う人類愛の具現者となる。そして哀れな女の一人娘コゼットを養女にし,青年マリウスと幸せな結婚をさせて死んでいく。恵まれぬ人々に対するこうしたキリスト教的な愛と並んで,社会改革の強い意志も認められる。また《レ・ミゼラブル》は,作者が以前から胸に抱いていた,人類全体が闇から光へ上昇するという進歩の神話を,ジャン・バルジャンという個人の生涯を借りて表現しようとした作品でもある。 1845 年から 48 年にかけて初稿が書かれ,長い間中断されたのち 62 年に完成された。とくに写実主義の作家たちからは荒唐無稽だとして批判されたが,近代における神話の創造をめざした作品であり,全編を満たすたくましい想像力の働きが高く評価されている。各国語に翻訳され,世界文学の古典として愛読されてきた。日本でも,1902‐03 年に黒岩涙香が《噫無情 (ああむじよう) 》と題して翻案し大好評を博して以来,広く読者に読み継がれている。明治時代には,社会改革の理想を追求した作品として衆人の関心を集め,以後も何度となく邦訳されている。映画化やテレビドラマ化も試みられた。

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