ココ の ブログ

頭の痛いココ(その2)

頭の痛いココ(その2)

 回覧板が廻って以来、住宅団地では野良猫の話からペットの飼い方の問題に話が移って行った。中でも犬の散歩での糞を処理せず、平気で放ったらかしたまま行く人への苦情の方が猫問題よりも多かった。ビニール袋にそれらしき用具を入れて持ってはいるものの処理をせず、ポーズだけの人が居るのも問題になった。「野良猫は、猫を捨てる人が居るから生じる問題で、マナーの問題です。命の大切さを考えれば野良猫であっても餌を与えなければ可哀想ではありませんか」と言うのが餌をやる人の主張だ。しかし、冷静な人は「腹を空かしているのは可哀想だが、餌をやれば生き延び、避妊手術をしていないから自然に増えて行く。そうなれば益々可哀想ではないか。中途半端な同情は禁物だ」と言い放つ。

NORA-1 コソコソと逃げる野良猫ノラ。

 「野良猫は餌が無ければ死んでしまいます。それは可哀想ですが、餌を与えなければ増えはしません。ですから、その方が道義的にはかなっているではありませんか」とか「犬に対しては法律で取り締まれるが、猫はそういう訳にはいかない。まさか勝手に屋根に上がってまで猫を捕まえる訳には行かない」と様々な意見が出された。要するにペットを飼う人のマナーの問題だけに、如何に徹底させるかが大きなテーマになるのだった。様々な人々が住む大きな住宅団地には主義主張の違う人々が大勢居る。それをまとめるだけでも大変である。幾ら正論や常識論を言っても、価値観の違う人には通じないのだ。その後、多くの人々の意見が自治会に寄せられたものの、その具体的な妙案が出ないまま、時間が経って忘れられて行った。

COCO-504 ガーデンテーブルで寝そべるココ。

 だから、野良猫の餌問題はそのまま進展せず、教授夫人のテンコさんは気が向けば餌を持って出かけている。ノラはそれが楽しみでテンコさんにまとわりつく。テンコさんにすればノラは哀れだが自分になつくから可愛い。幾ら人々が黒い野良猫と蔑んだり、他に野良猫が増えようが一向に気にせず平気なものだ。自分は善行を施しているのだという自尊心に酔ってしまっている。ノラがテンコさんに気に入られようとして喉をゴロゴロ鳴らしながら「実はテンコさん、自治会長宅のココが、威張って、あちこちに糞をして廻って近所で問題になっているそうだヨ。それに、あの自治会長はテンコさんの悪口を言っていたヨ。この間もお隣の奥さんに話している処に出くわして、水を掛けられちゃった」と作り話をささやく。

COCO-502 出窓の花瓶の水を飲もうとしているココ。

 テンコさんは熱心に耳を傾けてから「じゃあ、今度、自治会長さんに会ったら言っておくワ。私の悪口なんか陰でコソコソ言わないで私の目の前で言いなさいとネ。あんな下らない回覧板を廻すぐらいなら自分の飼い猫の躾をチャンとしなさいってこともネ!」と単純に信じたのか興奮して言った。ノラはフフフと内心ほくそ笑んだ。「これで、あの憎らしいココと偉そうにしている自治会長に一泡吹かせることが出来る。今度はもっと良い手を考えるとして、テンコさんと一緒に居ると不思議に知恵が回ってくる。やっぱり、腹が減っては戦が出来ぬというから、食べるべきものは食べないと駄目だな。今度、野良猫仲間を集めて何か良い方法はないか話し合ってみよう。あのカン助の奴にも一泡吹かしてやらねば」

COCO-505 去年、捻挫をして槇の下で養生していたココ。

 そんな事があったとは露知らず、ココは何時ものように悠然と屋根の上を散歩をしていた。隣家のアメリカン・ショートヘアのモモが、同居しているパピヨンやミニ・ダックスと一緒に庭で遊んでいるのが観える。「まさか、こんな上から見下ろされているとは気がつかないようネ。高い処に登れる腕前は天下広しと言えど私ぐらいなものヨ、気持ち良いワ」ココは独り言を言いながら更に屋根を越え、裏の空家の庭に降り立った。すると、見慣れない黒い奴が垣根の隅っこの方に居るではないか。ジッと見るとノラだった。こちらに気づかずに道路の方を見て居る。「私の縄張りに勝手に入って来るとは図々しいわネ。そっと後ろから近づいて脅かしてやろう」とココは物音を立てずに近づいて行った。

COCO-501 飾り棚から見下渡すココ。

 「コラッ!!勝手に入って来て、横着な!フーッ!出ていけ!!」突然、後ろから怒鳴られて「ギャッ!」と叫んでノラは飛び上がり、驚いて走り去った。そして、道路の向こう側に行って、やっと振り返ったノラは、今のは一体誰だったのだろうと確かめようとしている。そしてココだと分かると悔しそうに睨み返し「フン、今に、テンコさんから、お前の主人にクレームが行くから、楽しみに待っていな!」と捨て台詞を言って去って行った。「テンコさん?何のことか知ら?」とココは考えながら自宅に戻った。そして書斎のデスクに居るご主人のマイケルに今の出来事をどう伝えたものかと飾り棚の上に乗って考えた。マイケルは何時ものようにパソコンで何かをしている。(つづく)



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