ココ　のブログ

第２のガーデニングの季節（５）

第２のガーデニングの季節（５）

　秋風は人々を詩人にする。肌寒い空気がピンと身体を引きしめ、これからやってくる冬の寒さに対応すべく厳しい社会状況に対決するように気持ちも夏の緩んだ状態から張り詰めたものに切り替わる。うかうかとしてると蟻とキリギリスの二の舞を踏む事に成り兼ねないという不安がそうさせるのだ。誰も慰めも救ってもくれない現実の孤独感が一層心を不安にし、枯葉が舞う風景をロマンチックに観た青春時代を回顧しつつ夢よもう一度と想う人も居れば、厳しい現実生活に惰性だけで生きている人も居る。秋は様々な立場の人を人恋しくさせるのだ。左党は仲間を募って居酒屋にしけこむだろうし、甘党はパティシエの店にショート・ケーキを買い求め茶会を開きたがるだろう。そういう行動力の無い老人は近所の茶飲み仲間と日向ぼっこをしながら昔を思い起こす。そう言えば自宅前で近所の１００歳になる老女と出逢った。

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　散歩の途中だった。「お散歩ですか。何時もお元気で、何よりですネ」と声を掛ければ「いやいや、もうあきませんワ。そろそろお迎えが来て欲しいです」「何をおっしゃる（ウサギさん、では無かったと内心軽口を叩かないよう注意し）、耳も達者で、顔色も良いし、まだまだ大丈夫ですヨ。次の目標は１０８歳ですネ」「ホホ・・・、そんな貴方・・・」と彼女は笑いながら散歩の続きをしに去って行った。その事を台所に居た妻に言うと「１０８歳だなんて・・・あなた変わってるワ。普通そういう事は言わないものヨ」と窘められてしまった。「何で？１００歳の次は１０８歳とキリが良いじゃないか。百八つの煩悩を越えてお目出度いもの」と言っても耳をかさず「それにしても、あのお婆さん、元気ネ。負けそう」と風邪気味の彼女はため息をつく。今の時代、６０代の我々よりも超高齢者の方が元気だ。　

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　超高齢者に影響された訳でも無いが、その足で天気もよくなったのでホームセンターへ煉瓦を買いに出掛けた。取りあえず６０枚買って、それをトランクに入れるとずっしりと車が沈む感じだ。煉瓦で安定した車を走行していると人間一人がトランクに入ったのと同じになる。更にゴルフ・バッグも入れっ放しだから尚の事重い。煉瓦を４枚づつ持って庭へ２５回運び、芝生横に敷き込んで行った。煉瓦が歩行でズレ込まない様に太めの針金を２０ｃｍ程に切った楔で止めて行った。６０枚もあれば充分だと想ったのが足りなくなった。已む無く翌日更に５０枚を買い増しした。それでやっと庭の通路に全部敷き込む事が出来た。仕上げに芝生の目土で目地を埋め、箒で掃いて作業は完了した。新しい通路は鮮やかに庭の緑に浮き上がった。其処を先ず歩き始めたのがココだった。何でも物珍しいのだ。自分の庭の様に想っている処が可愛い。

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　煉瓦を敷いただけで夏枯れだった庭が生き返った。芝生も緑が強調され、サツキの緑も高野槇の緑もシマトネリコの緑もグラデーションを成して庭の奥行きを演出してくれる。建築家にとって作庭やガーデニングは言わばプロの手間仕事だから上手く出来て当たり前なのだが、一休みして何処か手直しする処は無いかとガーデン・チェアに座って眺める。若い頃なら此処でパイプ煙草をくゆらせ紫の煙を棚引かせる処だったと連想する。タバコが好きと言うよりもスタイリストとしてポーズを取って居たのだ。その頃、ジャン・ギャバンやアラン・ドロンが流行っていた。ドロンは無理にしてもギャバンには似ていたと自負して街中をベレーを被りパイプを咥え得意になっていた。生意気な若者に観えていたかも知れない。それでバーのカウンターに止まってスコッチの水割りを飲んでいた。ロックにするには未だ飲み慣れていない頃だった。

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　その頃から次第に大酒飲みになって行った。今では一生分の酒を飲んでしまって、お蔭で痛風や糖尿病の薬を飲む羽目になってしまった。それでもワインは毎日飲んでいる。懲りない男だ。それでもボク以上に懲りない面々がゴロゴロ居る。それは政治家であり官僚連中だ。彼等は税金で喰っているから増税即ベースアップとなる。将来の安定収入に観えるから国民から何とか騙してでも増税をしたがる。こういう連中がそれなりの仕事をしてくれていたなら国民は決して税金ドロボーとは呼ばず、お上とか先生と読んで尊敬するのだ。地に落ちた彼等は税金ドロボーとしか言いようが無い。何故尊敬される人間に成りたくないのだろうか。不思議だ。つまりは馬鹿にされている国民が本当の馬鹿だからだろうか。そういう連中を選挙で選んでいるからなのだろうか。野党から与党に替わった途端、ガラリと態度を変える。

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　マスコミや国民の前では口でこそ下手に出てはいるが、現実的には横柄になり、そのくせやっている事と言えば具体的な仕事は何もせず増税ばかり言いだす。よくもまあ鉄面皮で恥知らずがノウノウとペラペラと話せるものだと国民は呆れかえり半ば開いた口が塞がらない。最近になってやっと９９％の階層意識で不平不満を言いだす人々が現れる程度だ。不満は次第に広がり国民運動にまでなり世界にも報道される事になるだろう。何故なら日本の不況はアメリカから来たもので、それが世界中を巻き込んで大不況にし、インターネットの呼び掛けに応じて遅まきながら日本にも来たものだからだ。あの物言わずの大人しい日本の国民がいよいよ怒り出した、これは本物だと。ボクは覚めた目で、ガーデニングをしながらその時の来るのをジッと待っている。何せ、歳が歳だ。が、１００歳の元気な老女と比べれば未だ若造だ。ジッとしていて良いのかという忸怩（じくじ）たる想いがし、反省も出て来る。