スリランカの鉢

スリランカの土器

スリランカの鉢

 子供の頃はご飯を食べていると中に小石が混ざっていて歯に当たる、というようなことがときどきあった。未だに農作業が土の上での手作業であった時代のことであろう。最近の日本では機械化が進んでこういうこともなくなったが、スリランカでは今なお仕事はこういう事情のもとにあるのだろうか。この鉢は彼の地で米を研ぐときの鉢だということでスリランカを訪ねた知人が持ち帰ってくれた。米を研ぐとはいってもやきものとしては柔らかい土器だから、水を吸わせて力を加える用途にはむかない。研ぐと言うよりはむしろ、小石を沈ませて選別するか、あるいは米を沈ませて籾殻などのような浮かぶものを選別するかの用途ではないだろうかと思われる。
 こういう農法が残る土地にはそれだけの農業を支える誠実な暮らしがある。そういう暮らしの日常には伴侶としての確かな工芸品がある。工芸が趣味的なものであるということはすでに暮らしが本筋の工芸を受け止める力を失っているということである。
 この土器について詳しいことはわからないが、おそらくは今も世界各地で行われているように野天に積み上げられて、藁や枯れ草で覆い込んで焼かれたことだろう。かたちは丸い型の上で叩いて作られたのかもしれない。誰もが毎日用いる壊れやすい実用品であるから、仕事はさぞ盛んであることと思われる。柔らかい土の上を走らせた用途のための櫛目紋様が咲いている。穏やかな炎が土を赤く染めている。かくも自然な仕事から生まれた見事な大輪がこの鉢である。

2000年スリランカの産。直径210ミリ、高さ85ミリ。
                           (02.12.9)

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