日常・・・

日常・・・

第一章 【リッカー離れ】



「キャキャ!」
2010年7月、アメリカ合衆国の明るい都市で有名な地区、マイアミ・・・今日も多くの人で賑わっていた。
しかしマイアミのダウンタウンやらナイトクラブ外やらから少し離れると、静かな部分というのもあるわけだ。
何もない空き地・・・その中心にひっそりと建つ二階建てのビル・・・いかにも怪しい雰囲気だ。
その廃墟と化したビルに入っていく一団があった。
「知ってるか?ここ・・・幽霊スポットで有名なんだよ」
「お前な~、二十三にもなって幽霊?馬鹿だな!ははは」
「大体こんな真昼間に幽霊が活動するかっての!」
「それに俺たちが入って行ったら幽霊も出てくる気が失せるっての」
四人の若者のグループは、夏のある日、このビルに入っていった。
「うわ~何もないぜ」
「エスカレータだ・・・下か上か・・・」
「地下か!面白そうだ!」
そういうと、地価に行くエスカレータに乗り込んだ。
まぁ、止まっているので、階段のように歩いていくしかないのだが。
一同は地下に来た。
しかし日が差し込まないので、ほとんど何も見えない。
「お前、ぶつかるなよ」
「お前だろー、ぶつかってきたの」
「何も前が見えないぜ・・・」
「ここなら、女連れこんでさ、やれるよな」
すると女を連れ込みなんともな行為を働こうとした男が何かを見つけた。
「扉だ・・・」
一同は走った。
「凄い頑丈そうな扉だな・・・」
扉の見かけはかなり分厚くて、下から上に開くシャッターのようになっている。
脇には暗証番号を入力するためのものがある。
「おい、押してみっか」
「馬鹿、それより暑いぜ、戻ろう」
「お前、ここまで来た意味がなくなるだろ。暗証番号を押す」
そういって暗証番号入力ボタンを押した。
しかしそのとき、扉の一部が銃口になり、一気に弾が発射されて、一瞬にして若者達は殺された・・・

第一章【リッカー離れ】

「幸せ~幸せ~・・・何もないと幸せ~」
特殊部隊本部、それはオフィスのような感じで高層ビルである。
その一室に「対生物部」という部隊、部があった。
これは民間に現れる野生生物や脅威の生物に対して派遣される人材がいる部である。
何故こんな部が出来たのかというと、西暦2004年と2006年に本土付近のある島で、リッカーという生物が現れて特殊部隊員たちを窮地に追いやった・・・
このような記録が残されているので、それに対する専門を作ろうと創設されたのである。
実際に、2008年に記録には無いがニューヨークにリッカーが出現、それに対し派遣されたこともあるが、それ以降は動物園から逃げ出した
ライオンの捕獲とか山から下りてきた野生犬の保護など、一般の警察で間に合うようなことでしか派遣が無く
ほとんど仕事は無かった。
そんな部で自らのデスクに座って「幸せ~」と歌っているある男がいた。
彼はネイオ・ワーク。記録上では二度、記録に無い2008年を含めるとしたら三度、リッカーとの戦い
から、生き残っている、文字通り英雄的存在である。
彼は「史上最年少特殊部隊入隊」という記録も持っていた。
彼は十六で特殊部隊に入隊して現在は二十五歳である。
二十五で十年目・・・圧倒的スピードである。
「本当に何もないと幸せだな・・・」
ネイオはつぶやいていた。
二年経ったか~・・・ん、待てよ、リッカーとの戦いは二年おきだったな・・・となると今年・・・
そんなことを考えていた。
確かに二年おきにリッカーと戦っている。しかも全て夏だ。
なんか嫌な予感を覚えながらも、偶然という自身の納得で片付いた。
「ネイオ」
彼を呼ぶ声がした。
しかし、彼にとっては平然と過ごせる相手だった。
「なんだ、スコット」
「お前、今日はもう帰るか?」
「ん、あぁ帰ろうかな」
「じゃ、寮まで一緒に帰ろうぜ」
ネイオの話し相手はスコット・アンティリーズ。
彼はリッカーとの戦いを二度やる羽目になった。
年齢は彼の方が年上だが、同期入隊でネイオとも仲がよい。
いわば親友だ。
そんなスコットは同じ部の一員で、デスクがネイオの隣なのである。
スコットは自らのデスクの椅子に腰掛けた。
「はぁ、お前、中佐だろ?二十五で中佐ってありえないよな。俺少佐だぜ?」
「二十七で少佐もありえない気もするけどね」
そんな会話をしていると部屋の扉が開き、黒人系の男が入ってきた。
顔は怖く、筋骨隆々、不機嫌そうだ。
「どうしたんだ、マックスさんよ」
スコットがその黒人系の男に話しかける。
マックスと呼ばれた黒人系の男は無視をして出て行った。
「あいつっておかしいな」
「多分俺がいたから怒って出て行ったんだろうな」
ネイオがつぶやいた。
黒人の男の名はマックス・ハナー。対生物部でもう一人の中佐である。中佐ではあるがリッカーとの戦いはしたことが無く、
歳は三十五。十歳以上歳が離れているネイオが同じ階級ということを未だに認めていない。
ネイオとは仲が悪いのだ。
「マックス・・・あいつのことはよくわからねぇよな」
ネイオはつぶやいた。

数日後、ネイオはデスクに座ってコーヒーを飲みながら新聞に目を通していた。
「ふぅ・・・やっぱり、朝はこれじゃないとね」
「おまえなぁ、そこらのサラリーマンかよ」
すかさずスコットが突っ込みを入れた。
ネイオは突っ込みをもろともせず、社会面を見ていた。
「お前、訓練始まるぞ。今日は若手の指導って・・・」
そこまでスコットが言うと、ネイオは声を出した。
「お」
「なんなんだよ。「お」って」
「これ、不気味じゃねぇか」
ネイオは新聞のある記事を指差しながら、スコットに見せた。
「え~と・・・廃墟と化したビルで若者四人の死体・・・か」
「なんか不気味じゃない?」
「まぁな。でもネイオさんよ、どうせまた"人"による猟奇殺人だぜ。俺達の出る幕無し」
スコットが腕組みをして"人"を強調し笑いながら言った。
「でもな、ここで一つ謎が!」
ネイオが推理番組のナレーションのように、声を張り上げていった。
周りにいる隊員たちが、一斉にネイオの方を見る。
「どうしたんです、ワーク中佐」
「いや、何でもない」
ネイオは一番近くにいる若い隊員に言った。
「お前・・・こっちまで恥ずかしいぞ。で、なぞってなんだ?」
仕切りなおして、ネイオが語りだした。
「廃墟と化しているんだろ?普通人が見つけるか?」
「そいつらみたいにお遊び感覚で入ったんじゃないのか?」
スコットが冷静に返す。
しかし、ネイオは反論した。
「だけど、そんなお遊び感覚の奴だと、普通発見現場の近くにいるだろ?
でも通報者は現場にはいなくて、遺体の二つは袋に入ってたって話だぜ。
そんな親切かつ中途半端なやつがいるか?ミステリーだ、ミステリー」
「馬鹿、それだったら誰かが持ち運んで、そのまま自殺したんじゃないか?」
「自殺したのなら、近くに凶器が落ちてるはずだろ?でも見当たらない。
彼らは撃たれたらしいんだが、死んだ中の一人が持ってたピストルとは弾の大きさが
違ったし、固定銃から発射される大きな銃弾だった・・・らしい」
「はぁ・・・ネイオさんよ。だんだんこんがらがってきたぜ」
スコットは頭を抱える。
「この話は、また今度な」


「そうか・・・そういう常態か・・・」
若者四人の遺体が発見された、廃墟と化したビルの地下の大きな扉の前ではたくさんの警察関係者がいた。
「というか、こんなところがあったんですね」
「全然気付かなかった・・・」
警察関係者は口々に喋っている。
「何処かに砲台見たいのがあるはずだ・・・探せ」
ベテラン刑事は部下に命令した。
マスコミが多い。捜査に集中できなかった。
(ここは・・・どこが所有するビルだ・・・)
ベテラン刑事は見渡した。一階にあがる。
答えはフロントらしきところに書いてあった。
〈ようこそ アローン社へ〉
(アローン社・・・聞いたことはある・・・)
ベテラン刑事は悩んだ。

その頃扉の前では若手の警官が捜査していた。
「見てくれ、これ暗証番号入力機だぜ」
「おい、押すなよ。勝手に触ると・・・」
近くにいる中年警官が止めるが若手警官は好奇心にとらわれ、適当なボタンを押した。
すると、ブザー音が響き、扉の一部が銃口に変化した。
「大変だ!避けろ・・・」
といったものの、近くにいた若手警官や中年警官を含め、半径十メートル以内にいたものは
射殺された。
その音を聞いたベテラン刑事は、エスカレータの上から地下を見た。
その隣でカメラを構えていたTV局の男と顔を見合わせる。
「なんと言うことだ・・・」
「視聴率を奪えるぞ・・・」


スコットは偶然そのカメラからの中継映像をデスクで見ていた。
「た・・・大変だ・・・」
スコットは携帯電話を取り出した。ネイオを選択し、電話をかける。
ネイオは電話に出たらしい。しかし、銃撃の音が聞こえる。
『おい!スコット!電話かけるなよ!今銃撃訓練中なんだから!』
「だったら電話に出るな!またメールするから」
そう言うとスコットは電話を切った。
あいつ、肝心な時にあれだな・・・すると、自らのPCと向き合った。
メールをチェックする。すると、緊急メールがあった。
(ん・・・んんん・・・!)
緊急メールが来ると、ろくでもないことが起こる。
過去の体験から、そう信じ込んでいた。

午後七時、ネイオはようやく訓練を終え、「対生物部」と表示されている扉を開けた。
開けるとスコットが待っていた。
「お、ネイオさんが来た」
スコットが言う。
ネイオは返した。
「何で待ってるんだ?」
「さて、行きますか」
「え、行くって・・・どこに行くんだ?」
ネイオは分からなかった。それをスコットが説明する。
「言いたかないんだけど・・・最高司令官室だ」
「最高司令官室!」
ネイオは文字通り飛び上がった。
「何でまた!」
「メールが着てよ。午後八時に最高司令官室・・・マックスと俺とお前が呼ばれた。
マックスは先に行ったらしい。お前を待ってたんだぞ、俺は。感謝しろよ」
スコットは一人で語っている。
そんなことで歩いていると最高司令官室に着いた。
「あと十五分あるぞ」
「早くきすぎたな」
「おい、そういえばマックスも来るんだろ?居ないじゃんか、先に行ったんだろ」
ネイオはスコットに尋ねた。
「おう、先に行く・・・といって出て行ったんだ。どうせ売店か何処かに行ってるんだろ?」
スコットの推理は当てにならないものである。
軽くネイオは聞き流す。
すると、突然最高司令官室の扉脇に設置されているスピーカーがなった。
『全員揃ったな。では、中に入れ』
声が響くと二人は一斉に身だしなみをチェックしあい、中に入った。
「失礼します!特殊部隊中佐、ネイオ・ワークです!」
「同じく少佐、スコット・アンティリーズです!」
二人はビシッと敬礼をして叫んだ。
目の前の机には最高司令官と・・・マックスの姿があった。
「お前ら、扉の前での行動は全てカメラで監視していたんだぞ。全て見ていた」
マックスが嫌味っぽく言う。
「マックス、黙れ」
マックスの嫌味は最高司令官によって止められた。
最高司令官はランコアではない。
ランコアは二年前のリッカー襲撃時に死亡した。
ネイオはその任務に同行していたため、ランコアの死を間近で確認できたわけである。
その後任の最高司令官は、ソニックという男である。
歳は一説で五十八。厳しそうな目つき。威厳のありそうな顔と態度・・・。
全てが前のランコアを上回っている。
「二人とも、席に着くんだ」
そのソニックが二人を席に着かせる。
二人が席に着くと、ソニックは淡々と語りだした。
「君達はリッカーの襲撃から生き残っている英雄だと聞いている」
「英雄だなんて・・・そんな~」
スコットはでれでれした。
しかし、ソニックの言葉で顔をこわばらす。
「静かに!そのリッカーを造った奴の場所が特定できた・・・」
「何ですって」
ネイオが叫んだ。
「その通りだ。そこは地下にある研究所。あるところからトロッコに乗ってそこへ行くんだ。
マックスに来てもらったのは、マックスにも同行してもらうからだ。
君らを含めて十五人のメンバー達が研究所制圧をする。
研究所の主核施設を破壊するんだ・・・出来るかね?」
そこでネイオは、ようやく自分に言っている事だと気がついた。
「・・・いや、俺達は断りますよ」
「何でかね?そろそろ君もリッカーに対面したくなる頃だろ?君はリッカー離れを・・・」
「何がリッカー離れだ!お前はリッカーの恐ろしさをしらねぇからだ!お前がいけよ・・・」
「黙れ!!」
ソニックは一喝する。
ネイオは黙り込んで、座り込んだ。
「言いすぎだぜ」
小声でスコットが耳打ちをする。
「いいか。私は最大の権力を持つんだ。逆らうな。一ヶ月後の八月十三日、指定する場所に集合するように。分かったな」
静かにソニックは言うと、ネイオとスコットは部屋を出た。
「うざいなぁ!あいつ・・・ランコアより自己中心的でウザイじゃねぇか!」
スコットが帰りの路を歩きながら叫んだ。
「仕方ないよ。決まったことは・・・気に入らないけどね・・・。それにしてもリッカー離れか」
ネイオは「リッカー離れ」という言葉が、妙に脳内残って、しょうがなかった。

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