Crimson Air

Crimson Air

未来章第九部


未来章第九部


「ガァァァァ!!」
悪魔の拳が振り下ろされる
「なるほど・・・」
しかし沙羅はよけようともしなかった
「ガァ!?」
ガキン、という音がして悪魔の拳が沙羅の前で止まった
「その程度の力では私には傷を付けられませんよ」
そして沙羅がその拳を振り払った
「グオォォォォォン」
悪魔が高く吹き飛ばされていた・・・そして高速で落ちてきた
ズガァンという音が辺りに響く


「な、なんて人なんだ・・・」
荒木が言った
「私達とは比べ物にならないわね・・・」
雀先輩もそう言った
「たった一人であんな大きな悪魔を・・・」
かなめが続いてつぶやいた
「しかも簡単に吹き飛ばしてしまいましたね・・・」
京子も続く
「いや・・・いや・・・」
未来はまだ震えていた
「大丈夫だよ未来ちゃん・・・大丈夫だから」
それを未樹がなだめている



「もう少し本気で戦っていただけないでしょうか?」
沙羅が悪魔を見下げて言った
「でないとあなた・・・死んでしまいますよ?」
「オマエハイッタイナンナンダ!!」
「なんなんだと言われましても・・・」
悪魔の問いかけに困ったように答える
「貴方にとっては・・・死神・・・でしょうか」
沙羅は悪魔に向かって言った
「シニガミダト!!」
「えぇ・・・似たような物です」
「オレヲコロストイウノカ!!」
「いえ、悪魔界に返すだけです」
そして・・・
「ただ・・・本気を出さないと生死は保障しませんけれども」
「グオォォォォォォォォォォォ!!!!」
悪魔が叫んだ・・・そして悪魔の体が小さくなっていく
「ふん・・・これで満足か?」
悪魔が本性を現した
「公爵級の悪魔でしたか・・・」
沙羅がつぶやく
「お前にやられるわけには行かないのでな!!」
悪魔が吼えた
「すごい邪気ですね・・・」
「ふん、お前の殺気ほどではないであろうが」
「そうですね・・・・」
沙羅が伏せてたずねる
「貴方がここに来た理由は何ですか?」
「あるお方に頼まれたのでな・・・」
悪魔が答えた
「あるお方?」
「ガルイン様だ」
「ガルインさんに・・・」
「あぁ、お前の手助けをするためにここを軽く襲えといわれてな・・・」
悪魔が答える・・・さらに
「ただ、手加減していては殺されるようなのでな・・・ここからは本気でやらせてもらう」
と言った
「わかりました。では貴方のお名前、教えていただけますか?」
沙羅がたずねる
「ヴェイギェルだ」
「ヴェイギェルさんですね」
「あぁ」
「では、私のお相手お願いできますか?」
「無論だ。久々に強い者と戦えるようだな」
「それは保障しましょう」
沙羅が苦笑した
「では、参ります」
「あぁ、来い」
再び戦いが始まる



「砂煙で何も見えないな・・・」
「どうなっているのかしら・・・」
荒木と雀がつぶやいた
「悪魔の気配が強くなった気がします」
香奈枝が答える、そして香奈枝に雀が問いかけた
「てことは・・・本気を出したってことかしら・・・・」
「かも知れません・・・」
「そういえば未来ちゃんは?」
「今未樹ちゃんと美幸ちゃんに保健室に連れて行ってもらいました」
「そっか・・・それなら大丈夫ね」
「はい」
そして砂埃が晴れた・・・その先には



「ふん!!」
ヴェイギェルが大きな剣を振り下ろす
それを沙羅は受け流した
「がら空きです!!」
「甘いわ!!」
振り下ろしたはずの大検を力で懐に引き寄せた
ガキン!!と大検とナックルのぶつかる音が鳴り響く
「やりますね」
「お前もな」
二人は苦笑していた
「ではこれが最後の一撃にしておくとするか」
悪魔が言った
「そろそろ昼休みとやらが終わってしまうだろう」
「そうですね」
沙羅が答える
「では行くぞ!!!」
『我の問いかけに答えよ・・・』
『我が内に眠りし光の力・・・』
『我にその力を分け与えよ・・・』
『デビル・ジャッジ!!』
ヴェイギェルが光を放った
「せぇい!!」
それを沙羅は拳で打ち消した
「ではまたな」
「えぇ」
その光の中で二人は言葉を交わす



光が消え去りそこに残っていたのは沙羅だけだった・・・
「一体何が起こったんだ・・・」
「悪魔が逃げたみたいね・・・」
荒木と雀がそう言った
「あの殺気は一体なんだったんでしょう・・・」
「・・・わざと多く殺気を出してた・・・」
「あら、美代ちゃんいつの間に」
「・・・さっき来ました・・・」
美代が答えた
「で、わざとってどういうこと?」
「・・・私たち、特に未来ちゃんを近づけさせないため・・・」
「近づかせないって?」
「・・・たぶん和輝さんの記憶を呼び起こさせないためかと・・・」
「美代ちゃん和輝のこと覚えてるの!?」
「・・・はい。私はこれを持っていたので・・・」
「これは・・・記憶系魔法の反射結晶?」
「・・・そのとうりです・・・」
「一体なんでこんな物を?」
「・・・もう大事な記憶は無くしたくないから・・・」
美代が小さくつぶやいた
「そう・・・」
雀にはその声を聞き取れたらしい
「とりあえずこれから沙羅がどうするか、ね」
「・・・たぶんこのまま帰ってしまうと思います・・・」
「それはちょっと困るわね」
「・・・なぜです?・・・」
「和輝のこと聞き出せなくなっちゃうからよ♪」
「・・・なるほどです・・・」
しかし美代が
「・・・なら放課後あの人の家に行ってみましょう・・・」
「場所知ってるの?」
「・・・魔力の波長は覚えましたから・・・」
「よくわかるわね・・・」
「・・・私の特技の一つです・・・」
「ま、了~解」
「・・・では放課後に・・・」
「また後でね~」


「さてと、こっちは終わりましたね」
沙羅がつぶやく
「後は先生に連絡をするだけですね」
沙羅が目を閉じ精神を集中する・・・・
(本日はこのまま帰宅することにします。私の秘密はなるべく話さないようにしてください)
念話を使い先生に状況を報告する
(わかりました、気おつけて)
(もちろんです、この体を傷つけるわけにはいきませんから)
沙羅はそのままもう一人に念話を送る
(荒木さん、本日の夜に雀さんを連れて私の家に来てください)
(ふむ、了解だ。だがもう一人連れて行っても良いか?)
(もう一人ですか?)
(あぁ、和輝のことを覚えている者だ)
(わかりました、では私の家の場所を送ります)
そして沙羅は念話を切った
「さて、帰りましょうか。和輝」
沙羅はそのまま学校を後にした



「沙羅はなんだって?」
雀が荒木に尋ねる
「今日の夜にあいつの家に来てくれだそうです」
「場所はわかるの?」
「えぇ、しっかり教えてもらいました」
「沙羅の家・・・か・・・」
雀、妄想モード突入
「これは当分戻らないだろう・・・」
「・・・・私も行きます・・・」
「もちろんだ、沙羅にも了承は取ってある」
「・・・・ありがとうございます・・・」
「さて、そうなると未来ちゃんのほうが気になるな・・・」
「・・・私様子を見に行ってきます・・・」
「俺も行こう。雀先輩、移動しますよ」
「は~い」
「半分妄想から帰ってきたか・・・」
雀の特技のひとつ、妄想移動である。とはいっても半分しか覚醒していないので移動した後に状況がつかめなくなる


保健室のベットには未来が眠っていた
「どうやら落ち着いたようだな」
「えぇ、さっきまでずっと震えていたんですけどね」
「たぶん戦闘が終わったからだろう」
「そう・・・」
「一体あの沙羅って人何者なのかしら・・・」
かなめ、香奈枝、京子がうつむいていた
「心配するな、敵ではない」
「じゃあ何であんなに殺気を放出していたんですか!?」
「たぶん、わざとだろう」
「わざと?」
「皆を自分に近づけさせないための・・・」
「一体何のために?」
「記憶を取り戻されないためだろう」
「記憶?」
「わからなくて当然だ、何を忘れているのかわからないのだから」
「でも、私何かが足りない気はします・・・」
「ほう」
「なんでしょう・・・今まで一緒にいた人がふといなくなってしまったような・・・」
「これは記憶が戻るのも時間の問題だな」
「荒木さんは何か知っているんですか?」
「あぁ、俺と雀さん、美代ちゃんは覚えているからな」
「じゃあ、何を忘れているのか教えてください!!」
「それは無理だ」
「なぜです?」
「これは・・・たぶんあいつの意思だからだ・・・」
「あいつ・・・ですか?」
「あぁ、皆が自然に思い出さない限り俺はこの話は一切しない」
「そう・・・ですか・・・」
「大丈夫だろう、そこまで気づいているのなら」
「はぁ」
「それでは三人はこのまま未来ちゃんの様子を見ていてもらってもよいか?」
「わかりました」
「了解です」
「まかしといて!!」
荒木と雀と美代は保健室を後にしそれぞれの教室に戻った
「それじゃあまた後で」
雀が言った
「放課後、校門でよいか?」
「・・・・はい、問題ありません・・・」
「じゃあ放課後、校門でね」
そして午後の授業が始まる
未来章第九部完


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