舞い降りた天使は闇夜を照らす11

今だ!というタイミングはすぐに訪れた。



健也が「ミラーボール、目がチカチカするから部屋を変えてもらおうぜ~、とりあえずみんなでフロントに抗議しに行こう!」と言ってくれたのだ。



ありがとう、健也、誠、青山さん、最後まで名前がわからなかったバタコさん。



僕は少し外を歩かない?と半ば強引にカラオケボックスから如月さんを引っ張り出した。



如月さんも「少し酔いを覚ましましょうか~」と少し上気してピンク色になった顔でにこにこ笑って僕に着いてきた。



一緒に歩いているとその外見から僕が年下で如月さんが年上に見えていることだろう。
そして「なんでこんなヤツがこんな美人と歩いているんだ」と通行人は思うだろう。
ふと如月さんの横顔を覗くと大きな瞳から少し光るモノが見えた。
泣いているのだと僕は察知した。
来年になれば彼女はフランスに行ってしまいこんな風に一緒に飲んだりカラオケに行ったり…
僕と二人で一緒に渋谷の街を歩くこともずっと先の未来の事になってしまう。



でも僕は如月さんをずっと想い続けていられると思う。
美人とかそんなんじゃなくて、こんな事をいうのは図々しいけど
「如月さんと僕は波長が合う」のだ。

僕が凸だったら如月さんは凹。
+だったら-、陰だったら陽。



なんだって全ては対になっている。
一つでは意味をなさない。
二つあって初めてそのありがたみが分かるような二人なのだ、僕たちは。



小さいかもしれないけれど安定した将来を夢見る僕。
クウォーターでフランスで語学を学び何か大きな夢を追い求める如月さん。



対になってる。
人は異性を好きになる、自分に無いものを異性に求める。
神様は愛情という昔の僕ならば憎んで足蹴にしていたモノを万人に与えた。
19年生きてきて、今になって初めて愛情とはコレなんだ!というものに出会えた。



如月さん、僕はアナタを憧れる存在から恋い焦がれる存在に昇華してしまった。
もう後戻りは出来ないよ。



如月さんが「あそこ…ですよね…?」と綺麗にネイルアートされた長い人差し指をお城みたいな建物に向けた。
そこには「LOVE HOTEL エンジェル」という控えめなネオンが逆に淫美なホテルがあった。



僕は如月さんの目を正面から見つめて「うん」と息だけの声で頷いた。


初めて入るラブホテルは外観同様に内装もお城みたいだった。
一旦如月さんから離れて健也に電話をした。



「おう、着いたか? こっちはみんなお前の事心配してるよ、大丈夫か?」健也の後ろでは誠が「RADWIMPSのme me she」を歌っている、これから行くぞという時に未練がましい失恋の歌を聞かされて少し気持ちが楽になった。



僕はRADWIMPSのme me sheが好きだ。
恋愛をしたことも無いのに初めて聞いたときに泣いてしまった事があった。



「おい、幸一? お前ホントに大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だよ。 チャントホテルに着けたし。 てか如月さんもホテルの場所知ってたぞ? 如月さんもグルか?」



僕は少し責める口調で健也に詰問した。



「悪い悪い、最初から最後まで全部俺のシナリオだ。 お前がヤラハタ迎える前に。 それと如月さんがフランスに行く前に企画したんだ。」



…本当に。
…健也も誠もバカだ。 バカ過ぎる。
…だから涙が頬をつたう。



「ホテルの予約者の名前は「如月」で取ってあるからフロントでその事告げて、男になってこい!」健也は携帯電話越しでも耳が痛いくらいの大声で僕を激励した。



僕は如月さんの元に戻り涙の痕を見られたくないから大股で一直線にスタスタとフロントまで行って「今日予約していた如月です」と受付のおばちゃんに言った。
おばちゃんは無言で部屋の鍵を渡してくれた。



そして僕は勇気を出して如月さんの細い腕を掴んで部屋まで歩きだした。



僕は見惚れていた。
服を脱ぐ前にお互い見つめ合って部屋の真ん中で動けないでいた。
すると如月さんはするりと僕の腕の中に入ってきた。
お互いに緊張していた。
僕の汗のにおいが如月さんに嗅がれた気がした。



次の瞬間には僕と如月さんは唇を重ね合わせていた。
なんでこんなにも女の子の唇は柔らかいのだろう?



如月さんは僕の歯を割って舌を絡ませてきた、これがディープキスなんだと気がつくまで何秒かの時間を費やした。



如月さんの顎を右手で持ち上げてもっと深くまで舌を潜り込ませようとしたとき、ジョリっという感触がした。
凄く慣れたその感触、もしや…?


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