2002/05/07
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 国固有のテンション・描写・物語というのがある。私の偏見で言えば、ロシアはハイテンション、ドイツ大仰、ラテンアメリカはシュール。自分の居る国である日本の作品にはあまりそういう視点を持てない。アメリカは雑多で特別に印象はない。
 一見フリークス落ちにしか見えない、収録作品中最悪の後味を残す「女王人形」にしろ、アステカの女神を模したものであると解説で読めば一応は納得出来る。これが、何の説明もなく、どこの国の作家かも知らずに読めば、最悪な後味は最悪のまま、その印象がフェンテスという人物にまで拡大されかねないことになるだろう。


アーネスト・ヘミングウェイがバーナード・ベレンスンに語ったこと、彼の名作の秘密は象徴がないことだといったこと。海は海、老人は老人、少年は少年、カジキマグロはカジキマグロ、鮫はほかのどの鮫とも同じなのだ。こうしたもの自体に人々は力をあたえ、表層下を手探りし、いつもより多くのものを探している。わたしには少なくとも理解できる。わたしはごく幼いころを日本ですごし、すこし大きくなってからをアメリカですごした。わたしにはほのめかしを通してものをごとを観たり、神秘化したがる部分がある。いっぽうアメリカ人の部分はなにも信用せず、いつも表向きの話の裏にあるほんとうの物語を探している。

                 ロジャー・ゼラズニイ「北斎の富嶽二十四景」中村融 訳 より

 単なるフリークスオチではないと分かった時にはそれなりによく出来た話だと納得出来たが、単なるフリークスオチだと思っていた時は、衝撃が大きかった。気分が悪かった。吐き気がした。作者を恨んだ。何も知らなかった時の方が、作品の持つ力は大きかった。

カルロス・フェンテス「フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇」木村榮一 訳(岩波文庫)





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Last updated  2002/05/07 01:05:04 AMコメント(0) | コメントを書く


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