2002/06/09
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 現代文学大系13 夏目漱石集(一)(筑摩書房)より。旧仮名。
 暗い話にばかりやたら詳しくなった覚えはないが、とにかく確実に昔より私は歳をとった。
 目移りする程読みたい本を並べておいて、とりあえず二、三行読み、まあ、これは後に、次を手に取り、これはまだいいだろう、と、結局どれも読み出すことが出来ず、最後に選ぶのは、大昔から転がっている、最近用意した本とは全く違う物となった。それを手に取る理由もあるにはある、先日の「月山」付録小島信夫の文章でも草枕について触れられていた。それほど読んでいない漱石でも、何度かこれはそのうち読もうと思っていたのは草枕である。
 以前なら読もうと思わなかったもの、以前なら面白く読めなかったもの、「これはそのうち読みたくなるだろう、それは今ではない、もう少し歳をとろう」と決めていたもの。そういったものが読めるようになった。たいていのことは歳をとることで片がつく。許せなかったことも、楽しめなかったことも、そんなものが何故あるのか理由が分からなかったものも、歳をとれば、自ずと意味が拓けてくる。元々あったものが見えなかっただけだ。元々大したことじゃあないのに大事にとっていただけだ。



 山路を登りながら、かう考へた。
 智に働けば角が立つ。情に棹せば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ引き越たくなる。どこへ越しても住みにくいと悟つた時、詩が生れて、画が出来る。



 新仮名より旧仮名の方が読みやすいのが不思議だ。漱石のような文章を今の作家が書くのは難しかろう。時代がかった、大仰だ、今更嫌味だ、不親切(?)だ、などと、いくらでも批判される要素があるし、本書の場合一人称は「余」だが、これさえ今は使いにくい。



 ちょっとした勘違いもあった。漱石は驚くほど読みやすい。本書では、何も起こらない。それが、いい。そう思う、それが、歳だ。

夏目漱石「草枕」(新潮文庫)
草枕・二百十日(角川文庫)
夢十夜・草枕(集英社文庫)
坊っちゃん・草枕 漱石作品論集成〈第2巻〉(桜楓社 お取り寄せ)
漱石文学作品集〈5〉/草枕(岩波書店 お取り寄せ)
草枕(岩波文庫)





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Last updated  2002/06/09 12:05:55 PM
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