2003/03/02
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 少し前の前から、読むものが国内の作品に偏りすぎているのに気付いていた。翻訳ものが結局は心に強く響いてこないこと、もし読むのなら、これまで読まずに素通りしてきた有名な大長編ものに挑みたいこと、それが面倒なこと、「今すぐ」読みたいものが別にないことが、そうなった原因だった。次に読む本を見失ったところに「調律の帝国」「われら青春の途上にて・青丘の宿」が入り込み、最近読んだものの中では色の違う二冊により生じた隙に、オースターが入り込んできた。
2002/06/01(土) 孤独の発明/ポール・オースター/柴田元幸 訳 からあっというまにとてつもないな年月が経過している。そこで示唆されている本書への道を、すっかり忘れていたわけではない。思い出すまで思い出さなかっただけであり、思い出さなかったのは思い出す必要があまりなかったからだ。この9ヶ月、オースターの名前は重要ではなかった、必要ではなかった、私にとっては、「次にオースターの作品で読むなら『ムーン・パレス』だろう」の、「次」がいつまでもやってこなかった。あれは読めると思う、読もう、と思い出した時には「ムーン・パレス」を手に取らなかった理由(それは主に「なんとなく」で構成された、「ニューヨーク三部作と『孤独の発明』以外は読まないでもいいだろう」という思い込み)を忘れていた。
 その結果、長いが退屈な書物ではなかった「孤独の発明」をのぞけば、これまで読んだそれ以外のオースター作品、つまり「シティ・オブ・グラス」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」は、もし途中で読むのがつらくなっても、苦もなく最後まで読み通せる長さの作品だったということを発見した。読みやすいオースターの作品であるにもかかわらず、「ムーン・パレス」を読み終えるのに必要以上の時間を要したのは、それほど面白くなかったからだ。実に単純な結論に辿り着くまでに使われた「」『』()が寂しげ。
 雄大で荒漠とした風景はただそれだけであらゆる物語を内包出来る。昔からアメリカ西部劇やロシア映画が羨ましかった。「なんでも出来るじゃないか」。
 主人公の話、主人公の雇い主の話、主人公の雇い主の息子の話、三部に分けられるそれぞれの青春物語の反復に種が明かされた時(その種は主人公の雇い主の話を半分も読めば誰にでも分かる)、飽きてしまう。終盤、主人公と恋人とは別れてしまうが、それがなければ、物語は主人公の息子に受け継がれ、ひょっとしたら恋人の物語とその両親と祖父母の話にまで遡り、いつまで経っても話が終わらなくなってしまったかもしれない。だから、子供は産まれなかったし、砂漠の洞穴は見つからなかった。この手法を繰返せば、いつまでも面白く繰り返せるならば、新しい物語など必要ない。だが、160キロの巨漢である主人公の雇い主の息子、実は主人公の父親、の登場と同時にその身体同様物語が息切れし、終幕に向かう。物語にけりをつけないと、本は終わらないからだ。次の仕事にとりかかれないからだ。作者も読者も飽きるからだ。


ポール・オースター「ムーン・パレス」柴田元幸 訳(新潮文庫)





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Last updated  2003/03/03 04:14:19 PM
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