2003/07/11
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 1988年のアメリカ合衆国選挙戦に取材してエリクソンが書いたもの。翻訳者は『ルビコン・ビーチ』の下訳を手がけた人。『Xのアーチ』に出てきた、三代目合衆国大統領トマス・ジェファーソンの愛人黒人娘サリーも出てくる。エリクソンに、俺の女房と寝ただろうと問い詰めるアルバート・ゴアも出てくる。エリクソンの車を追いかけ続けるアルバート・ゴアも出てくる。前副大統領、この本が書かれた時点では大統領戦の一負け犬、そんなことはどうでもいい。


 しかしもうはっきりさせていい頃だろう。読者もそろそろおわかりだと思う。僕はこの本を無責任に書いているのだ! 僕は長いあいだ列車に乗って、無責任へ向かって走っている。だから僕ができる最善のことは(しばしばやっていることだが)、僕の妄想、僕の暗黒の妄想を現実と混同しないことだ。僕の妄想は、長年大切にしてきた友情をだんだん傷つけていき、とうとう「おまえなんかニューオーリンズに残るな」といわれるところまできている。


 本の中でボロクソに言われてるブッシュがその後大統領となり、今はその息子が同じ地位にいる。幾分擁護されてる分余計にボロクソに書かれてるように見えるデュカキスはその後大統領になれず、その息子など知らない。
 エリクソンが現実に取材したものを書くなんてと意外な気もしたがよく考えてみれば『黒い時計の旅』はヒトラーとその姪ゲリについて、『Xのアーチ』ではトマス・ジェファーソンとその愛人サリーについて、実在した人物について書いているのだ。大戦後も生き残ったヒットラーに姪をモデルにした小説を提供し続ける男や、奴隷軍隊を作り合衆国と戦争を始めるジェファーソンを。しかし本作におけるサリーの幻影が語る太文字の独白はそれほど面白い効果をあげていない。ただの彼氏自慢にしか見えない。 マイルス・デイビスとレコーディングするはずの日の数日前にジミ・ヘンドリックスは死んだそうだ。イースト・ロスアンジェルスに住んでいることになっている人口の三分の一は実際に存在しないそうだ。レーガンは「私はこの四年間、核ミサイルは発射してから呼び戻せるものだと思っていました」と言ったそうだ。
 蝉はまだだ。蛙はとっくに鳴いている。夏が暑い。夏が暑い。夏が暑い。夏が暑い。

スティーヴ・エリクソン「リープ・イヤー」谷口真理 訳(筑摩書房)





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Last updated  2003/07/11 11:46:00 PM
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