2003/09/25
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カテゴリ: 海外小説感想
 ブコウスキー職探し、ブコウスキー職場をクビ、放浪、セックス、酒、警察。つまり自伝的長編。『くそったれ! 少年時代』の直後の話。だから読んだタイミングがいい。彼は律儀に時代順に作品を発表しているわけではないから。セリーヌ『なしくずしの死』を先に読んだ時もそうだった。デビュー作である『夜の果ての旅』舞台直前までの少年時代を書いたこの作品を先に読んでいたことで、『夜の果ての旅』の主人公の性格が素直に理解出来た。だから途中で読むのを止めたのは「作風が合わない」「こんな下品な作品なんて」ということだからではない。どうも、そんなに面白くないからだ。その点本書は気軽に読めた。随分読みやすいなと思った。半分ほど読んだところで一度読んだことがあると気付いた。気付かされた部分以外の話は全く覚えていなかった。


 二日酔い男は、あお向けになって倉庫の天井を眺めるべきじゃない。いずれ木の梁に目を奪われたりしたら、首でも括りたくなっちまう。それから天窓の──ガラスの天窓に金網が入っているのが見える──金網を見ていると刑務所を思い出す。そして瞼が重くなり一杯飲みたくなって、人の行き交う音がして、それを聞いていると休息時間の終わりに気がついて、よっこらしょと立ち上がり、歩き回って注文品を詰め、梱包しなくちゃならない・・・・・。


 まるでハードボイルド小説だ。投稿し続けていた短篇小説の一つが初めて認められたのが本作に書かれてる時代。この後『ポスト・オフィス』で書かれるように、15年だか20年だかの郵便局勤務の後、ようやくブコウスキーは作家時代に入る。「仕事につく」「仕事を辞める」の部分が「詩の朗読をする」「家に頭のおかしなファンが訪ねてくる」などになる。それ以外はあまり変わらない。


 点呼は続いた。こんなに仕事の空きがあるってのはいいもんだな、とおれは思った。でも同時に心配もした──きっとおれたち、何か競争させられるんだ。適者生存だ。アメリカにはいつも、職探しをする人々がいる。使える体は、いつでも、いくらでもいる。そしておれは作家になりたいのだ。ほとんどすべての人間は作家だ。歯医者や自動車の修理工になれるだろうなんて、全員が思いやしない。でも、自分は作家になれるとみんな知っているのだ。この部屋の五十人の男の中でたぶん十五人が、おれは作家だと思っていることだろう。ほとんどすべての人間が言葉を使い、それを紙に書くことが出来る。つまり、ほぼ全員が作家になれるのだ。しかし幸運なことに、ほとんどの人間は作家ではなく、タクシー運転手ですらなく、そして何人か、かなり多くの人間は不幸なことに、何者でもないのだ。


 いろいろ書いたが削除。少し離れよう。暑さも過ぎた。


2001年発行 学研M文庫





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Last updated  2004/10/29 01:36:24 AM
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