2003/12/28
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カテゴリ: 海外小説感想
 ボロボロになった手袋越しに指に寒さが手に伝わってきた。小雨が降り出したと思ったら小さな雪だった。急な寒気に枯らされたのか、巨大な雪かと見紛うくらいに、雪と一緒に茶色い葉が舞い落ちてきた。どこかで選ぶのも面倒だと、コンビニで無難な安い手袋を買い、去年も似たようなことをしたと思い出した。


 父も母も、とても気をつかって、じぶんたちの計画をうちあけようとした。でも、ぼくたち子どもというものは、おとながかんがえているよりは、はるかに気のつくものなのだ。ないしょで話をしていても、ちゃんとほんとうのことがわかってしまう。だから、父が、出発がまぢかにせまってから、はじめて、計画をうちあけにきたときには、ぼくたちは、もうちゃんと知っていたのだ。けれども、いやなことがほんとうにおこってしまうよりは、もしかしたらと、びくびくしているほうが、まだ、ましだ。


 児童が審査員となって作品を選ぶ、フランスのサロン・ドンランファンス児童文学大賞1962年度受賞作。両親が仕事の都合でアメリカへ行く夏休みの間、田舎町にある祖父の家に預けられた兄と妹が、慣れぬ土地でわくわくするようなことに出会う、児童文学。国境際にある為、昔から密輸が「まるでスポーツのように」行なわれているその町では、税関の家の子供が嫌われている。同じく余所者として馴染めないでいるきょうだいが彼らと仲良くなり、山の洞窟の秘密を教えてもらい、その後は町の人と税関の家の子供がうまく解け合えるように画策したり・・・という話。


 生まれてはじめて、ぼくは、前世紀の動物の遺骨をまえにしているのだ。しかも、自然科学博物館にいるのではない。まだ知られていないほら穴の中で、だいたんな少年が発見したまま、どこの学者もまだ調査していないほねなのだ。


 税関の息子たちが発見していた、洞窟にある古代人の暮らしていた跡を見た主人公の少年の感想は素直だ。綺麗に陳列されていては、知的好奇心もしぼむ。生のままの姿に出会えることが、知的好奇心を膨らませる一番のいい道だ。つまり、だから、おとぎ話だ。その洞窟を利用して、昔から密輸人たちは税関の目をくらまして・・・という展開を予想したが、物語の重点はそこにはなく、美しい友情と輝かしい発見が描かれる。生臭い話にしてもあまり面白くはならなかっただろうから、これでいい。だけどこの手の話は、何もかもがうまくまるまっていく後半より、わくわくしながら読める前半の方が、好きだ。





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Last updated  2004/10/29 01:08:08 AM
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