2004/02/23
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カテゴリ: 国内小説感想
 中年の男が酔っぱらって線路の上を歩いている。見たわけではない。車内アナウンスがそう言っている。先頭の車輌にいたため、通信の内容がよく聞こえる。通信相手が何かの記号を読み上げているが雑音がひどい「雑音がひどくて聞き取れません、もう一回繰り返しどうぞ」携帯電話やPCで連絡した方が早くて確実じゃないかと思う。中年の男の酔っ払いとは言っていない。私の頭が勝手に映像を作り上げている。男はとっくに柵を越えて線路から離れている。夜の道を何事もなかったようにやや危うい足取りで停車中の電車を追い越して家路に向かい歩を進め、次の日新聞を見て悔いる準備を始めている。しかしすぐに安全が確認され通常通り走り始めた電車は記事にもならず、男は前夜の醜態の痕跡をつかみ取ることが出来ない。




『かげろう』より


 収録作品『赫髪』『水の女』『かげろう』『鷹を飼う家』『鬼』。初期短編集。『赫髪』は、観たことはないが、ロマンポルノの傑作と言われている、神代辰巳監督の『赫い髪の女』の原作である。『赫髪』は以前読んだことあるので今回は読まなかった。以前から私は『赫い髪の女』が名作と呼ばれていることに懐疑的である。あの時代のロマンポルノ作品には実際傑作が多かったのだろう。しかしポルノを芸術と同じ俎上で語るのは抵抗がある。そこで「文学」であるものを原作にした作品──中上健次という、力強く勢いのあった一人の芥川賞作家の作品──を一つ選び出しそれを数あるロマンポルノの中から一つの代表としてみせただけのものではないかと。憶測に過ぎない。こう書いたからには近いうちに借りて観よう。





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Last updated  2004/10/29 12:46:42 AM
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