2004/08/06
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カテゴリ: 詩集感想
 第一次世界大戦で頭を撃ち抜かれ死んだ詩人。モナリザ盗みの犯人として一度投獄された詩人(冤罪と分かり釈放)。フランスの詩人。
とうとう君は古ぼけたこの世界に飽いた 」と『地帯』の始まりを、堀口大學は訳した。 別のアポリネール訳詩集(小沢書店)では「 ついに君はこの古くさい世界に倦きた 」とある(窪田般爾訳)。訳の正確さということでは堀口訳をあまり信用していないが(何しろ、「訳注:この一編、訳とは言わず、エッセンスと言うべきか、知らず極端な抽出を試みた。虫のいどころ。訳者の反逆」などと詩の後に書き付ける人だ。『花のはだか』)、ただ翻訳するだけでなく、日本語の詩として、相当の覚悟を持って言葉を選び苦心したことは分かる。
「古ぼけた」「古くさい」大した違いはないように見える。が、「古ぼけた時計」「古くさい考え方」「古ぼけた廃屋」「古くさい遊び」など、一般的な使われ方を並べてみると、「古くさい」にはやや否定的な響きが見られることが分かる。「古くさい時計」「古くさい廃屋」とすれば、それは年季の入った年代物の時計より流行遅れの時計を思い浮かべるし、廃屋にいるのは遠慮がちな幽霊ではなくタバコとシンナーを吸う中学生だ。出来れば翻訳詩でなくとも「古くさい」という言葉を詩の中では見たくない。選ぶ言葉一つで詩人が下品に見えてくることはある。
 それほど好みの詩人でもないのだが、読み比べてみて、そんなことを思った。
 幾つか心に残った詩句


 いちおうは 立って踊りもしてくれた(『ジプシー女』)

 一匹の蠅が紙の上の不揃いの
 僕の筆跡づたいに小股に歩む(『獄中歌』)

 哀れな秋よ
 死ね 雪の白さと
 熟した果実の豊かさの中で
 空の奥には
 はやぶさが待っている
 恋をしたことのない
 短い髪をもった水の精(ニックス)の上に(『病める秋』)

 思い出の中でさえも
 死んでしまった女たちの声のような
 雨がふっている(『雨がふる』)



新潮文庫





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Last updated  2004/08/06 11:25:27 PM
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