2004/11/16
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 別巻という事で趣が違い、文人俳句を集めたもの。小説家・詩人・劇作家、などか。全部読んでないから詳しい事は分からない。このボリューム(28句集分)を読む事にそろそろ疲れて来た。めぼしいところだけ押さえて済ませた。三好達治や安東次男あたりは読んでおいた方が良かったとも思ったが、一度切れた糸を結ぶのもしんどい。

尾崎紅葉「紅葉句集」より
泣いて行くウエルテルに逢ふ朧哉
後の月句を売りに行く人に逢ふ


 この人について語れる事何もない。

森鴎外「うた日記」より
春の海を 漕ぎ出てて明す 機密哉
便腹を 曝せばとまる 蜻蛉かな
虫程の 汽車行く広さ 枯野哉
馬上十里 黄なるてふてふ一つ見し


 この時代に「機密」を俳句に取り入れるなんてナウい人。やっぱり大好きだ。

夏目漱石「漱石俳句集」より
鳴くならば満月に鳴けほととぎす
凩や海に夕日を吹き落す
枯野原汽車に化けたる狸あり


 この人は漢詩に見るべきものがある(らしい)こともあってか、数が多い割につまらない句ばかり。それでも敢えて漱石の俳句を論じている本は結構あるから、ご苦労なことだ。

石橋忍月「忍月俳句」より
清風は人に至らず蠅の声
人もすなる絢爛の句を花に吐


 芥川龍之介、泉鏡花に特筆すべき句なし。


枯原を出るまでうしろ振り向かず
六月の些事のごと訃をもたらさる
遠蛙やむとき嗚咽洩れいだす
朝焼けの溲瓶うつくし持ち去らる
蓑虫や何にいのちを燃やすべき
病みて三たびの除夜の鐘々を聞きつくす
春愁や忘れしことはそのままに


 別巻を借りた理由はこの人。数多くの俳句を紹介している本で彼の句が度々目に留まり気になっていた。本業は小説家。犯罪小説などで有名。何故彼がこれほど筋がいいかというと、同じ病院に石田波郷が入院しており、そこで知遇を得、句作に励んだため。波郷は56歳で逝き、昌治68まで生きた。
 編集委員山本健吉・森澄雄・草間時彦・飯田龍太。解説村山古郷。

1983年 河出書房新社





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Last updated  2004/11/16 01:33:10 AM
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