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2008年11月12日
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テーマ: 掲載小説!(222)
カテゴリ: 復讐の楽園
皆様はじめまして、こんにちは 恋愛しよう倶楽部 (こいしようくらぶ)I崎です
街は早くもクリスマスムード…心が求める物は、やっぱり ロマンス ですよね
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砂漠の国で繰り広げられる、魅惑の王子との恋…
『シークとどこまでも』私のオススメです
!コミックでもお楽しみいただけます!







『復讐の楽園』第1話 ~突然、留置場へ行く事に?!~


「わたしを逮捕するなんて無理よ」



「悪いことは何もしていないんだから」

「こちらへどうぞ、お嬢さん(マドモアゼル) 」

制服姿の税関吏は無表情に繰り返した。抑揚のない口調のせいでカリブ地方特有の軽快な発音が台なしになっている。

エミリーは、焦りが顔に出ないようになおも努めた。彼女は簡単に怖じ気づくタイプではないし、もともと臆病 な質ではない。それに、“目には目を”の闘いを五年間にわたって続けてきたのだ。今も一歩も引かず、かつて『タイムズ』誌で”驚くべき落ち着き”と評された態度を崩さなかった。


「法的にわたしを勾留できるの?」

税関吏はばかにした目つきで彼女を見た。

「はい」

エミリーは事態を打開しようと目まぐるしく頭を働かせた。これ以上この税関吏と言い争ったところで時間の無駄だろう。

「わかったわ。でも、誰か、わたしのお友達のところへ事情を説明しに行ってもらえないかしら……外で待っているんだけど?」

「その方もお待ちになるしかありませんね」

エミリーは目をそらし、喉をごくりと鳴らした。栗色の長い髪がベールのように顔を覆い、切羽つまった表情を隠している。平然としているのよ、と彼女は自分に言い聞かせた。アネリスはいずれターミナル内に戻ってくる。そうしたら二人でこのごたごたをきれいに片づけよう。



具合が悪いのは目だけではなく、頭もずきずきする。今になってエミリーは後悔した。飛行機の中で仕事などせず、アネリスのように安眠グッズを持ってきてぐっすり眠ればよかった、と。近ごろはいつもそう。仕事のしどおしだ。

エミリー・ペローシ。仕事依存症(ワーカホリツク) 。

一瞬、エミリーは自分の人生が奇妙に思えた。国際空港のターミナルと外国のホテルを住み処に、ポット何杯分もの緑茶を飲みながら会議に明け暮れる日々。

わたしは、生きているとは言えない。彼女は投げやりな気持ちで思った。この世にいるだけだ。攻撃と、略奪と、破壊のために。

そうはいっても今は、目の前の問題に神経を集中させなければならない。たとえば、外で待っているアネリスのこととか。

「あなたがわたしの友人に興味がないことはわかるわ。でも、誰かに事の次第を伝えさせるくらいできるでしょう?」

「あなたのお友達はすでに、ターミナルに戻ってはいけないという通告を受けています」

税関吏は胸の前で両腕を組んだ。

「あなたは刑事の到着まで待たなければなりません」

刑事?どこの?昔からエミリーは、セント・マッツ島へ行く前にこのアンギラの空港に降りたっていたが、一度も引きとめられたことはなく、何かで揉めたこともなかった。

「じゃあ、令状を持っているの?」

闇の中でパズルの断片をはめこんでいるような気分だった。

「はい、マドモアゼル。ヨーロッパ連合のメンバーから令状が出ています」

税関吏は東カリブなまりの強い英語で答えた。このあたりは南アメリカに近く、大半の島で多言語――フランス語、オランダ語、英語、スペイン語――が話されている。そして、セント・マッツ島のような小さい島は、個人で所有されている場合が多かった。

「でも、ここはヨーロッパ連合の一部じゃないわ」

「当局はアメリカやヨーロッパ連合の関税局と協力して、海賊行為や密輸入を取り締まっています」

海賊行為。密輸入。エミリーはたちまち合点がいった。

「ヨーロッパ連合のメンバーって、どこ?」

「イタリアです。もっと具体的に言うと、アルタガンマという会社です」

アルタガンマ。エミリーの口もとに辛辣な笑みが浮かびかけた。これですべて納得がいく。

アルタガンマは、高級皮革製品を扱うイタリアの会社だ。40ものブランドを擁して110億ドル以上を売りあげ、そのほとんどは輸出で稼いでいる。そして、アルタガンマの新社長はトリスターノ・フェレなのだ。

トリスターノ・フェレ。

エミリーの胸に氷の矢が突き刺さった。

これはトリスターノ・フェレの仕業だ。

少しの間、落雷の衝撃でテレビの画面が乱れるときのように、エミリーの胸にさまざまな思いが入り乱れた。トリスターノのことを、彼女以上によく知る人間はいないだろう。トリスターノは何年も前に父親のブリアーノから会社を引き継いだ。ブリアーノといえば、強引で容赦のない経営者として知られていたが、息子はその1000倍も上を行っている。

「ああ」

税関吏が安堵の声をもらした。

「刑事さんたちのご到着だ」

金属的な音が響き、エミリーが頭をめぐらすと、狭いターミナルのいちばん奥のドアから、3人の男性が入ってきた。ニ人は制服、ひとりは私服だ。フェレ・デザインズとの闘いがいよいよ正念場を迎えようとしていることを、エミリーは思い知らされた。

2時間後に刑事たちが去り、エミリーはひとり小部屋に残された。彼女は幾度となくアンギラの空港を利用しているが、こんな小部屋があることを今まで知らなかった。

取り調べの間、食べ物も飲み物もいっさい出なかった。疲れと空腹を覚えながら、エミリーは自分の手を見おろし、指を曲げたり伸ばしたりした。いつものように、指には何もつけていない。爪も短く、ただなめらかに整えてあるだけだ。見るからに実際的な手だ。それなのに彼女の人生は実際的とはほど遠い。

エミリーは中国を何度も訪れ、製造元と会合を重ねてきた。当初は、ただフェレに一矢報いるだけのつもりだったのが、やがてアジアそのものに深くかかわるようになった。中国人の多くはすばらしい資本主義者であることもわかってきた。創造性にあふれ、労働意欲も旺盛で、技術の改善に真剣に取りくんでいる。そういう人々の成功への意気ごみをエミリーは高く買っていたし、中国で会った誰もが独立心に富み、企業家になる夢をいだいていることにも感心していた。

ドアが静かに開く音が聞こえ、エミリーは顔を上げた。

<第1話  2/3 へ>

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                          [第1話公開期限:なし]

この作品の一部、または全部を無断で転載、複製などをすることは著作権法上の例外を除いて禁じられています。

All rights reserved including the right of reproduction in whole or in part in any form. This edition is published by arrangement with Harlequin Enterprises II B.V./ S.a.r.l.  All characters in this book are fictitious. Any resemblance to actual persons, living or dead, is purely coincidental.

Published by Harlequin K.K., Tokyo, 2008






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最終更新日  2008年11月13日 14時36分07秒
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