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ほしはひかるのかな????
その2 メルヘン
●メルヘンな詩
●何かの印象を語った詩(キリン・水・土・草・海などです)
●「気分」を語った詩
を、集めています。
暗い感じのものには、(;_;)のしるしをつけています。
メルヘンなホワーンとしたのは、好きです。
短い詩も好きなので、印象を語った詩も多いです。
「気分」は・・・そんな気分(?)になったときにできた詩です。
探しやすいように、スクロールバーでどのへんか、題名の横に書いておきます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●メルヘンな詩
「天使の歌」
「天使がお空で転んで」
「花と雨」
「あをのおと」
「親指姫」
「冬のおばあさん」
「雪」
「アリス」
「bara」
「リリア」 (このへんで、スクロールバーの4分の1くらい)
「大地のスプーン」
「湖」
「潰れた風船」(;_;)
「男の子たち」(;_;)
「ウサギと狼」(;_;)
「くろいとり」(;_;)
●何かの印象を語った詩(キリン・水・土・草・海などです)
「朝」
「夏」
「空の傷」
「フラメンコ」
「スプーン」
「3錠の星」
「桃の花」 (このへんで、スクロールバーの真中くらい)
「キリン」
「箱」
「葉」
「火」
「水」
「ことり」(;_;)
「頭痛」
「渇き」
「痒み」
「肩凝り」
「海」
「林檎」
「オレンジ」
「雲」
「朝顔」
「やどかり」
「入道雲」
「カマキリ」
「リボン」
「トマト」
「海水浴」
「背中」
「鹿」
「河の流れ」
●「気分」を語った詩
「淋しきスープ」(;_;)
「石英」 (このへんで、スクロールバーの4分の3くらい)
「桜の園にふる雨は」
「若葉の頃に吹く風と」
「ロシアの映画で」
「風はそよ吹く」
「ただ黙っている」
「ささやかな雫の影を」
「百合の花」
「裸の夏風」
「散る花」
「夕暮れ」
「飛行」
「言の葉」
「雨」
「眩しい朝」(;_;)
「オ ネ ム リ」
「雨粒」
を、集めています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●メルヘンな詩
「天使の歌」
青い天空の草原で
天使は歌う
その素晴らしさに
天の草や花は涙をこぼす
地上の草や花は
なぜ涙が降ってくるのか
とても不思議で
首をかしげ
その秘密を知りたくて
天を目指す
なぜ天使は
地上の草や花のために
歌ってくれないのだろう
それはね
天使は
地上にくると
歌をなくして
しまうから
それはね
天使は
地上にくると
歌を終わらせて
しまうから
歌をなくした
天使が
今日も光の羽根を背負い
ふわり
ふわりと
飛んでいる・・・・
(2004.2.14)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「天使がお空で転んで」
天使がお空で転んで
瓶づめのコンペイトウをばらまいた
コンペイトウはきゃらきゃらきゃら
と転がっていった
地上の子供達は
桃色の指をくわえて
お空を見上げる
青や赤や白のコンペイトウは
小さな舌の上で
ほろりと溶けた
その夜
子供達の安らかな寝息に乗り
夢に閉じられたまぶたから
銀河が流れ出し
宙へいく筋もの
白い道を作り
天使は摘んだ星の花をふりふり
微笑んで道をトコトコ行った
(2004.5.17)
「花と雨」
ちいさくちいさくちいさくなあれ
ちいさくちいさくなって
もっとちいさくね
もっともっと
さあたねに
なったよ
また
はなが
さくときが
くるといいね
おおきくおおきくおおきくなあれ
おおきくおおきくなって
もっとおおきくね
もっともっと
さあくもに
なったよ
また
あめに
なれるときが
くるといいね
ふたりまた
あえると
いいね
(2004.5.8)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あをのをと」
とおいおそらを
みあげれば
いつも
そこに
あをのおと
くも
あめ
にじ
ゆき
おそらは
すべてを
のみこんで
おおきな
こきゅうを
するのです
なみだ
わらい
いかり
うらみ
にこり
おそらは
それらを
だきしめて
せなかを
よしよし
するのです
おそらのなかで
てんしたち
いっせいに
らっぱを
ならすけど
あをのおとは
いつも
とても
しずか
みんなを
おどろかせては
いけないよ
(2004.1.29)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「親指姫」
親指姫になりたいな
ベッドはタンポポ
お布団はチューリップ
枕はハルジョオン
黄色や赤の夢を見るのです
テーブルはキノコ
椅子は蛾が置いていった繭
クッションは木の葉
カップはどんぐり
お皿は薄い栗の実
ミツバチが運ぶ蜜を飲み
ぶどうを一口かじります
ドレスはオレンジのバラで
靴はひまわりの種
カンガルーポーのリボンをつけて
蜘蛛が編んでくれたベールをかぶります
おしろい花のおしろいもはたきます
髪飾りはアベリア
小さなイヤリングは朝露
そして、小さな王子様に見初められ
小さな結婚式をし
小さなおうちで、暮らします
親指奥さんは
お豆の皮のお財布に
ピーマンの種をちゃりんと入れて
お買い物に出かけます
今日は何がお買い得?
親指奥さんは
バラの刺を針にして、蜘蛛の糸で
だんなさんの靴下を
繕います
いつも穴があいてしまうのねえ
親指奥さんは
貝の中にお水を入れて
サルビアの茎でかき混ぜてお洗濯
きゅっとしぼって
寝ているカブト虫の角の上に、
お洗濯ものを干します
クルミの殻の中で、赤ちゃんがゆらゆら
いい子で眠っています
今日も
いい
お天気
(2004.2.3)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「冬のおばあさん」
冬のおばあさん
枯れ木のてっぺんで、何してるの
これはね、春の女の子のための靴下
これは、夏の娘のためのワンピース
これは、秋の奥さんのためのエプロン
雪の結晶をつなげて、作っているんだよ
女の子は、かわいい足を傷つけないようにね
娘は、美しい体をもっと美しく見せるようにね
奥さんは、木の実やなんかを沢山集められるようにね
でも、おばあさん、雪の結晶をつなげたって
春には
あんた、やぼなことはお言いでないよ
物じゃなくて、気持ちなの
気持ち
それに、寒い冬には
手仕事が一番なの
あんたも隣にきて、
何か作りなさいよ
そんな、暇にしてるんだったらね
冬のおばあさん、
楽しそう
ええ、楽しいですとも
これからのことを考えるとね
あたしはさっぱり、いなくなっちゃうけどね
(2004.2.9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「雪」
古いお話を読むように
雪は静かに
傷も
思い出も
覆ってゆく
森の中で
ふくろうは羽をふくらませ
目の前の
白いちらちらを
じっと見ている
きつねも
少し立ち止まって
白い息を吐いている
私も
急いでいた足を
しばらく止め
雪が
全てを覆うのに
まかせる
川はまだ
強く凍っているけれど
大地はあたたかい
ああそう、
いつも、あたたかいのだった
雪は
静かに・・・・
(2004.2.14)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「アリス」
アリスはウサギを追いかけて
走って 走って
走るそばから
ネコやイモムシ、卵やトランプ
じゃらじゃら
いっぱい
くっついた
アリスはネコにからかわれ
迷って 迷って
迷うそばから
キノコやお茶やバターフライ
バタバタ
みんなで
追ってきた
アリスはブタの子守りして
あやして あやして
あやすそばから
牡蠣やドードー双子くん
ギャーギャー
連なり
しかめ面
アリスは女王に追いかけられ
走って 走って
走るそばから
牡蠣やドードー双子くん
キノコやお茶やバターフライ
ネコやイモムシ、卵やトランプ
リボンやレースや絹のハンカチ
どんどん
落として
いったとさ。
(2004.2.22)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「bara」
薔薇の、いちまいいちまいの花びらのその奥に
かすかに光る小さな電灯
夜にぱちりと音がして
灯りが点る
その音を
確かに聞いた
ショパンのノクターンを聞いていた
彼が亡くなる前に作った曲
やさしい調べに
目を閉じていた時
電灯が点る音がして
目を開けて、薔薇に聞いた
「起こしてしまいましたか。」
薔薇がつぶやいた
「この曲は、体が休まりますね。」
「ショパンですよ。」
「ああ、遥か昔にも聞いた記憶があります。ありがとう。
私は多分、明日か明後日には散り始めるでしょう。」
「もう、明日か明後日ですか。こちらこそありがとう。」
数日後
薔薇の、いちまいいちまいの花びらのその奥に
かすかに光る小さな電灯
ぱちりと音がして
灯りが消える
その音を
確かに聞いた
その日から、薔薇は散り始めた・・・・
(2004.5.4)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「リリア」
リリア、髪がそんなに
からまったままで
そんなじゃ、道行く度に
野バラやさんざしの枝がからまって
しまうでしょうに
あなた
笑って裸足
サーシャ、ほっぺがそんなに
真っ赤なままで
そんなじゃ、道行く度に
お熱を計られて
しまうでしょうに
あなた
笑ってくるり
ジョゼフイン、お手手がそんなに
ひらひらしたままで
そんなじゃ、道行く度に
魚や蝶なんかが触って
しまうでしょうに
あなた
笑って目をぱちくりこ
サッチン、スカートがそんなに
つんつるてんで
そんなじゃ、道行くたびに
犬や猫やカラスが笑って
しまうでしょうに
あなた
おひざも
にこにこ笑ってるわ・・・・
(2004.5.8)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「大地のスプーン」
大地のスプーンで
風と
雲を
すくって
そのまま、そのまま
青い空も軽々と乗っかった
鳥もちょこんと
虫たちも
花の種
みんな
おいでおいで
夕焼け
星
月も
みんな乗っかったかな
太陽が
こっそり笑って 見てるよ
(2004.8.9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「湖」
湖は一人でしんとしていました
やがて秋風がその上を撫でて行ったので
やっと安心して、揺らぎました
色づく赤や黄色や青い空を、そこに映しました
湖は
薄いガラスでできた球を
ぎゅっと握り締めたり
緩めたりしています
あまり力を入れすぎると
壊れてしまうから
壊してしまわないと
冬は来ない
冬には何も産まれることはないのに
何故
壊さなければならないのか
湖は考えあぐねて
力を込めたり
緩めたり、しています
枯葉を散らしていた秋風は
振り向いて 飛ぶのをやめて
湖のほとりに
膝を抱えて、うずくまります
今日は休日
色々な人が
そこを訪れては
帰って行きます
子供たちは不思議そうに
湖に逆さに映った
色とりどりの景色を眺めたり
そのへんの小枝を
投げ入れて
壊したり、します
(2004.10.19)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「潰れた風船」
結構高く飛んだけど
無論 雲には届かずに
徐々に萎んでいったので
まっさかさまに落ちました
落ちたところは木の枝で
危うくなんとか引っ掛かり
しがみついてはいるものの
月のない夜は寂しいな
桜はやがて散り散りに
いつの間にやら夏になり
燃える太陽容赦無く
ゴムの体は干からびた
もはや体に力無く
台風一過、吹きまくり
ピューと彼方へ飛ばされて
落ちたところは道っ端
ああ、願わくはもう一度
高いお空へ飛びたいな
風や小鳥と遊んだり
地上を遠くに眺めたい
それからしばらく風船は
道路の端で汚れつつ
たまには雨で洗われて
涙を流してございます
どこに希望があるでしょう
何に救いがあるでしょう
ただ横たわる風船の
笑い皺のみ語ります
これより悪くはないでしょう
私は待ちますこのまんま
ただの潰れた風船を
哀れと言っては悪いです
哀れと言うのは早合点
お話に続きは
ないけれど。
(2004.5.11)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「男の子たち」
年とった蛍の絨毯に
腰を下ろした
今日から始まる映画は
何かな
男の子たちはポプコーンのかわりに
尖った小石をつまむ
つまむ
つまむ・・・
男の子たちはコーラのかわりに
お互いの炭酸を
吸い合う
見上げても星は無い
全て、黒い天幕で
覆われているので・・・
ポケットの中のビー玉だけを弄び
トイレに行きたい子が
ビニール紐を足に絡ませながら
出口を探したけれど
倒れ伏して、起き上がることはなかった
(2004.5.12)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ウサギと狼」
ウサギがいた。俊足の女の子の。
狼がいた。俊敏な男の。
ウサギはあるとき狼に会い、言った。
「狼さん、私を捕まえるなら全速力で。」
狼は
「ああ、もちろん。」
ウサギはにっこりした。
ウサギはまたあるとき狼に会い、言った。
「狼さん、今日はもうお腹いっぱい?」
狼は
「ああ、そうだ。お前の友達うまかったぞ。」
ウサギはにっこりした。
ウサギはまたあるとき狼に会い、言った。
「狼さん、この足の罠を取ってくれない?」
狼は
「いいとも。」
とウサギを罠からはなしてやった。
ある時、腹が減った狼は、あのウサギに会った。
「今日は、お前を狩るぞ。」
ウサギはにっこりした。
ふと、狼は言った。
「でも、お前じゃなくても、いいんだがな。」
「いいえ、狼さん。それが私たち二人の、犯し難い、神聖な運命なのです。」
そこで狼は、全速力で逃げるウサギを、同じく全身の筋肉が壊れるほど
追いかけて、ひと噛みで頚動脈を食いちぎった。
狼の喉を流れるウサギの血は真昼の太陽のようにきらめき、暖かくて甘かった。
(2004.5.22)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くろいとり」
ふにゃふにゃの雲を
えいえい踏んずけて
行っちゃった
あの子は
あかいとり
ぐずぐずの雲を
ぶにぶにけ散らして
行っちゃった
あの子は
あおいとり
もやもやの雲を
ぐるんぐるんかき混ぜて
行っちゃった
あの子は
しろいとり
ぬるぬるの雲を
ずおおと吸い込んで
行っちゃった
あの子は
くろいとり
くろいとり、くろいとり
今日はどこで吐くの?
今日はどこで吐いたらいいの?
(2004.8.22)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●何かの印象を語った詩(キリン・水・土・草・海などです)
「朝」
幼い神様がひとさじすくって食べたような朝だ
桃色の蝶の羽ばたきから生まれたような朝だ
蜜壷の中にとろりととけているような朝だ
海の泡から目覚める美少女のような朝だ
幾千もの銀の矢が降り注ぐような朝だ
調律したばかりの楽器のような朝だ
真珠貝に包まれているような朝だ
蛙の皮膚が光りだすような朝だ
子馬の鬣を梳いたような朝だ
涙を拭いた拳のような朝だ
酵母が弾けるような朝だ
薔薇の芯のような朝だ
鯨の歌のような朝だ
葡萄のような朝だ
鋼のような朝だ
珊瑚礁の朝だ
砂漠の朝だ
霧の朝だ
あさだ
あさ
あ
朝が
来ましたよ。
(2004.1.19)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「夏」
するすると
涙が流れていって
海になり
飛びこんで
気の済むまで泳いだ
ある
入道雲の
夏
何を忘れようと
していたんだろう
それすらも忘れて
すっきり顔で
陸に上がった
ある
朝顔の
夏
これから
どこへ行こうか
地図を広げて
ミントをつまんだ
ある
ひぐらしの
夏
さらさらと
手紙を書いて
冷めた
ポストへ入れた
ある
星祭の
夏
(2004.1.23)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「空の傷」
虹だ
虹は空の傷
空は
急いで雲で
傷を塞ぐ
太陽が
何千年も、何万年も、何億年も、
輝きを失わず
素晴らしい勢いで
燃え続けるあまり
雨が
幾千も、幾万も、幾億も、
きらめきながら
自分を通り過ぎ
失われて行くあまり
空は
繊細な心を
その度に傷つける
その傷さえも
美しいということに
まったく気づかずに
(2004.2.2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「フラメンコ」
つま先をガッと入れ
踵を踏み鳴らす タコン
足の裏全体で ゴルペ
つま先で プランタ
ファルダをつまみ足をちらりと
あくまでも優雅に
背筋を伸ばし
顎を上げ
くるりと回る ブエルタ
足を入れて
ターン
腕はひらりと交替し、またもとに
足も同じ位置に戻る
手を打ち鳴らす パルマ
はじめは小さく表拍子
次は大きく裏拍子
足はプランタ ゴルぺ
交互に早く
扇子を回す
男を誘う
いっしょに踊らない
炎のように
セビジャーナス
春祭りの踊り
春を呼ぶ
踊りは楽し
全てが剥がれ落ちて行く
漆喰の壁のように
ゴルペ ゴルペ プランタ
ブエルタでくるり
花のように広がるファルダ
手を上に
笑顔で
スペインの日差しが、顔を照らす
(2004.2.9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「スプーン」
ミルクティー かき回した
ばかり
少し
クリーム残り
水薬 舌に運んだ
ばかり
少し
だいだい色
ゼリー すくった
ばかり
少し
震え
夕日 映した
ばかり
少し
曲り
春 乗せた
ばかり
少し
軽く
(2004.2.24)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「3錠の星」
薬を何錠飲めば良いのか
しつこく聞く人がいる
さっきから何度も繰り返された質問なので
答えるほうは
だから3錠だって言ってるだろう
と怒鳴る
しつこく聞く人は
薬の錠数ではなく
それを何度も聞く自分
いいかげん頭にきて怒鳴り返す人
怒鳴り声で震えるガラス
消えていく振動
窓の外の木枯らし
流れて行く暗い雲
を
多分
愛しているのだ
しつこく聞かれた
薬の錠数は
誰にも
相手にされず
宙ぶらりん
寂しくなって
一粒ずつ
空に昇って
星になった
あそこに光る
3錠の星を
誰か、
飲み下して
(2004.3.2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「桃の花」
ぼんぼりに
小さな灯り
ひとつ
点いた
あの子どこの子
桃色の着物の子
知らない子
甘酒飲んで行った
ふうん・・・・
ぼんぼりに
小さな灯り
もうひとつ
点いた
(2004.3.4)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「キリン」
長い睫毛
夜風受け
首伸ばし
月に届く
星を舐め
夢を見る
蜃気楼の
アフリカ
欠伸して
朝を食べ
誰よりも
目線遠く
あこがれ
背に乗せ
きょうも
あるいて
(2004.3.5)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「箱の底」
箱の底は暗かった
平らで。
箱の底で小さな箱を作り続けた
小さな箱の中に入る小さな箱を
また作り続けた
四季は移ろい
風が吹き
箱の外では様様な出来事が
起こり
箱を震わせた
僕は永遠に
箱から出ずに
小さな箱を作り続ける
箱の底は暗い
平らで。
箱の上は少し明るく
青い。
空へ届きますようにと
僕は
小さな箱を作り続ける
箱の外の世界のために。
(2004.5.5)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「葉」
私に触れてもいいですよ
どうですか
素敵な触り心地です
絹 ビロード キュプラ
どれにも引けをとりません
それどころか
私はいずれは散っていく身なので
今は非常に光輝いているのです
この輝き
プリズム ダイヤ シャンデリア
どれにも引けをとりません
それどころか
私はさっき、蝶の幼虫のお腹を満たしたので
いずれはあの青空へ、羽根を広げて
ひらひらと舞い飛びながら
人々の目を楽しませ
花々に感謝され
鳥のエサともなるのです
この働き
大臣 教師 母親
だれにも引けをとりません
私に触れてもいいですよ
こんな素晴らしい私に
触れてもいいあなたはなんて
幸せ者
(2004.5.22)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「火」
ははははは!
私は何をやっているんだかよくわからないよ
君は踊っているのかい
私が踊っているのかい
ははははは!
面白くてしょうがないよ
みんな私を見るからね
見ると、何かしら変化が起こるんだろうね
じっと見られたり
びっくりされたり
にっこりもされたり
恐れられたり
滅多にないだろう
私の踊りを止めるものなど
ははははは!
楽しくてしょうがないよ
何もかもが黒くなっていくからね
物質も心も何かしら変化するんだろうね
あ、水を持ってきたね
もう消しちゃうのかい
また何をやっているんだかよくわからないうちに
消されちゃって
永遠に、おかしなまんまだよ
どうやって踊ってりゃいいんだろうね
わからないよね
そんなこと
ははははは!
じゃまた見てね!
じゅっ
(2004.5.22)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「水」
私の中へどうぞお入りなさい
上を見上げると
水面にゆれる光の鏡が
あなたを見下ろすでしょう
あなたは手を伸ばす
伸ばしたその手を
私がゆるりと包む
大小の美しい泡が昇る
あなたの命が泡となり
水面に抱かれる
私の中へどうぞお入りなさい
私はいつでも
あなたを受け入れますよ
あなたにその準備は
到底ないでしょうが
あなたのそのほとんどは
私なのですが
(2004.5.22)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「石」
ああもう、ごちゃごちゃと話しかけないでくれ拾わないでくれ投げないでくれ
夢見ないでくれ期待しないでくれ絵かかないでくれくすぐったいから
(2004.5.22)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「土」
あっ・・・・・・
ミミズ
くすぐったくっていい気持ち
あっ・・・・・・
根っこ
深くっていい気持ち
あっ・・・・・・
地下水
冷たくっていい気持ち
あっ・・・・・・
あったかい・・・・
・・・これ自分だわ
(2004.5.22)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ことり」
湖の上を
朝もやの銀の翼が
なでる
ことり
ことり
名もないことり
ひとり震えて
上から落ちて
ことりは
ひとり
ひとりのことりは
いずれは死ぬの
銀の翼に
抱かれてね
(2004.5.31)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「頭痛」
漬物石をどかして
中を覗いたら
漬物石が漬かっていた
(2004.6.28)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「渇き」
砂漠を歩いて
自動販売機を見つけた
カブトムシ売ってた
(2004.7.4)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「痒み」
紙と鉛筆
Zばかりを
書く
(2004.7.8)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「肩凝り」
電話の向こうで
人生相談が始まった
受話器が重くなった
(2004.7.13)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「海」
貝殻の奥には手
綱をかける
真珠の綱を
いくつもの手紙が届き
いくつもの返事を書く
宛先を忘れた手紙が
真珠の綱に引かれ
貝殻の奥には闇
真珠は散り散りに
珊瑚は固まる
いくつもの夜が溶け
いくつもの夜が蒸発した
どこにも届かない手紙が
真珠の中に眠り
貝殻の奥には音
耳を訪問し
耳は赤くなる
いくつもの楽器が惜しみなく
いくつもの楽器が惜しまれつつ
彼方へ向けられた手紙は
真珠のリボンをかけられ
あなたへと届けられる
(2004.7.13)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「林檎」
赤い炎をまとって
深く眠っている
香りは
遠くの道まで
誰かが初めに歯を立て
林檎は目覚める
その音は
遠くの雲まで
余韻を耳に
一粒残った種だけが
布団をかぶって眠る
(2004.7.13)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「オレンジ」
鞄を開けたら
オレンジの香りがいっぱいに広がって
故郷に帰ってきたと
やっとわかった
今夜は
ここで醸造ったワインを
ろうそくの灯を燈して
飲もう
(2004.7.20)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「雲」
ぎゅっとつかんだら
困った顔で少しもがいて
離してあげたら
逃げていった
手を広げると
涼しくていい
匂いがした
(2004.7.20)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「朝顔」
手を伸ばすなら
どうせなら空へ
雲に絡まって
紅色や
紫色
キレイにたたまれた傘
ふわりと開きました
夕方
ひぐらしが呼びます
しおれるなら
思いきりしょんぼりと
せっかく広げた傘
キレイに売れ残りました
(2004.7.20)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やどかり」
ほどなくして部屋に灯りがともり
カーテン越しに、彼女がベッドに入るのが見える
彼女のかわいらしい家は
螺旋階段の
オートクチュール
誰にも
か細い銀の鍵は渡されない
逞しい波でさえ
優しい潮風でさえ
憂いを帯びた星の光でさえも
ほどなくして部屋の灯りは消え
彼女の組み合わされた指から
穏やかな夢が寝息が
波にゆすられ、小さな宝石となって海底へ・・・・
(2004.7.25)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「入道雲」
「この問題分かる人」
一斉に挙がった手
誇らしげに伸ばされた
半そでから生えた腕
「はい、じゃあタクミ君」
・・・手、挙げてないのに
何で当てるんだよう
ちらっと窓を見たら
雲、大売り出し中
だって分からないよ
だって分からないよ
そうだよなあ~
雲が答えた
まあいいじゃ~ん
雲が言った
「・・・分かりません」
それでいいんじゃ~ん
雲、うるさい。
(2004.7.25)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「カマキリ」
カウンセリングの先生は
じいっとこっちを見た
ひえ。
(2004.7.25)
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「リボン」
海に豪華なレースのリボン
空に輝く七色のリボン
鳥さんちょっと結んでくれませんか
「いやですよ」
(2004.8.1)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「トマト」
ガブリと食らいついたら
トマトに突き刺さって
乳歯が
抜けた
笑ったら
マヌケな顔
赤い汁
飛んで
ヘタはそのまんま
(2004.8.5)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「海水浴」
潮騒
静かな鼓動
心臓のリズム
疲れきった手足は
砂をまぶして
カラリと揚げられに
太陽の下
(2004.8.5)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「背中」
メスがキラリ
「背中の羽根はどうしますか?残しますか?」
ああ先生、その羽根はどんな色なのですか
「夜のように黒いですよ。」
それでは、取ってしまって下さい
メスがカチャリ
「取りましたよ。どうですか?」
ああ先生、こんなに涼しくて寂しい気分は初めてです。
(2004.8.20)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「鹿」
やさしい鹿は
首を
うとうと
かしげて
眠る
緑の
草原
黄色い
お花
やさしい鹿は
黒い目
ぱっちり
開いて
目覚める
宇宙の
どこか
小さな
星で
やさしい鹿は
鼻を
ひくひく
匂いをかいで
歩み始める
素敵な
ことに
私の
ほうへ
(2005.2.15)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「河の流れ」
河の流れ
ごく薄い青
河の流れ
深緑
空 曇り始め
雨 ぽつりぽつりと
波紋をつくり
河の流れ
眠くなるまぶた
雨 急に激しく
河を急がせ
何かに追われるように・・・
雨 次第に静かになり
波紋も減り始め・・・
河の流れ
日が差し
きらきらと白
河の流れ
日が暖め
きらきらと銀
重くなるまぶた
寝息は
深く
小さく
深く
小さく・・・・
(2005.2.20)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●「気分」を語った詩
「淋しきスープ」
淋しさを
そっとスープに浮かべれば
淋しきスープのできあがり
スープの湯気は
白樺木立
羽根を休めていたと思っていた小鳥は
冷たく硬く
スープの中身は
卵のかけら
割れるとは思わず
乱暴に置いた
そっとすすれば
塩辛いばかり
泣き方を
学校で教わらなかった
それとも
各自自習だったのか
自習の時間は
皆秘密を打ち明け合い
静かにするのが難しかった
私は静かだった
白樺木立のことを思っていたので
スープの湯気の向こうに
ぼんやりと見える自分が
淋しきスープを飲み干すため
目を閉じる
欺瞞のスプーンはいらない
(2004.1.29)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「石英」
切れ切れの
記憶
水や鳥
雲や影
温んできた
せせらぎに
ふと降りる
白い足
柔らかい指で
つと取られ
しばらく後
また捨てられ
泡が
くるりと周りを囲み
その後は
また静か
埋め尽くす花びら
水面は淡い色
雲が来て
日が翳り
その色もまた
(2004.3.15)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「桜の園に降る雨は」
さくらのそのにふる雨は
くるしく切ない春のゆめ
らくえんの蝶逃げ ああ
のこりか いまだ 蘇る
そぼぬる空に君をおもふ
のくたあん響くかの夜に
にんふも聴く淡き初恋の
ふるえただ泣くのは誰そ
るり色に光る水面の影の
あいまいな諦めの息から
めくるめく季節はあまく
はかなきものつもるあさ
(2004.2.10)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「若葉の頃に吹く風と」
わかばのころにふくかぜと
かなた遠くへもう行こうぜ
ばらの香は永くとどまるか
のちのちの恋は捨てがたく
こわばり彼女とすれちがふ
ろうかをあるくさざなみに
にくむことおぼえたこころ
ふかく透明な闇とふらすこ
くらがりにおちついた夢の
かすかな鼓動見失うならば
ぜうすの瞳は支配できるか
とわに僕たちが逃げたにわ
(2004.2.17)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ロシアの映画で」
ロシアの映画で
ロシアの言葉を聞きました
ロシアの言葉は不可思議で
怒っているのか
泣いているのか
喜んでいるのか
哀しんでいるのか
よくわからなかったり
するので
枯野に潜む小鳥のように
それらを探して止みません
ロシアの映画で
ロシアの言葉を聞きました
ロシアの言葉は心地よく
舌を丸めたり
唇を尖らせたり
語尾をやさしく伸ばしたり
子音が残ったり
母音は隠されたり
するので
見つけた小鳥を両手ですくうように
それらを抱いて離せません
ロシアの言葉は
深い悲しみを背負っているように聞こえるので・・・・
(2004.5.6)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「風はそよ吹く」
風はそよ吹く
若葉はきらめき
憧れ乗せて
雲は流れゆく
そして私は
翼を広げて
虹の彼方へ
溶けて行く
夕べひそかに
小鳥はまどろみ
明日の果実を
夢の中に見る
そして私は
翼を休めて
優しい星を
まくらべに
(2004.5.10)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただ黙っている」
ただ黙っている
それはとても難しい所作
沢山言いたいこと、沢山ある
雲の形が面白かったとか
夕焼けが今までで最高だったとか
ゴミ出すの忘れたとか
背中のホクロが気になるとか
ただ黙っている
それはとても難しい所作
髪の毛一本一本が沈黙していなければ
爪の一枚一枚が目を閉じていなければ
いけないから
沢山言いたいこと、沢山ある
発したと同時に消え去ってしまうものでも
あなたの耳朶にひっかからなくとも
わたしの海馬に残らなくとも
沢山ある
ただ黙って
膝を抱えて
ただ黙って
草原の草のように
光り落ちる朝露のように
ただ黙って
それはとても難しい
ただ黙っていると、何かがちろちろと鳴り始める
そのことについても、沈黙を
(2004.5.14)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ささやかな雫の影を」
ささやかな雫の影を追い
少女は葉にひそんだ
そうしたら
風は目を閉じて
優しくなり
親鳥は我が子を見下ろし
まどろんだ
風は思い出す、少女の頬を
鳥は思い出す、少女の羽を
少女の胸にある雫は
知らずに溢れ
ヒナ鳥はただ求めるままに
くちばしを開き続け
少女の胸にある炎は
眠らずに燃え
ヒナ鳥はただ求めるままに
叫び続け
ささやかな雫の影を追い
少女は再び葉にひそんだ
そうしたら
風は目を閉じて
嘆いていた
親鳥は減った我が子を想い
まどろみを忘れていた
少女はクスリと笑って
葉をつんで
飛び立った鳥と共に
再び雫の影を追うことはなかった
(2004.6.23)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「百合の花」
百合の花を両手に抱いて
白い翼は背に
レクイエムが響く
山々の彼方
草原はせつないほど緑
泣くようなリズムで
揺れて
揺れて
揺れて
昇っていたんだ 今
強い残り香は 言葉
涙はいつまでも頬を流れるけれど
やがては涸れて
百合の花は
ここにも
あそこにも
両手に抱えきれないほど
(2004.8.9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「裸の夏風」
最後までとっておいた線香花火
もう一度、かくれんぼしたかった
ほんとうにね
蛍が浴衣に留まって
そこだけが焦げたようだよ
さわるとね
唇からスイカの種がポトリ
とても怖い話だった・・・・
厳しい目つきのオニヤンマ
捕まえられなかった
きっと来年も
もう行くの
覚えておいてね
私のこと
裸の夏風
来年もまた
私の肩を
見つけて蹴ってね
やくそくね
ぜったいね
海で失くしたもののこと
それは言わないから
さようならを言ったら
決して振り返らないから
(2004.8.13)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「散る花」
花と花とが接合して
世にも美しいものが咲いた
小粒で甘い雨が落ちて
あまいものは
ひとつ
ふたつ
中心には蜀台
燃える炎
夕日はあの色
散れと言ったから散ったのだ と
桜はうそぶく
誰の胸にも咲く
一本の花
重ね合わせた指先に
蝶がはらりと止まり
そのはばたきから
ゆっくりと竜巻が生まれ
花びら一枚一枚をひき千切り
それら
天高く
ごうごうと燃える
炎のように
自由にたなびく
雲のように
ばら色に染まり
ひろがり
ひろがり
収束し
接合して
世にも美しいものをふたたび咲かせ・・・
(2004.8.24)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「夕暮れ」
やかんがピー・・・と鳴った
暖房のきいた部屋で
金魚は泳ぎ続ける
何もない夕暮れ
何もない夕暮れ
どこかのドアが叩かれている
犬が激しく吠え立て
やかんはおとなしくなった
何もない夕暮れ
何もない、夕暮れ
(2004.8.25)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「飛行」
僕は飛ぶ
真夜中の、明け方の、昼間の
雲と空とが交わった
蒼いみかげいしの断面みたいな景色の中を
僕は飛ぶ
星の花園の、月のさざ波の、夕日のとろりとした吹きガラスの
陸と宙との
永遠に交わらないぽっかりを
僕は飛ぶ
僕は飛ぶ
やっとあの人に会うために 僕は飛ぶ
あの人は額に灯りをつけて
静かに座って
僕の帰りを待つ
僕の訪れを待つ
初めて出会う僕を待つ・・・・
あの人の瞳は
まだ輝いてはいない
僕は呼鈴を鳴らす
呼鈴は小さな鳩みたいに
かわいらしく鳴く
かわいらしく鳴く鳩には
もいだばかりの
朝露したたる
重い木の実を
あの人には
ポケットに詰めた
星の花
月の波
夕日のガラス玉を
あの人は笑って受け取る
僕は翼を閉じて
あの人の部屋へ入り・・・
同時に出て・・・
あの人の部屋にはずらりと
子供の僕、今の僕、大人の僕、おじいさんの僕が並んで
待っている
僕の帰りを
初めての僕を
あの人の僕を
輝ける瞳のあの人を
さあ、いま・・
呼鈴をならすよ
僕は飛ぶ。
(2004.10.2)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「言の葉」
瞳をひらいて
じっとしている
その横顔
たゆたう緑の髪
爪は輝き
唇はものうげ
明日、雲間から光が差したら
そしたら行きましょう
白いもやの中で
ひそひそと相談している
漂う夕べ
雲は
茜に
染まり
森の上に
ある文字を書きつける
瞳は
その文字を読むために
ひらかれていて
蔦の絡まる幹から
白い腕が伸ばされる
その文字を指でなぞり
爪で剥がして行く
剥がされた文字が
地面に落ち
沁みこみ
ある日
一つの言葉が世界に向って放たれる
(2004.10.11)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「雨」
か細い琴線が遠い方から落ちてくる
あじさいは
紫やピンクにリズムを合わせ
カタツムリは午後のお茶に間に合うだろうか・・・
ピアノをいつも同じところで間違える
隣の少女
繰り返す雨音は
むかし恐竜のまぶたを濡らしたもの
一粒一粒に音符が染み
それらがはじけて・・・・
隣の少女は
いつか弾けるようになるだろうか
繰り返す雨音
少女の弾いた曲
恐竜のうなり声
それは
通りすがりの少年の唇を濡らし
少年の口ずさむ歌は
うららかなユニゾン
午後のお茶に間に合ったカタツムリは
それを
聴くことができるかもしれない・・・・
(2004.6.11)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「眩しい朝」
とても眩しい朝
起きたくなくてまぶたを押さえた
金や銀がくるくると舞う
まぶたを開けると蝶が薄い羽根を開いた
分からないということが
一つの免罪符になり
むっとする中を
人から人へヒラヒラ飛んだり
蜜を吸ったりできた
蜜は甘くてとろけるような味
でも
とても不味い
死にたいということが
一つの通過儀礼になり
ガラスの箱に捕らえられ
振り返ると人々が
ヘラヘラして
一人じゃない君は絶対に一人なんかじゃない
でも
とても寂しい
飛んでいると
空を切る音しか聞こえない
それはよかったけど
また、まぶたを閉じている
羽根ももう閉じてしまっていい
とても眩しい朝
起きたくなくてまぶたを押さえた
赤や黄がちらちらと燃える
まぶたを開けると黒くなった蝶が
ことりと倒れた
(2004.7.12)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「オ ネ ム リ」
お前の望み通り
日は暮れた
恐竜も眠るじかん
星もまどろむよ
お前がふっと息を吐くたび
ふっふっと
ふっふっと・・・
星は瞬いているが
泣いているのじゃない
お前は
やさしい臓器を
持て余しているね
それは、誰からもらった心臓なんだい
お前の望み通り
朝が来たよ
昨日は月が素晴らしかったのに
お前は眠っていたね
お前がすっと息を吸うたび
すっすっと
すっすっと・・・
日は輝いているが
笑っているのじゃない
お前は
すべりの良い皮膚を
持て余しているね
それは、誰にあげる瞳なんだい
さあ、今日もお前の望み通り・・・・
(2005.11.18)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「雨粒」
昨日から
ずっと聞き続けていた
雨音が
ふっと
私の手を取って
まあるい輪に誘ってくれました
雨粒のひとつひとつが
お喋りしていました
もう冬近くなので・・・
これからのことを
もうすこし寒くなったら
雪のドレスを着るので
その相談やなんか
氷の靴も履くので
どんなリボンをつけましょうかとか
色々と・・・
私は楽しかったのですが
一人でぽつんと
していました
まあるい輪の中で
私一人が
にんげんだったので
(2004.1013)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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