この視点の日々

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短編2 人間に踏み潰されるアリの視点

人間に踏み潰されるアリの視点の日々

「この世界には神様がいる」……と聞く。
苦労すればその分だけ将来幸せになれるらしい。
それじゃあ、神様は苦労した分の幸せを私に与えるはず。
私はそう信じていた。

―私の目の前で罪も無い友人が「ニンゲン」に踏み潰されるのを見る瞬間までは。


「生物は恋ができる素晴らしい種である」……と聞く。
愛することを美徳と考え、子孫を残す事を幸せと考えるらしい。
それじゃあ、生物である私は美しい愛が出来るはず。
私はそう信じていた。

―働きアリとして女王アリに一生を捧げる運命だと認めるまでは。


「『ニンゲン』とは道徳心があり、命を殺める事を悪と思っている」……と聞く。
私達ほどの体力を持たないかわりに、類まれなる知能を持ち、全ての善悪を判断できるらしい。
それじゃあ、私達が危害を加えない限り、ニンゲンとは共存できるはず。
私はそう信じていた。

―子供に好奇心で潰され、大人に嫌悪感で殺されている実態を知るまでは。




ニンゲンには苦労と幸福を平等にもらう権利があります。
私達にはありません。

ニンゲンには恋をする美徳があります。
私達にはありません。

ニンゲンには明日殺されない保障と自信があります。
私達にはありません。


これを見ている「ニンゲン」の皆様、
あなたたちは幸せでしょうか。
これだけの幸せをもちながら「いいえ」と答える方、
どうか私といのちを交換してください。

―私達の方が、きっと有効に使うことができますから。





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