この視点の日々

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novel 接点

4章 接点

彼女が死んだと知ってから3日。

いまだに事故瞬間以外の記憶は戻らない。

医者が言うには、「このタイプの記憶障害は心理的ストレスが原因の事が多いが、君の場合そのストレスが大きすぎる。時間はかなりかかると思った方がいい」らしい。


心理的ストレスは俺の場合、間違いなく彼女だ。



俺の記憶を戻せる可能性のある人は、もうこの世にいない。



さっき事故の記憶以外は戻らないと言った。

正確には戻りたくないのだろう。

これ以上真実を知るのは怖かった。

これ以上彼女を受け入れる自信が無かった。

この前佐藤に返してもらった日記帳もずっと、病室の棚の中だ。



今は毎日心理カウンセラーの人が部屋に来ている。
その人は毎日話をするのだが、正直聞いていない。


たまに俺の友達が来る。
思い出せない人もいるが、高2以前の友達だったら仲良く話せる。
それでもときどき上の空になることがある。



ただの慰めなんていらなかった。

なんとかしてあげようという気持ちが正直ウザかった。




拒絶するとだいたいの人がこう言って帰る。

「しょうがないよな。お前にとってあんなに大事だった綾ちゃんが死んだんだものな・・・。」




今はテレビをよく見ている。
おとといぐらいまでは見る気が無かった。
ニュースとかで自分が出ているのを見てしまうのが怖かった。



でも今ではニュースにも出てこない。

「どれだけ日本人はのん気なんだろうな。」


今ニュースでは「逆立ちするサルがいる動物園」の話題でもちきりだ。

「あれから1週間もたってないのにな。知らないところで人が死ぬより可愛い動物を見ているほうが大切なのか。」
父が言う。



ニュースではもちろん事件や事故の報道はしていた。

自分と同じ境遇の人がたくさん報道されている。




そう、こんな苦しみを味わっているのは自分だけじゃないんだ・・・・・

今でも俺のほかにも苦しんでいる人がいるんだ・・・・・

それなのにお前らは逆立ちするサルを見ていたいのか?

この社会はとてつもなく腐ってると思った。



「・・・・・やっぱり今が言うときなんだろうな。」
突然父がしゃべり始めた。


「実は、今の母さんと結婚する前、別の人と付き合ってたんだ。その人と結婚するはずだった。」


「やっぱり・・・・死んだの?」


「ああ、プロポーズしようと思ってたデートの2日前だ。」


「事故で?」


「いや。殺人だ。」


「!!!」


「彼女の父親はとある企業の社長でな、なにかトラブルがあったらしい。それで家族全員殺された。彼女は完全に無関係だったのに。でも犯人への判決は無期懲役だった。死ぬことを望んでいるわけではないが、俺の中では死刑に値する罪だったのだがな。」


「・・・・・・・・・・」


「お前みたいに記憶喪失にはならなかったが、精神的にはひどかった。体重が半分ぐらいまで落ちた。」

ここらへんから父は涙目だった。

「でも彼女の事を思い出したくないとか思った事は無かったぞ。忘れる気にもなれん。彼女を忘れてしまったら、それは心の中の彼女を殺しているようなものだからな。」


「心の中の・・・彼女を・・・・・・殺す・・・・・・・・」



「そうだ。だからお願いだからお前もがんばって思い出してくれ。彼女との記憶を取り戻すことが天国の彼女にとっても幸せなことだろう。」




もともと俺は天国とか地獄とか信じていない。もちろん今も。


でも今は、それを信じるしかなかった。


「それにしてもどうして親子そろって同じ目にあうのだろうな。お前がもしほかの人と結婚したときに男の子が生まれたら要注意だぞ。」


「はは・・・・」


「よし、お前の骨折が直ったら気分転換に家族旅行にでも行くか。」



「わー、私北海道行きたい!この前友達の亜美ちゃんが行ってきたからさーどうしても行きたくなっちゃって」
学校帰りに来た妹の美由紀がそこにだけ食いついてきた。



「分かったよ。じゃあ北海道な。」


「やったー!」





北海道か。そういえば彼女は転校前北海道にいたんだっけ・・・・・。



棚の中の日記を久しぶりに取り出した。





あとがき

えーと・・・小説の解説ページで、「何と1作目から恋愛もの小説です」ってありますが、方向性が恋愛ものと著しく離れてる自分に気づきました。と言う事で、脳内変換をお願いします_| ̄|○

ついでに言っとくと「逆立ちするサル」はフィクションです(当たり前)

ええ、2章ラストで元章のお父さんが難しい顔してたのはこのせいだったんですよ!一つの謎がつながりましたな。

あと2章ぐらいで完結させる気なので、今年中(または年始あたり)に完成します。(たぶん)

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