この視点の日々

この視点の日々

novel 無題

最終章 無題

あまりにひどい状況だった。
深夜の海にドライブした帰り、酒酔い運転の車と正面衝突をおこしたのだ。

2人とも座席から動けなかった。いや、動く体力すら無かったのだろう。

両者―特に綾は―砕け散ったフロントガラスでかなりの出血をしていたからだ。


通常フロントガラスは堅い。しかし、いざ割れてしまうとあとはどんどん粉々に砕け散ってしまう。
運転席、助手席の人はこれが一番危険なのだ。

精一杯何とかしようとした。しかし、右足はハンドルと座席に挟まって動けない。(たぶんこの時に骨折したのだろう。)
綾の頬を何とか触れられるかどうかしか近づけない。




隣で彼女がどんどん弱っていくのをただ見ることしか出来ない自分が嫌だった。
自分のせいではないのだが、どうしても自分を責めてしまう。


壊れた車の中では彼女がいつも愛用していたラベンダーの香水のビンが割れていて、かなりきついラベンダーの匂いがしていた。

逆にこれは良かったのかもしれない。





彼女の血のにおいなんてかぎたく無かったし、




俺が彼女を思いだすきっかけになってくれたからだ。








・・・・・・そして事故の最後の記憶。


事故の後何分たったかわからないが、自分の意識も危うくなってきた。



そしていよいよ意識が無くなる・・・・・と思ったとき、



「ひ・・・ろ・・あき・・・・」

俺が聞いた彼女の最期の言葉だった。







「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

俺と綾の家族に全てを言ったとき、全員無言だった。




綾の家族にまで言ってしまったのはいけなかったかもいれない。

自分の娘が死ぬ瞬間を聞かされて良く思う親なんていない。


しかし、どうしてもみんなに聞いてほしかった。
彼女の親も俺が呼んだ。


なぜなら、それが生き残った人間の使命だと思ったからだ。



なぜ自分だけ生き残れたのか。

なぜ相手だけが死んでしまったのか。


残念だが、それだけは「運」としか言い様が無い。


それじゃあ生き残った人は何をすればいいのか。




死んでしまった人を忘れずに生きることだと思う。


前に父が言った「彼女を忘れてしまったら、それは心の中の彼女を殺しているようなものだから」という言葉がどうしても残っていた。


そしてそれがこういう結論に至ったわけだ。





「・・・・・・あなたにとっては思い出したくも無い辛い事でしょうが、勇気を出して言ってくださって、ありがとうございました。」
彼女の母が感謝してくれた。




多少複雑な気持ちにはなった。むしろ俺が彼女の親に謝罪しなくてはいけないのに。





その後数日間、警察の事情聴取もうけなくてはいけなかったし、結構あわただしくなった。




事情聴取の帰り、彼女の眠っている墓に行った。





「・・・・・いろいろあったけど・・・・・・・・今もおまえのことが・・・・・・・・・・・・・好きだよ。」



事故以来初めて笑ったように思った。




あとがき


がんばってハッピーエンドにしたし、最後の最後で恋愛ものっぽいセリフも入れたし。よし!悔いは無い!

事故の瞬間を語った番外編小説も作ります。(てか出来てます。)それもお楽しみに。

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