サイボーグ023

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第20話 ニヤ


10m以上はあると思われる幅の広い道路を
走る車はほとんど無く、
家路を急ぐバイクと自転車と歩行者がゆったりと進んでいる。
一応、町の中心のはずなのに、
今夜泊まる「民豊賓館」の前は人通りが少ない。

民豊は人口3万人に満たないオアシス都市である。
漢の時代は「精絶国」と「小宛国」の所在地で
唐の時代も重要な地であったが、
厳しい自然環境と地理的条件によって歴史から取り残された。

ホテルは、イスラム色の濃い外観を持ち、
部屋はお世辞にもきれいとは言えない。
砂漠公路の完成で、ウルムチまでの距離が一気に短縮され、
これからの経済や文化面での飛躍的な発展を期待したい。

夕食まで自由ということなので、ホテル前に出てみた。
近くの子ども達が10人ほど集まってきて、
珍しそうにおじさんを見る。
試しにコルラで買ったキャンディをあげると、
恥ずかしそうにしてたのは最初だけ。
次から次と集まってきて、
親しそうにカメラをのぞき込んでくる。

「写真撮ったろうか?」という身振りが分かったのか、
二人、三人とかたまってポーズをとる。
ファインダーから見える子ども達は、
どの子も屈託のない笑顔。
中央アジア的容姿でなければ、
日本の子ども達と何ら変わらない。

すっかり暗くなってきたせいもあるけど、
ちょっと家庭を思い出して
静かにホテルに向かうおじさん。
変わりばえしない夕食を取り、
時間制のシャワーに遅れないよう部屋に戻る。

さあ、汗を流そう!
浴槽も無い、コンクリートが剥きだしの床に立って栓をひねる。
それは、不幸のスウィッチでした。

ひぇー、ちめたい!
水じゃん、水。
どないなっとんねん!
ロビーに連絡しても変化無し。
それよりも、シャワーの終了時間が迫ってくる。
ここの夜は結構寒いんだけど・・・。

震えながら、あきらめて水浴びしました。

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