花夢島~Flower Dream Island~

花夢島~Flower Dream Island~

涼宮ハルヒの願望


きっとどんなときでもSOS団・涼宮ハルヒとの係わり合い無く過すのはもう無理なんだろうか。
そうして、色々振り回された挙句終らない夏休みを体験させられた訳だが、合宿終了からその間まで、ハルヒの奇行はますます勢いを増して行ったのはいうまでも無いだろう。
そんななかの1つを話したいと思う。
別に話した所で意味はないと思うのだが、今の俺の心境を別の誰かに察して欲しい。
そして出来れば代わって欲しい。
俺はあくまでも傍観者的な立場に居たくて、当事者になるつもりはないのだから。

……………
………


夏休みも中盤に差し掛かり、そろそろ宿題をやらないと後で、苦労するなと思い始め、それでも中々手につけられないで居たころ、例によってハルヒからの電話がきた。
今思えば夏休みに入ってから俺のケータイは俺、ハルヒ間の通信手段としての役割しか果たしていないな。
まあ態々こんな暑い中友達に電話して遊びたいとも思わないが、ハルヒはどうやら一般人の思考回路から少し変な方向に脱線してるらしい。
とりあえず電話に出ないといつまでもコール音がやまない気がするのででる事にする。
「おい、ハルヒ。普通あれだけの時間でなかったら出られる状態ではないと思うだろ。」
「いいじゃない、別に。ちゃんとこうやってでてるんだし。それよりもあんたこそもっと早く出なさいよ。今度からは3コール以内に出ないと罰金だからね!」
どうやら俺は常に携帯電話をもって居なければならないようだ。
「で、用件は何んだ。」
「そうそう、いい事思いついたから、1時に部室集合ね!遅れたら罰金だからね!」
そのいいことを聞きたいのだが、電話を切っちまいやがったから良くしかないんだろう。
ハルヒの良いことは良かったためしはほぼないんだが……
そして、必ず俺が疲れる仕組みになっているのは何故なんだろうな。
仕方なく俺は私服に着替え、学校まで向かい始めた。

学校に着いたのは1時10分前だが、例によって俺以外のメンバーは揃っていた。
そして、珍しいことにSOS団名誉顧問である鶴屋さんまでもが来ている。
これでは何をやるのかますます解らないぞ。
「遅い!古泉くんをもっと見習いなさいよ!私が電話したら、その5分後にはもう此処に来てたわよ。」
「いえ、偶然学校の近くで収集を受けたので早くこれただけですよ。」
一体この暑い中学校の近くで何をやっていたのか……少し気にならなくも―――撤回、やっぱりどうでもいい。
「で、今日は何をやるんだ?皆で宝捜しとか言うなよ?」
ハルヒが驚いている。図星か?
「キョンの勘が当るなんて珍しいこともあるものね。雪でも降るのかしら。」
失礼だぞ。俺の勘だってたまには当るわい。
それよりも本当に宝探しかよ。
一体何処を?
「うん、それはね、うちの所有地の山だよっ!蔵の整理してたらなんと偶然にも宝の地図が出てくるもんだからビックリさ!」
「本物なんでしょうね?その地図。」
「それは大丈夫っさ。ちゃんと調べたから。」
それなら良いが、一体何処なんだ?
「良くぞ聞いてくれました!第1回宝捜しの行き先は、なんと北海道です!」
SOS団部室は2名…いや4名を除いて、つまり俺と朝比奈さんは驚愕した!
何ていうのはオーバーな表現だが、朝比奈さんは口をあけて呆然とし、俺はというと、思考がやや鈍くなっていた。
そのせいで北海道か……此処よりは涼しそうだな…とか思ってたな、そういえば。
「いい、くれぐれも、我々は宝捜しに行くのであって観光にいくんじゃないからね!解った!?キョン。」
「ってどうやっていくんだ?俺は飛行機代なんて持ってないぞ!」
「大丈夫。古泉君が小型旅客機をチャーターしてくれたから。」
何だそりゃ。
俺が怪訝そうな顔をしていると古泉が耳打ちしてきた。
「正確には機関がチャーターしたものですがね。」
どうやら機関とやらは相当の資金を持ってるみたいだな。
まあだからといって俺には関係ないが。
「あのー、それで北海道にはいつ行くんでしょうか?」
「明日よ!善は急げって言うしね。早くしないとお宝がとられちゃう。」
「ちょっと待て、いくらなんでもそれは急すぎるだろ。それにだ、向こうに着いたとしても、一日で見つかるとは限らないだろ。その辺はどうするつもりなんだ。」
「大丈夫よ!あたし達が本気になれば一日で見つけられるわよ!絶対!」
今のハルヒには何を言っても無駄そうだな。
そんなんで見つからなかったらどうするつもりなんだろうか。
「その点についても大丈夫です。僕の知り合いの別荘が偶然その近くにありますから。」
なにが“偶然”だ。
普通に考えたら偶然見つかった宝の地図の宝のありかとそんな別荘の位置が都合よく一致する訳無いだろう。
俺の不信感をよみっとったのか、古泉は俺に耳打ちしてきた。
「いえ、今回は本当に偶然ですよ。いくら機関でも、そんなにすぐには別荘を建てられませんし。」
どうだかな。機関とやらが全力を出せばそれくらい一日で出来そうだが、まあこの際そんな事はどうでもいい。
俺はたかが宝捜しのために北海道まで行って、また疲れなければならないのかと思うとウンザリしていた。



そこから北海道まで行く間の事は面倒なので省く事にする。
これといって何も起こらなかったしな。
そうして北海道に到着。
地名は―――態々言うほどでもないだろう。別にこれを読んだ誰かがそこに行く訳じゃないだろうしな。
俺たちはとりあえず無事に古泉の知り合いの別荘まで辿り着けた。
ちょっと前の合宿では、新川さんと森さんと田丸兄弟が現れたが、今回はどうだろう。
とりあえず古泉に聞いてみた。
「おい、古泉。まさかまた新川さん達が出てくるんじゃないだろうな。」
古泉は得意の微笑を崩さぬまま答えた。
「多分新川さんは来ないと思いますよ。一応此処は森さんのプライベートの別荘ですから。」
と言う事は今回は小型旅客機以外の機関のサポートは無しか。
まあ俺にとってはそっちの方が良いがな。
別荘のインターフォンを鳴らすと案の定森さんが出て来た。
流石に此処ではメイド服ではないらしくいたって普通の私服だった。
「いらっしゃい。古泉から話は聞いております。どうぞ中へ。」
ハルヒと朝比奈さんはというと、ちょっと前にあったメイドさんがまた自分達の前に現れるものだから少し驚いているようだ。
「森……さんだったけ?確か合宿の時にも居たわよね。メイド服だったけど。」
「はい、あの時は色々とすみませんでした。」
「別にいいわよ。むしろ楽しかったしね。あ、そだ。出来れば1つ御願いがあるんだけど。」
一体何を御願いする積もりなんだか。
するとハルヒは朝比奈さんの引っ張って無理やり前に押し出た。
「この子にメイドの教育をして欲しいの。」
急にそんな事を言われても朝比奈さんも困るだろうに。
事実朝比奈さんは慌てふためいていた。
「え、私が……?えっ――――――」
慌てている朝比奈さんというのも凄く絵になるな。
ビデオカメラでも持って繰ればよかったかな?
まああってもとりはしないけどさ。
因みに言っておくと、森さんの返事はOKだったな。
朝比奈さんはずっと扱かれてたよ。
勿論、俺たちはそれをただずっと見ているだけなわけなく、到達早々宝の地図を頼りに宝捜しを開始した。
どうせなら出来るだけ小さい方がいいとずっと思っていたのだが、どうやらそれは敵わないようだった。
「おいおい、この山ん中をその地図だけを頼りにこれだけのメンバーで探すのか?」
かなり大きい。つか、これは山というより山脈だろ、絶対。きっと日本地図に乗ってるぐらいの大きさだぞ。
しかもこの地図はこの山にあるとしか書いてないし……
それよりも誰か早く俺の質問に答えてくれないか?
そうして皆を見ると、鶴屋さんとハルヒは、どうやって探すかの参段を立てていて、長門はいつも通り無表情を保ち、古泉はあからさまな苦笑を浮かべ、朝比奈さんは今度こそ間違いなく驚愕していた。
「おい、ハルヒ。一体どうするつもりなんだ?」
「ちょっとまってて!予想以上に大きいから新しい案を考えないといけないんだから。」
やはりこれはハルヒでも予想以上か。
「それよりも、鶴屋さん。こんなに大きいなら行く前に教えてくれても良かったじゃないっすか。」
最もな疑問だ。初めから知っていればハルヒも大人しく諦めたかも……いや、ハルヒなら日本のどこかにあるとしか書かれていない宝の地図を見つけただけでも、探しに行くだろうな。
「あははは、ごめんごめん。初めてだからさっ。此処来るの。」
もうこの際細かい突っ込みは無しにしておこう。
今からこんな山の中を駆けずり回らなければならないと思うと心底草臥れる。
俺が大きな溜息をついたとき、目の端に映ったのが長門だった。
長門だったら宝の場所わかるんじゃないか?
そもそもあいつに解らない事なんてあるのだろうか。
もしあったとしたらそれは俺みたいな平凡な人間には決して理解できる物ではないだろうな。
「おい、長門。」
俺は長門のもとまで行き、小声で話す。
「この山にある宝とやらの場所教えてくれないか?」
長門は頷き、一点を指差した。
そこは、事もあろうに山の頂上だった。
よりによって頂上ですか。
しかも周りが谷になってやがるとは、神様はとことん俺たちを拒みたいらしいな。
俺もあんなとこ行きたくないけどさ。
「決まったわ!今回は3人1組で2組に分かれて探したいと思います!」
そう言ってハルヒは何処から用意してきたのか、割り箸を6本取り出していた。
ご丁寧に赤い印が3本に入っているのをな。

ペア決めの中継等した所で何の意味も無いだろうから割合させていただく。
そんなんでペアはこうなった。
ハルヒ、長門、古泉の3人と俺、朝比奈さん、鶴屋さんに分かれた。
ハルヒは未だに自分の持っている割り箸とにらめっこをして、暫くすると、俺にいつも通りデートじゃないんだからね!と促して、3人で行ってしまった。
「じゃあ俺たちもそろそろ行きましょうか。」
「でも、こんなに広いのにどうやって探すんですか?」
「何か手がかりでもあるにょろ?」
「はい、一応。あそこの山の頂上です。」
俺は先ほど長門から聞いた場所を指差してやった。
「あ、あんな所まで行くんですかー!?」
朝比奈さんが驚きの声を漏らす。
「めがっさ大変そうだね。」
あの、鶴屋さん。大変そうとか言う割には嬉しそうな顔をするのはできればやめてほしいです。
「とりあえず早く行きましょう。早くしないと集合時間までに此処に戻れなくなります。」
「それじゃあ、しゅっぱーつ!」

頂上へ行くまでの道は然程大変ではなかった。
過去に何度も人が通っているのか、道が出来ていて、歩くのに苦にはならなかった。
だからといって、長距離歩くのに変わりはなく、頂上につくころには俺と朝比奈さんはボロボロだった。
呼吸を整えながらあたりを見回すと、そこには1つの箱があった。
「まさか、本当に宝か!?」
その声で2人ともよってくる。
「早く開けてみるっさ。何が入っているか楽しみにょろよ」
鶴屋さんに急かされて俺は蓋を開ける。
その瞬間、何度か朝比奈さんと一緒に時間遡行したときと同じような不快感に襲われ、視界が暗転した。


目を覚ますと、俺は自分の部屋に居た。
「夢……?なのか?」
だとしたらあまりにもリアルでな夢。
過去にもこんなリアルな夢を見た事がある。
そうだ、ハルヒと一緒に閉鎖空間に閉じ込められた時だ。
だけど、あれは夢ではなかったはずだ。
だとしたら、今回も……?
そのとき、1つの心当たりが浮かんだ。
そうだ。あの宝の箱。
あれを開けてから意識が消えたんだ。
まるで時間遡行したときみたいに……
俺は置きだして、携帯で時間を確認する。
案の定時間は俺がハルヒに呼び出された日よりも前を示していた。
と言う事はだ、俺はあれを開けた時に今日に時間遡行したわけだ。
でも、一体何故?
とりあえず此処に居ても仕方が無いと思い、ある場所を目指した。
こんな状況のとき、いつも頼りになる奴のもとへ。
そう、長門のマンションへ。

インターホン。
「………………」
「よぉ、長門。俺だ、ちょっと助けて欲しいんだが。」
「入って。」
通信がきれ、変わりにドアが開く。
長門の部屋に入ると、俺は早速事の表しを伝えた。
「今回はただの時間遡行ではない。」
じゃあなんなんだ?
「過去に来ているのは、あなたの意識だけ。あなたの体はまだその山にある。」
どういうことだ?解りやすく説明してくれ。
「今此処に居るあなたは、あなたが見ている夢のような物。現実ではない。」
じゃあどうすれば戻れるんだ?
「あなたは、あなたの意識を此処に送った人物を見つけ無ければならない。」
長門は知ってるんじゃないのか?
「知っている。だけど、これはあなたが自分でやらなければいけないこと。そしてその後の行動も。」
「要するにだ、俺は、犯人を見つけて、更にそいつに何かをしなければならないと。」
「そう。」
そう言って長門はお茶を啜った。
犯人といっても一体何処からあたれば……
「犯人は、SOS団の一員か?」
長門は頷いた。
恐らく長門は違うだろう。
だとしたら確率は3分の1。
とりあえず古泉にはこんな事は出来るとは思わないから最後に当るとしよう。
一番こんな事をしそうなのはハルヒだが、時間遡行といえば朝比奈さんだろう。
あの朝比奈さんがそんな事をするとは思えないが、これが既定事項とやらだとしたら仕方ない事だろう。
そういえば朝比奈さんの家って何処にあるんだろうな。行ったことねぇや。
「なあ、長門。今朝比奈さんが何処に居るか解るか?」
長門なら間違いなく知っているだろうな。
案の定朝比奈さんの居場所を即答してくれた。
早速そこに向かう事にする。
俺は長門に礼を行ってから外にでた。
それにしても、本当に信じられないな。
俺の意識だけが過去に来ちまうなんて。
ああ、俺の体大丈夫かな、何て心配しながら歩いていくと、長門に言われた場所の近くで朝比奈さんを見つける事が出来た。
「こんにちは、朝比奈さん。奇遇ですね、こんな所で会うなんて。」
お茶の品定めに熱心になっていた朝比奈さんは、いきなり横から話し掛けられ相当驚いていた。
「えっ、あ、キョン君。キョン君も買い物ですか?」
別になんにも買うものはないが、その方が都合が良いだろうな。
「まあ買い物といえば買い物ですね。」
「あっ、そうだ。キョン君に御願いがあるんですけど、良いですか?」
御願い?朝比奈さんが俺に?
「はい、今から一緒に来て欲しいところがあるんですけど……大丈夫ですか?」
勿論大丈夫ですとも。朝比奈さんの頼みならば、3秒で北極点にだって行きますよ。
「ふふ、ありがとうございます。じゃあ行きましょうか。」
見ると朝比奈さんは何時の間にかお茶の精算を済ませていた。
そして、俺たちは他愛も無い話をしながら朝比奈さんの目的地に向かっていた。
「そういえば、何処に行くつもりなんですか?」
「あの川原のベンチで話したいことがあるんです。」
あのベンチか。何かあのベンチにはいろんな思い出があるな。
それよりも一体何を話したいんだろう。もしかしたら今の俺のこの状況についてかな。そうだったら楽にすみそうなんだが。
ベンチに腰を下ろすと、俺は朝比奈さんの言葉を待った……が、代わりに聞こえてきたのは寝息だった。
なるほど、そういうことか。朝比奈さんがこうやって眠らされている時は大概朝比奈さん(大)が現れるときだ。
案の定、朝比奈さん(小)の横に朝比奈さん(大)が立っていた。
「お久しぶりですね、キョン君。」
確かに久しぶりだな。最後に会ったのはいつだっけか。七夕の時だっけ?
「あの、キョン君。ごめんなさい、面倒な事に巻き込んでしまって……でも既定事項だったので……」
いやあ、そんな謝るほどの事じゃないですよ。それに既定事項なら仕方が無いですし。
それよりも、どうして俺は此処に来なければいけなかったのですか?
「あ、はい。それはあなたに今やるべきことがあるからです。」
やるべき事?一体何を。
「あなたがこの時間にいたときは気付いていなかったと思いますが、今涼宮さんは憂鬱気味なんですよ。涼宮さんが憂鬱になると、何をするか解りませんから、あなたに来て貰って、涼宮さんを元気付けて欲しいんです。」
たったそれだけのために俺は態々この時間に連れてこられたのか……
全く何をしてても本当に碌な事しないな、ハルヒの奴。
「涼宮さんは今家にいるはずですから、是非行って見て下さい。」
今からですか?別に学校で聞けばいいでしょう。
「いえ、そういうわけにもいきません。この時間の本来のあなたはちゃんとこの時間帯で行動してるんです。あなたが夜家に帰ったら、ばったり遭遇してしまう事になります。あなたも自分自身に会った記憶はないでしょう。だから、あなたは今日中にこの役目を果たさないといけないのです。」
なるほど、確かに俺は自分自身に会った記憶なんてないな。と言う事は、裏を返せば今日中に終えることができるという事か。
なら然程大変ではなさそうそうだな。仕方が無い、今から行って来るか。
「じゃあお願いします。くれぐれも涼宮さんを怒らせる事はしないで下さいよ。あ、それと今回は私が私を連れて帰りますので心配しなくていいですよ。」
なんか文章変ですね、それ。
それじゃあ行って来ますよ。
こうして俺は簡単そうに見えて実はとんでもなく大変な事に巻き込まれる事となったんだ。


ハルヒの家に着き、ハルヒと会ってから、俺は相当不機嫌なハルヒに遭遇する事になった。
「なによ、わざわざ家にまで来て、何の用なの?その前に何で家しってんの?」
「朝比奈さんに聞いたんだ。そして、お前が最近憂鬱気味だと聞いてな、代表で来てやったんだ。」
とりあえず軽く嘘を交えておく。
「ふーん。まあどうでもいいけど。で、来て何をするつもりだったの?」
さあな、俺だって何をすればいいかなんてわからないさ。ただ1つ解るのはお前のその憂鬱はたいしたものじゃないって事ぐらいさ。
「とりあえずその不機嫌の訳を教えてくれないか?」
「別に、不機嫌って訳じゃないわよ。ただ、あたしは暇なの!不思議を探したってなんにも見つからないし、宇宙人や未来人や超能力者だって見つかりやしない。詰んないじゃない、最近。あんたもそう思うでしょ。」
別にいたって普通の日々を過せて満足してるぞ。もうすぐ急に北海道行きを知らされるまではな。
しかし此処は口裏を合わせておいたほうが早く染みそうだ。
「そうだな、確かに最近はなんにも無くてちょっと暇だな。」
で、俺にどうしろってんだ、一体。
「知らないわよ、あんたが何をすればいいかなんて。」
じゃあお前はどうすれば機嫌がもとに戻るんだ?
「そりゃあ、宇宙人や未来人や超能力者でも連れてきてくれれば最高よ。不思議でもいいわね。」
宇宙人や未来人や超能力者を連れてくるのは簡単だが、ハルヒは信じないだろうし、不思議なんてそんなに簡単に見つかったら不思議でもなんでもない。どうやら説得でもするしかないようだな。
「なあ、ハルヒ。不思議という物はだ、滅多に見つからないから不思議というのであってそう易々と見つかったら不思議でもなんでもないんじゃないのか?それに、頑張って探して見つけた不思議の方がもっと面白みがあると思うんだが。」
ハルヒは暫しの間うーんと唸りながら、それでも納得してくれたのか少し大人しくなった。
「確かにそうね。キョンにしてはいいこと言うじゃない。」
この際突っ込み話にしてもらう。俺はこれで元の時間に帰れるのだから。
「まあとりあえず元気になったみたいだし、俺は今日のところは帰るよ。」
そうして、別れを告げ、ハルヒん家を後にした。
外にでると、そこには予想通り朝比奈さん(大)がいた。
「終わりましたよ。これで戻れるんでしょうね。」
ところが、朝比奈さん(大)はあろうことか首を横に振った。
「まだ終ってません。もう1つやる事は残ってます。」
まだあるんですか?今度はなんでしょう。
「この地図を鶴屋さんに渡して来て下さい。例の宝の地図です。」
なるほど、あの地図は偶然見つかったのではなく俺が渡したのか。
で、それを鶴屋さんが見つけた事にして貰った訳か。
そして俺を此処に導いたって訳か。
ってことは森さんの別荘が近くにあったわけも解ったよ。
なるほど、今回の北海道行きは俺が一役買っていたわけか。
「じゃあお願いします。それが終ったらあの公園で待ってますから。」
そう言い残して、朝比奈さんは去っていった。
「さて、じゃあ俺も行きますか。」
俺も鶴屋さんの家のほう目指して歩いていった。


「えっ、宝の地図?これって本物なの?」
鶴屋さんは誰もが思う質問を問い掛けてきた。
「一応本物でしょうが、あるのはきっと宝ではないと思いますよ。」
「ふーん。じゃあ言われた通りにすればいいんだねっ。大丈夫っさ。何も心配する事はないにょろよ。」
確かに鶴屋さんなら安心して御願いできます。
じゃあくれぐれも宜しくお願いしますよ。
その後、2、3の別れ文句を口にして、俺は真っ先に公園へ向かった。
時刻はもう6時を廻っていたが、流石に夏だけあってまだ日は落ちていなかった。

公園に着くと、朝比奈さん(大)が座っていた。
「届けてきましたよ。ちゃんと鶴屋さんが見つけた事にして貰おうようにしました。」
「ありがとうございます。これで全て終わりです。ご苦労様でした。」
帰る前に1つ聞かせて貰いたいのですが、
「あの地図ってもしかして本物ですか?」
朝比奈さん(大)は悪戯っぽく笑って言った。
「禁則事項です。」
そして、俺の意識は暗転していった。



目が覚めた時、多少の寒さは覚悟していたのだが、それは全く無く、むしろ暖かかった。
「あれ、俺なんでベッドにいるんだ?」
気付けば俺はベッドで寝ていたらしい。
しかし勿論俺の部屋ではなく、恐らく森さんの別荘だろう。
一体どうやって此処までつれてきてもらったんだろう。
「漸くお目覚めですか。」
古泉がドアを開けて入ってきた。
それにしても全然心配してないような言い草だな。なんかむかつくぞ。
「これでも心配してましたよ。でも、それといった外傷も無く、体温も脈拍も正常でしたから。最悪の事態に陥る事はないと思いましてね。」
まあどうでもいいがな。
「所で俺はどれくらいの間寝て居たんだ?」
俺の精神感覚で言うと半日程度だが、果たしてどうだろう。
「ええと、大体半日ぐらいですね。」
やはりそうか。まあ当然といったら当然なんだがな。
「じゃあ僕は皆を呼んできますよ。とりあえずそこで寝ている涼宮さんに言う事もあるでしょうからね。」
そういって逃げるように退出する古泉。
さっき古泉が指した方を見ると、ハルヒが毛布に包って眠っていた。
「それにしても、あんな変なこといわなければホントに可愛いんだけどな。」
今のハルヒの寝顔を見ていると、そんな気持ちにさせられた。
そして何故かハルヒの眉が震えていたからきっと起きていたんだろうな。
その後のことはあえて言うほどじゃないだろう。
誰でもどうなった安易に想像できるだろうしな。


そんなんで、感動(でもない)再開を果たし、俺は心配料その他諸々を払わなければならないようだ。
こんなことはもう二度とないようにしようと心に誓っておきながらも、結局俺は冬にまたこんな状況に陥れられたんだよな。まあそれはまた別の話だから割合しよう。
その後、俺たちは古泉の持ってきたアナログゲームや、遊技場に会った麻雀やら、ビリヤードやらをして楽しんだのだが、それはまた別の機会に語る事にしよう。
そして、言うまでも無く朝比奈さんはきっちりとメイドのいろはを教え込まれてたよ。
明日からの部活がすこし楽しみになったな。いったいどう変わるのか楽しみだ。
まあ何がどう変わったところで俺にそんなに関係あるわけではないのだが。
そんなかんだでこの忙しい一件は幕を閉じていったわけだ。
ただ、今回は俺も裏で関係しているから文句を言う事は出来ないな。
まあ今更何があろうと文句を言うつもりなどさらさら無いんだけどな。


そうして、俺たちはまた何時もの駅前に一旦行き、そこから解散となった。
「そういえばさっ、キョン君。今回ばかりは教えて欲しいな。こんな計画を立てたわけを。」
そういえば鶴屋さんだけは裏情報を少しだけ知ってるんだよな。
だからといって勿論言う訳にもいかないし、俺がさてどうしようかと悩んでいると、
「いえないならいいって。またみくるたちに関係あることなんだろうし。」
といって一方的に会話を打ち切ってくれた。
そういえばまた秋の半ば頃に朝比奈さんに頼まれて色々やったっけな。
それもまた違う話になるから此処では語らないが。
今回もやはり俺だけ大変な目に会うように出来ていたな。
そして、俺を運んでくれた人は誰なのか?
結局最後まで解らずじまいだったな。
まあこの謎は後日長門にでも聞けばいいか。
長門なら誰かに口止めされでもしない限り教えてくれるだろうしな。


………
……………

こうして、今回の一件は完全に幕を下ろしたわけだが、この後の残りの夏休みでも色々あったことは言うまでも無く解っているだろう。
冒頭でも離したが、ハルヒが夏休み中大人しく居てくれるはず無いのだから。
まあ此処まで来たら最後までつきやってやるさ。
俺もなんだかんだ言って今を楽しんでるしな。
こんな日々が何時までも続けばいいんだ。
きっとSOS団団員は誰もがそう思ってるだろうな。

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