真理を求めて

真理を求めて

2003.01.22
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「ノルウェイの森」を読み終えた。これは、とても深い悲しみの物語だ。僕は、灰谷健次郎の「兎の目」を読むと、いつも同じ場面で涙が出てしまう。それは、何度も読んですでにストーリーを知っているにもかかわらず、やはり感動してしまうので涙が出てしまう。僕は、感動したときに一番涙が出てくる。悲しいときには、ほとんど涙は出てこない。でも、この物語で、初めて悲しくて泣きそうになった。それくらい、この物語は、悲しさを心の底から揺さぶるように伝えてくる物語だ。

ピリオドを打つことができなかった恋心は、相手の存在が消えてしまうことによって、それをどこにも持って行きようがなくて、どこまでも引きずってしまうことになる。生き残った人間は、それをいつまでも覚えておくことしかできない。その悲しみがワタナベ君を通じて伝わったくる。

「私をいつまでも覚えておいて」といった願いは、悲しい形で実現することになってしまったわけだ。楽しいことというのは、月日がたつと色あせて感動が薄れてしまうけれど、悲しみはどうして強い印象を残したままいつまでも消えないんだろうと思う。悲しみを背負う人間が、誠実な人間であればあるほど、それは消えずに残るというのも不公平なものだ。あまりに強い悲しみは、共有することができないし、共有しても少しも減ることがない。無限大は、2で割っても3で割っても無限大のままにしかならないようだ。そんな印象を与えてくれる物語だった。

ワタナベ君が、物語の冒頭で、「ノルウェイの森」を聞いて感情が揺さぶられ泣いてしまうシーンが、最初は違和感があったけれど、この物語を最後まで読んで、泣いてしまったのがよくわかった。泣かずにはいられないだろうというのがよくわかる。それほど大きな悲しみを感じさせる物語だ。僕がこれまで読んだ悲しい物語は、悲しさよりも感動の方があとに残るものばかりだったけれど、これは、悲しみが大きすぎて、感動の方を忘れてしまう、そんな物語だった。





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最終更新日  2003.01.22 22:40:07
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