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2003.05.04
「人間の条件」 五味川純平
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この小説は若い頃に一度読み、その後これを原作にした6部作の長い映画を見て、これまでに何度か読み返している愛読書だ。五味川純平には、これよりももっとベストセラーになった「戦争と人間」という小説があるので、そっちの方が有名かもしれない。「戦争と人間」は、細かい史実を徹底的に調べ上げた小説で、日本が中国に仕掛けた侵略戦争の実態を知るには、事実としても実感としても優れたインパクトを与えてくれるものだ。
この「人間の条件」も、事実としての戦争を語ってくれるけれど、それ以上にこれは人間の生き方に大きな示唆を与えてくれる物語だ。戦争という極限状態の中にいても、それでもなお人間性を失わずに生きていくというのを模索した人間として、五味川純平が描いた主人公「梶」という男がいる。
誰もが人を殺し、その殺した相手が敵である場合には賞賛さえされるという戦争という状況の中で、いかにして殺さないでいられるかを梶は追求した。自分が殺されるかもしれないという環境の中で、ともすれば明日のことなんか考えられないという自暴自棄に陥りそうな中で、どうやって人間でいられるかということを考えながら生きていけるだろうか。
日本の軍隊は、中国で様々な残虐行為を働いた。それは、より弱い人間に対して行われたことの方がむごいことが多かった。女やこどもに行われた残虐行為は数々の証拠が挙げられている。それは、ある意味では戦争が行われている地域には多かれ少なかれ行われていることでもある。どの地域も、侵略してくる軍隊によるレイプ行為は戦争の暗い部分として語られている。
だから、彼らに対して「これは戦争だから仕方がなかった」と理解を示すことも出来るかもしれない。しかし、理解が出来たからといって、それを容認してはいけないと思う。それを容認することは、再びそのような状況が生まれた時に、自らがその過ちの中に沈んでしまうことを意味するからだ。容認しない決意をした時に、極限状況になっても人間性を失わないでいられる強い知識を持つことが出来るのだと思う。
多くの日本の兵隊にとって気の毒だったのは、極限状況というものに初めて対処したことだった。見習うべきものがない状況で、自分で考えて行動しなければならなくなったとしたら、梶のような人間でない限り人間性を失わないですむことが出来ない。しかし、見習うべき人間がいれば、梶でなくても梶のように生きることが出来る。梶という人間の存在を知れば、僕のような人間でも梶に近づけるという感じがしてくる。
何かを知るということは、その知ったことが自分の行動に影響を与えることがなければ、本当に知ったことにはならない。極限状況に陥って非人間的な残虐行為をしてしまった人間がいたことを知ったならば、それがたとえそのような状況であってもやはり残虐行為であるということを知らなければならない。それを知った時に、自分はその残虐行為をしないという自信が生まれてくる。たとえ殺されるような状況でも、殺さないということを守ることが出来るようになるだろう。
しかしここに難しい問題がある。侵略する軍隊は、決してこのような人間的な教育はしないということだ。侵略する軍隊は、敵を殺すことが目標なので、そのためにじゃまな道徳は教育することはないだろうと思う。ベトナム戦争の頃も、アメリカではベトナム人に対する偏見と差別感を植え付けるための兵士教育があったそうだ。相手を人間だと思わずに、虫けらぐらいにしか思わないように教育すれば、殺すことをためらわない兵士ができあがる。戦場においては、人間性を失うことが侵略する軍隊には必要だからだ。
結局軍隊には人間性教育は望めないとしたら、我々の中の目覚めたものがそれを知らせていくしかないだろう。今の時代に五味川純平が再びベストセラーになるのは難しいだろうが、優れた芸術にその力があることを望みたい。
昨日のニュースで注目したいのは、こんな見出しが付いていた記事だ。
「<パレスチナ>ガザで英国人記者撃たれ死亡 イスラエル
軍に」
真実を伝える人間は、今は一番危ないところにいるのかもしれない。何しろ権力を持たない個人が多いから。しかし、そこにこめられた真実がとても重いものであれば、きっとこの人の意志を受け継ぐ人間が出てくるだろう。真実は伝えられなければならない。
大量破壊兵器の発見のニュースにも注目している。世界中が監視して10年以上も制裁を加えて疲弊した国が、果たして大量破壊兵器を作れるものかどうか、そう考えた方が合理的だと思うが、それが正しいかどうかもうすぐ結果が出るだろう。アメリカがどのように正当化を図ってくるかに注目したい。
デモ隊への発砲事件の続報もなかなか入ってこない。これは真相を知るには、マスメディアのニュースでは難しいのかもしれないな。どこかの小さい媒体に真実の報道が入ってくるのを待つしかないのかもしれない。これも注目しておこう。
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最終更新日 2003.05.04 11:39:43
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