真理を求めて

真理を求めて

2003.05.20
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土曜日に近くの本屋で村上春樹の新訳のサリンジャーを買った。その時に目について、購入したのがこの田中さんの本だ。田中さんの文章は、そのメールマガジンでおなじみなので期待はしていたけれど、期待通りの面白い本だ。まだ半分しか読んでいないけれど、一日で半分読めてしまうほど面白い本だった。

田中さんは、インターネットで報告される膨大な量の記事に目を通し、それを独特の視点で分析して論評をするジャーナリストだ。誰にでも見られる記事が、田中さんの目を通してみると、実に多くのことを教えてくれる。物事を見る時の視点の大事さというものを教えてくれる。そして、田中さんは、文献から机上で想像するだけの人間ではなく、それが正しいかを現地で検証するジャーナリストの基本を忘れない人でもある。だからこそ信頼のおける文章を書けるんだろうと思う。

田中さんはまえがきの中でこのように語っている。

「私は反戦運動家ではない。世界がどう動いているか、自分なりに納得したいと考えて分析を続けてきた。いわば「市井の国際情勢アナリスト」である。ところが、分析を続けているうちに分かったことは、アメリカが非常にフィクション的な騙し(だまし)に満ちた危険な外交政策をとってしまっている、ということだった。アメリカの現状は、アメリカ国民にとっても、日本人を含む世界の人々にとっても、望ましい状況からあまりにかけ離れている。私は自然に「こんな戦争はすべきではない」と思うようになった。
 本書の内容に初めて接する読者の中には、これを「陰謀論」と受け取る人がいるかもしれない。だが、本書をよく読んでいただくと、私が根拠のない「陰謀論」を述べているのではなく、事実と思われるニュース情報をもとに分析、推論していることが分かっていただけると思う。」

「陰謀論」というのは、権力の悪を暴露しようとする人々を排除したい時に、権力を擁護する側が貼るレッテルだ。<根拠なしにすべてのことを陰謀に結びつける>という非難をするから、こう言うんだろうと思う。そういう人間もいるだろうけれど、田中さんの語ることはすべて根拠のあることだ。だから信頼出来ると僕は思っている。

田中さんは、他の著書でもニューヨークのテロについて興味深いことを書いているけれど、この本でもそれの分析を通じて書名にあるように「アメリカ超帝国主義」というものをわかりやすく説明してくれている。

僕もあのテロが行われた時から、これは権力の陰謀のニオイが強いという思いを持っていたものだ。アメリカほどの世界の最先進国が、あれだけの大胆な行動をするテロを、何も防ぐ手だてがなくてやらせてしまうというのに大きな疑問を持っていた。どこかで防ぐことが出来たのではないか、少なくとも防ぐ行為があってもいいと思ったのに、それがほとんど報道されず、結果としての悲惨な光景だけが報道されていたからだ。

ただ、僕の場合はその根拠が見つけられなかったので、陰謀ではないかと思っていても、それは客観的な推論として考えたものではなかった。それが田中さんの文章を読むと、単なる思いではなくやはり根拠のある推論なんだと思える。



旅客機がハイジャックされた時も、防衛システムが正常に働かずに、まるでビルにつっこむのを待っているかのようにテロが終わってから防衛のための戦闘機がニューヨークに到着している。正常に働いていればもっと早く来ていたはずなのに。

これは一つのミスだという見方も出来るかもしれないが、すべてに渡ってミスが続いているのは、これは何か意図が働いていると推論しても間違いではないような気がする。しかも、それは末端の人間が出来ることではないので、権力の中枢にいる人間の意図が働いた、つまり陰謀であるという推論が出来そうな気がする。

映画の「JFK」でも、当時のケネディ大統領の警備が、通常では考えられないミスばかりが行われていて、しかもその捜査が全く行われていないことに疑問を感じたギャリソンがそれを調べ始めたのが、その陰謀を暴くきっかけだった。個々の事実がはっきりしなくても、大局的に見ればおかしいと感じることをつなぎ合わせて真理に近づくことが出来る。田中さんの視点というのはそういうものじゃないかと感じた。

田中さんの推論に寄れば、アメリカを今支配している危険な新保守主義のネオコンは、世界を戦争の緊張状態に置くことで、最強の軍事力を誇るアメリカの支配力を強くしようというねらいを持っているということだ。だから、ネオコンにとってはテロリストがいることが好都合なことで、これをなくすような努力をせずに、むしろ育てるようなことをしていくだろうということだ。

そうなれば、イラク戦争が100人のビン・ラディンを生んでも、それはかえって好都合ということになる。テロをいくら非難しても、ネオコンにとってはそれで反省して武力による弾圧をやめようとはしないことが予想される。戦争状態こそが彼らの望むことであるとすれば。

これは、有事法制を考える時も大事な視点になりそうな気がする。有事というのは、乱された平和を回復するために、防衛を行うことではないようだ。アメリカの世界戦略である戦争状態の継続の中に、日本の協力というものを取り付けるためにその法律があると考えた方がいいだろう。ネオコンがアメリカを支配し続ける限り、日本は常に有事の中にいると思った方が良さそうだ。この危険性に、果たして日本人の何人が気づいているだろうか。田中さんの言葉に耳を傾ける人が一人でも増えることを願いたい。





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最終更新日  2003.05.20 09:36:03
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