真理を求めて

真理を求めて

2004.01.12
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昨日・今日と成人式の記念式典が、各自治体で行われているところが多い。沖縄では今年もまた暴れる新成人が出てきたようだ。この現象について、興味深い考察を加えているページを見た。ヤフーのトピックスにも取り上げられていたので見た人が多いかもしれないが、次のアドレスだ。

http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/news/2003/seijin2003.html

ここに書かれていることにほぼ賛同する感じがするので、これをきっかけにして成人たちが騒ぎを起こすという現象を考えてみたいと思う。ここには、まず冒頭に次のように書かれている。

「これまでにも書いてきたように、騒ぐ新成人たちの心理は、基本的には「目立ちたい」「注目されたい」でしょう。もう少し、深層心理的な言い方をすれば、「愛されたい」のだと思います。」

僕も、全くその通りだと思う。この解釈には賛成だ。社会生活においては、ハレ(非日常)の場と、ケ(日常)の場があると言われている。ハレの場では、自分が目立つ存在であり、注目される存在であることを確認して、自分に対する大いなる尊厳を獲得できる。逆に言うと、ハレの舞台を持たないと、いつまでも自分に自信が持てない主体性を欠く人間になりかねない。

ハレの舞台は、人生の節目でバランスよく配置されてきたのが、これまでの日本の社会ではないだろうか。ところが、子供たちが、深層心理で「愛されたい」という思いを強くもっているとしたら、ハレの舞台で自分を確立しているという、今までの社会の機能が崩れてきていることを示しているのではないかと感じる。ハレの舞台が、必ずしも彼ら自身にはハレだとは感じられなくなっているのではないだろうか。

子供の成長に伴って、七五三などのお祝いをハレの舞台だと思いたくても、それは子供のためのハレ舞台ではなくて、どうも親のハレ舞台になっているようなところもある。学校では、ハレの活躍をするよりも、マイナス評価をされないように汲々としている。

これまで伝統的にハレ舞台だと考えられていたものは、今の若者には必ずしもハレ舞台にはなっていないのだろう。むしろ、彼ら独自のハレ舞台を作って楽しむというのが、今の時代の傾向のような気がする。ストリートでダンスや音楽を楽しむ子供たちは、彼らにとってのハレ舞台をそこで作っているのではないだろうか。成人式で騒ぐのも、騒いで注目されることこそが彼らのハレ舞台だという感覚があるのかもしれない。ハレ舞台に対する感覚が全く共有できないのだろう。

宮台氏は、日本人の祭り好きについてよく語っている。祭りというのは、非日常の世界で、ハレの舞台を作り上げるものだと思う。そこでは、何をするかと言うことはあまり大きな価値を持たず、そこに参加して、普段は味わえない高揚した気分に浸るところに意義がある。この祭りも、伝統的な祭りに変わって、独自の祭りが増えているそうだ。ちょっと前には「マトリックス・オフ」というものが新しい祭りとしてやられたらしい。



これなどは、これを祭りだと知らない人間にとっては、全く祭りとしての意味を成さないのだが、これに参加している人間にとっては、気分を高揚させる祭りになっているという現象が起こる。実は、日本全国であちこちにこのような祭り現象が起こっているのではないかという感じがする。仲間にとっては祭りだが、そうでない人間にとっては何をしているのか分からないという祭りだ。祭りどころか迷惑になっているのもあるかもしれない。

成人式で暴れる若者の現象も、一種の祭り現象のように見える。このような観点で眺めてみると、学校で行われているいじめなども祭り現象の一つかとも思えてくる。問題は、この祭りに対して、必ずしも楽しい気分になれない、眉をひそめてしまう人がいるということだ。伝統的な祭りなら、それが社会的に承認されていて、祭りの中で気分が高揚した者を、ある意味では社会がその価値を認めてくれる。かっこいいと思ってくれる。かっこいいと思ってくれず、迷惑だと思われている祭りをどう考えたらいいかというのは、社会にとっては結構重大なことかもしれない。

この論説では、若者は承認されたいという「愛されたい」という気持ちが深層にあると分析しているのに、世間は彼らを承認せず迷惑だと思っている。これでは、彼らの希望も満足させられないし、世間の方も彼らを排除するという対応しかとれない。論説では、彼らの表面だけを見ずに、その深い意味を考えようと呼びかけている。一緒に良い社会を作っていこうとを呼びかけている。この姿勢は共感できるものだ。

この論説で、さらに共感を覚えるのは次の記述だ。

「少年による凶悪事件は、長期的に見れば増えるどことか、むしろ激減しています。むしろ問題は、普通の子どもたちのモラルの低下でしょう。飲酒、喫煙、万引き、自転車泥棒、売春(援助交際)など、以前なら「非行少年」たちの仕業だったものが、一般の子どもたちにも広がってしまっています。
 人が話しているときには、黙って静かに聞くべきだという考えをすでに持っていない少年たちもいます。
 またそういう我慢や訓練を受けていない子達もいます。
 こういう子どもたちが、二十歳になったからといって、社会人としてのルールに簡単には従ってくれないでしょう。」

モラルの低下は、子供たちだけでなく、大人にも蔓延しているような感じがする。これこそが、新成人が暴れるという問題よりも、もっと根が深い重要な問題なのではないだろうか。どうすればモラルの向上が図れるのか。それは、道徳教育で解決できる問題ではない。これは、すぐには解答が見つからないけれど、考え続けていきたい問題だと思う。

さてイラク関係のニュースでは次のものが目にとまった。

「イラク南東部で英軍がデモ隊に発砲、5人死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040111-00000958-reu-int

この記事では、「デモ隊が手りゅう弾とみられる爆発物が英軍車両に投げようとしたのを英兵が確認して銃撃した」と英軍が発表したことを伝えている。これが確実に手榴弾だったのかどうかが分からない。もし疑いだけで発砲したのだとしたら、これはモラルに問題があるのではないだろうか。紛らわしい動作をした方が悪いのだと言ってすませられることだろうか。むしろ、紛らわしい動作を、人が殺されるようなことに結びつける状況こそが問題なのではないだろうか。それが手榴弾であるかどうか、確かめることが出来ないと言うモラルは、そのような状況で英軍が駐留するということにそもそもの原因がある。その状況をどうにかしない限り、このようなモラルを向上させることは出来ないのではないか。

「フセイン打倒は政権発足直後から計画…米前財務長官
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040111-00000013-yom-int

この記事からもモラルの低下を読みとることが出来る。次のような記述からだ。

「また、暴露本では、「大統領が『これ(イラク攻撃)をやるための方策を見つけてこい』と言っていた」ことも明らかにしている。前長官自身は、「米国が決めれば何であれ一方的に行えるという先制攻撃の考えは、論理に大きな飛躍がある」と考えていたという。」



イラクで発見された36発の砲弾についても、さすがにもう「大量破壊兵器の発見か?」というような記事はなくなった。

「びらん性ガス入り砲弾か イラク南部で駐留軍発見
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040111-00000118-kyodo-int

しかし、最初の一報で、確かめもせずに「大量破壊兵器の発見」を云々するのは、嘘でもいいからアメリカに都合のいい宣伝をしようという、これもやはりモラルの低下の表れだろう。この記事を紛らわしい表題で流したということには、ジャーナリストとしての最低のモラルも感じられない。

上の論説では、成人式で暴れる若者を次のように分析している。

「「ふつう」ではいやだと感じてします。それは、現代の一つの病理かもしれません。芸能人のようになりたい、普通の事務仕事はいやだ、たとえ悪いことでも目立ちたい、そんなふうに思ってしまいます。
 けれども本当は、普通に生きている一人一人が、すばらしい、かけがえのない存在です。」

最後の言葉に共感を覚える。SMAPの「世界に一つの花」にあったように、注目を浴びるナンバー1でなくても、個性的なオンリー1であることの方が、本当は素晴らしいんだと知ってもらいたいものだと思う。次の最後の呼びかけも、全くその通りだと思うものだ。

「大丈夫。あなたは今のままですばらしい存在です。無茶なことをしなくても、ちゃんと注目してくれる人がいるし、愛してくれる人がいます。社会の中で、君の役割があるはずです。君の活躍を待っていてくれる人がいます。」

このことを信じられる人が多くなる社会を築きたいものだと思う。それがモラルの向上につながるだろう。





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最終更新日  2004.01.12 17:15:40
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