適当に・・・

適当に・・・

第一話

「さとるくん」
さとるくんを呼ぶ出すのはとってもカンタン。
10円玉を使って公衆電話から自分の携帯に電話をして、
「さとるくんさとるくん、おいでください。さとるくんさとるくん、おいでください。さとるくんさとるくん、いらっしゃったらお返事ください」
と言って受話器をおくだけ。
あとは、自分の携帯の電源を切って待っていれば24時間以内にさとるくんから連絡がきて、知りたいことは何でも1つだけ質問に答えてくれるらしい。
この「さとるくん」の話を聞いたA子は、「試してみよう」、すぐにそう決心した。
だって、片思いのT君の気持ちを知りたかったから。
学校から帰ったA子は、さっそく友達から聞いた通りにやってみた。
「あとは、さとるくんからの連絡を待つだけね」
A子はワクワクしながら待った。
でも、何時になっても連絡はこない。
0時をまわり、もうあきらめて寝ようと思ったとき、
電話を切ったままの携帯が鳴り出した。
あわてて電話にでると「ボクさとる。今、公園にいるよ」と男の子の声が。
電話はすぐに切れたが、しばらくっするとまた携帯が鳴った。
「今、マンションの前についたよ」今度は3回目。
「今、玄関だよ」。A子はだんだん怖くなった。
そして4回目の着信音が……。
「今ね、キミの後ろだよ」とっさにA子は振り向いた。
でも、A子は質問することができなかった。
友達はA子に大事なことを伝えるのを忘れていたのだ。
さとるくんの姿を見たらあの世につれていかれちゃうって・・・。


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