ボクらのカリカチュア

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さいこ@エク

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2009/10/20
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カテゴリ: クロノス
翌日。

昼過ぎには、木綿子の家の戸を叩くソフィアンの姿が見られた。

「開いてるよ」

「おう。おじゃまします」

引き戸をガラリと開けると、座卓に向かって裁縫をする木綿子の姿が目に映る。
ソフィアンは手荷物のいくつかは土間へ置いたまま、ブーツを脱いで部屋へと上がる。木綿子は来訪者に一瞥をくれたあと、手元へと視線を戻してチクチクと縫い物を再開した。

「てきとーに座ってて。きりの良いところまで終わらせたらお茶出すから」

「お構いなく」

丸い座卓の、少女の対面へと腰掛ける。そのまま木綿子の作業を見守る。



「内職は昔からやってたし。これくらい普通だよ。それに器用ったって、エンチャには何の役にも立たないみたいだしね」

衣服の裾上げや修繕、ボタンやタグのし付けをしているようだった。それ以外でも、縫いぐるみや巾着などの、小物を作る内職もしているようだ。

「そこの針置きにしてる小っさいキングベガも、ユウコが作った内職?」

「ああ。それは仕事の合間に、なんとなく作ったヤツ」

照れくさそうに木綿子は答えた。

「他にもいろいろ作れたりするのか?」

「人形なら、大抵のモンスターは作れるけど、って。ちくしょう、どうでもいいだろそんなこと」

「いい趣味じゃん。それにしても良くできてる。俺も今度何か作ってもらおうかなー」


昨日、木綿子がタイタン鎧をエンチャントすることを応援すると言ったソフィアンであったが、具体的な話をすることは無かった。今日は、改めてその話をするために彼女の家を訪ねたのである。

「それで?いったいどうやって私のエンチャを応援するってゆーの?必勝法を知ってるわけでもなさそうだけど」

針を操りながら、手元に視線を落としたまま木綿子が問うた。



「私がどうするかは、アンタの話を聞いてから決める」

「おう。まず、俺もエンチャントについては全くの素人だ。今使ってる装備だって、全部出来あいを買っただけだしな」

「へぇ」

「そこでだ!ユウコさん、君はエンチャントを成功させるためには何が必要だと思う?」

「んー・・・。運、かな?」



「めんどくさ!いいから早く話せよな、ったく・・・」

生地の端でしっかりと縫い返し玉止め。八重歯を使って糸を切る様が、年季が入っている。見た目とは裏腹に、やはりどこか年寄りくさく見えるのが可笑しかった。

「まあ当たらずも遠からずってとこかな。正解は「経験」です」

「はぁ」

立ち上がって背伸びをした木綿子は生返事をして土間に下りていく。
茶を持って戻ると、ソフィアンは板の間に自分の荷物を広げていた。

グラアーマー。ローンロードアーマー。ペテュニアペンダント。ティピカリング。ジャキエルのリング。マタリエルのネックレス。他にディバインアクセサリや武器など、大小様々なアイテムを並べていく。
次に麻袋の口を開けて、木綿子の前に置いてみせる。口からは色々な種類のエンチャントストーンが覗いている。

「ここにあるのは、どれも精錬によって一層光り輝く、その手前のアイテムばかりだ。大体が、そこのタイタンアーマーと同じくらいの精錬度合いだな」

「ちょ、装備もそうだけど、オマエ何でこんなにたくさん石を持ってるんだよ」

「へー」とか「ほー」とか言う声を漏らしながら、木綿子は並べられたアイテムを観察している。

「借金の返済期限は、あとどれくらい残ってる?」

「7日、かな。それまでに叩いて完済か、鎧を売って返済に充当するか決めないと・・・」

木綿子はそこで表情を曇らせてしまう。

「よし。なら今日からお前は、このアイテムたちを使って精錬の練習をするんだ。最終的にそこのタイタンを光らせる為にな」

「練習?・・・それはダメだよ」

「え、何で!?結構名案じゃない?やっぱ手先の器用さとかも関係するかもだし、練習さえすれば、」

「だってさ。練習するたって素振りじゃないんだよ?実際にエン石使って叩くんでしょ?そしたら、」

「なるほど。俺のアイテムを叩き壊しちゃうのが気が引けるって言うんだね」

「当たり前だろ!エンチャントストーンだって、そこら辺に転がってるわけじゃないんだよ?元手がかかるやり方はできないよ」

「アイテムはいくつ壊したっていいよ。エン石だってこれで足りなきゃまた持ってくる」

「アンタが良くてもアタシが良くないってゆーの!」

「あーもー!メンドくせーのはどっちだよ!俺がイイって言ってるんだからいいの!それに、これより良い方法があるか?プロの精錬師に頼めたとして、納期が返済に間に合うかわからない。それに、手数料だってとられる。そもそも失敗する可能性もあるしな。知り合いに信頼できるプロがいれば別だが」

「ぐ、う」

「生憎俺の知り合いに精錬師はいない。まあ得意そうなヤツは何人かいるが、これはそもそも他人に頼めるような精錬じゃないだろ?そのタイタンはオヤジさんの形見なわけだし、出来れば壊したくないと思う。自分でならまだしも、人に壊されるってんなら尚更だ」

「そうだけど・・・」

「いいか?ここぞって時は、他の何より自分を信じろ!自分の力でなんとかするしかないんだよ!自分が信じられなきゃ、信じれるようになるまで努力しろ。その為に必要なものは全部利用するんだ。利用って言い方は悪いが、もし後ろめたい気持ちがあるなら、全部済んだ後に清算でも恩返しでもすりゃいいんだ」

「失敗したら、恩返しも何も出来ないじゃないか」

「失敗するのを前提で行動するヤツがいるか。失敗が怖くて何もできないやつは、行動しなかった後の世界を全て受け入れるしかない。それすら出来ないくせに文句や不満ばかり言う奴は手に負えない・・・けどお前は違う。お前はもう叩くって決めてるんだろ?だったら後は、成功させる為に出来ることを全部やるだけじゃないのか?」

「・・・わかった」

「わかったか」

「あんたってさ、」

「何だ?今のありがたいお言葉に感銘を受けたか?」

「冒険者より、宣教師とか詐欺師とかの方が向いてるんじゃない?」

「失礼だな。っつか○○師ってつくやつは、なんだか全部怪しいヤツばかりだな、牧師とか導師とか。兎に角、そこの物を壊すことは気にするな。弁償もしなくていい。元々俺が叩き壊すつもりのアイテムだからな」

「ありがと・・・」

そう言う木綿子の目には涙が溜まっていた。

「お前は涙腺が弱いのか」

一人で抱えて心細かったのだろう。ソフィアンは、そう。父が病に倒れたときの事、自分が大陸にはじめて降り立ったときの事を思い出し、その姿を彼女に重ねているようだった。





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Last updated  2009/10/21 09:10:16 PM
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