昼下がりの迷宮~

 昼下がりの迷宮~

2007.09.16
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先日寝込んだときに読んでいた本です。
大好きな荻原浩作品…期待にたがわず明るい気分にさせてくれました!!

誘拐ラプソディー




ギャンブルでこしらえた借金がもとで、にっちもさっちもいかない立場に自分を追い込んでしまった秀吉。もはや自殺するしかない、と丘の上にむかいますが、そんな度胸もないのでした。
情けないばかりの秀吉が企てた――と言うよりむしろ、なりゆきで突入してしまった誘拐。簡単にいくはず(秀吉の頭の中では)がもちろんそうはいかず…

ミステリではありませんが、ユーモアのちりばめられた犯罪小説です。
冒頭の自殺失敗場面から想像できるように、気が弱くて間抜けな秀吉。成功なしと言われる幼児誘拐をうまくやりおおせるはずもないのですが、素人ならではの「間」が幸いしてしまうという流れで次々うまく切り抜けてしまうのでした。
とはいえ、追っている方は必死です。
ましてそれがやくざ。さらに、中国マフィア。そして警察まで!


伊達秀吉。まずはその大仰な名前にクスリと笑ってしまいますが、それものちのち所以がわかります。いかにも名前負けしてしまいそうな名前ですが、本人はもちろん重たくもある反面、かならず甘酸っぱい記憶に思いが至ります。
誘拐された男の子は伝助といいます。
いまどき伝助!ぐれるでもなくこまっしゃくれるでもなく、暢気に見える伝助も、実は深い思いを抱いています。
そして、追う側も。
やくざの組長の片腕として生きてきた桜田。ハードボイルドな生き方をしながら、組の行方のこと、構成員や組長夫人のこと、深く考えています。

語り手は場面によって変わるのですが、それが不自然でなく、それぞれの立場にすっかり入れ込んでしまいました。
話が進むにつれて、どの人物も過去を思い、これからを案じます。幼い(ある部分ちょっと幼すぎるような)伝助すら、秀吉との逃避行で、何が好きか、何がしたいか、これまで意識することのなかった自分を言葉にできるようになります。
そして伝助の父も。

情けないばかりに思われた秀吉が、伝助とすごしながら自分の弟を思い出す場面が何度か出てきます。子供だった自分が唯一、愛し守ってやれる存在だった弟の記憶をたどりながら、次第に立ち直る力を得ていく姿にはほろりとしてしまいました。
人生がうまくいかなくなったのは、恵まれない子供時代の家庭事情がきっかけだったのはもちろんなのですが、やり直すにはどこかでそういう過去すら吹っ切らなくてはなりません。
それが、ただ目をやらないようにすることではなく、自分も誰かを愛して、慕われていた時間があったのだと気がつくことで前を向けるようになる、というのがとても心にしみました。


とはいえ、読み終えたあとで、この先の人生、この手で明るくしていけるかも…と思えるような一冊でした。








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最終更新日  2007.09.17 22:01:14
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